INTERVIEW

蓮沼執太×森山未來~森山企画のダンス公演〈JUDAS, CHRIST WITH SOY〉でタッグを組んだ2人が描く先に広がる可能性

蓮沼執太×森山未來~森山企画のダンス公演〈JUDAS, CHRIST WITH SOY〉でタッグを組んだ2人が描く先に広がる可能性

歌う、踊る、演じる
ふたりが描く先に広がる可能性

 全編自身がヴォーカルを取った新作『メロディーズ』をリリースした蓮沼執太と、俳優として知られる一方、ダンサーとしても国内外問わず活躍する森山未來。同世代のふたりは、昨年10月に森山が企画・出演した横浜でのダンス公演『JUDAS, CHRIST WITH SOY ユダ、キリスト ウィズ ソイ~太宰治「駈込み訴え」より~』で初めて顔を合わせた。蓮沼の才能に惚れこんだ森山がフェイスブック経由で彼にメッセージを送り、蓮沼が公演の音楽を担当したのだ。近年蓮沼はNYに、森山はイスラエルに滞在経験を持つなど、共通点の多い両者の対談をお届けしよう。

 


蓮沼執太(Shuta Hasunuma)
1983年東京都生まれ。2006年10月にアメリカWestern Vinylからデビューアルバムを発表。蓮沼執太フィルの結成のほか、映画、演劇、ダンス、音楽プロデュースなどの他ジャンルの楽曲制作も多数手がける。

森山未來(Mirai Moriyama)
1984年兵庫県生まれ。ジャズダンス、クラシックバレエなど多くの舞台を踏み、1999年「ボーイズ・タイム」で本格的に舞台デビュー。2004年『世界の中心で、愛をさけぶ』でブルーリボン賞新人賞、日本アカデミー賞優秀助演男優賞、新人賞を受賞。近年では、自身が主演するダンスライヴの演出も手掛ける。


 

――蓮沼さんと森山さんは昨年10月に一緒にダンス公演をやってみて、いかがでしたか?

蓮沼 未來くんは、ダンスパフォーマンスも素晴らしいしユーモアやテクニックも当然あるんですけど、何より興味深いことは、作品や制作過程を俯瞰的に捉える視点を予め持っていることですね。会場の環境が変わると、その微妙な変化を察知して演出を即座に変えていく。サウンド的にデッドなスペースだから演出はこうしようとか、環境に適応しながら作品を作っていく能力がすごく高いんです。通常ダンサーはまず自分の身体と中心に向き合うものだと思うけど、未來くんはそれを踏まえた上で環境がちゃんと見えている。横浜の公演では音楽を作曲して、その場で演奏もしたんですけど、未來くんが捉えている空間というものを信じていました。

森山 あの時は時間がなくてばたばたしていたところもあったんですけど、だからこそ直感や空気感を大事に作っていきたかったんですね。一緒にやっていて思ったのは、執太くんも天然って言っていいのか分からないけど、理屈よりも無意識で作っているところがあるなあと。構築的であると同時にすごくナチュラルに旋律が変なところにいったりする。それは今回のアルバム(『メロディーズ』)でも感じたし。基本的には耳ざわりが良くて綺麗に音楽が流れてるように見えて、ところどころ何かが歪んでいるというか。それはきっと狙ってやっているのではなくて、やってたらこうなっちゃったみたいなものだと思うんですけど。しかも、ポップなこともやりつつ舞台のためのアブストラクトな音楽も作っていて、振り幅が広い。それが一緒にやってみたいと思った理由ですね。

ダンス公演〈JUDAS, CHRIST WITH SOY ユダ、キリスト ウィズ ソイ~太宰治「駈込み訴え」より~〉トレイラー映像

 

――蓮沼さんのアルバムは、初期の頃から比べるとどんどんポップになってきている印象ですけど。

蓮沼 皆さんそう言ってくれますね。でも、電子音楽はずっと作ってるけどCDにはしていないんですね。レコーディングなどの記録メディアとして、落としこむ時に今面白いと思うのは、自分の声を扱うものという感じなんです。とはいえ新作も、細かい音を聴きこめば電子音楽的な背景がありますし、それこそ蓮沼フィル的な生演奏の音響的要素なども入っていますね。

森山 音楽って、普遍的な旋律がありながらも、その背景にコンテンポラリーなものがないとポップにならないんじゃないかって思う。ただ大衆にウケる方程式のもとに作られたのではなく、ちゃんと先鋭的な考えが真ん中を通底していないと。

蓮沼 そうでないとだめだね。

森山 だめだよね。そう意味では、コンテンポラリーだと思う。執太くんの音楽も。

蓮沼 すごくポップなアルバムではあるんだけど、僕にとってはかなり挑戦してるアルバムでもあるんですよ。

蓮沼執太の2016年作『メロディーズ』収録曲“RAW TOWN”

 

――森山さんはイスラエルに1年間、蓮沼さんはNYに半年ほど滞在されましたよね? 森山さんはダンス・カンパニーに在籍されていたそうですが、蓮沼さんは何を?

蓮沼 基本的に自分の作品は作らないし、現地でライヴやパフォーマンスもしなかったですね。坂本龍一さんにお会いしてご飯食べて遊んでもらったり、現地の現代美術のアーティストと交流したりしていました。作品制作をしない分だけ、色々なものをたくさん観るということを頑張ってました。ダンスも演劇も映画もアートも、あらゆるジャンルのものをとにかく貪欲に観ていこうと。とはいえ、小さい街なので一日に3つくらいハシゴできたりするんです。例えば、最初チェルシーのギャラリー街を周って、次に映画を観て、夜はダンス観ようとか、そういうことができたので、ひたすら街を移動していました。あとは、活動を抑えることで自分の表現、文脈を整理する時間になったし、単純に自分自身を見つめなおすこともできましたね。アジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)という50年以上続いている、主に若手アーティストをサポートするフェローシップで行ったんですけど、現代美術を専門にする海外の若手アーティストが近所に住んでいたので、同世代の彼らと話し合えたのは刺激的でした。

森山 NYは日本人が多いと思うけど、イスラエルはそんなにいなくて。ダンサー、ミュージシャンも何人かいたくらい。だからこそ、日本だったら隣り合ってしゃべることないだろうって人とも話すことが多くて、物理学者とか天文学者と普通に飲みながら踊りの話とか量子力学の話とかしてました。同い年くらいで最先端の研究をやっている人と会話できるのは楽しかったですね。

――蓮沼さんは音源が残りますけど、森山さんのやっているダンスって基本的に生ものというか、消えものですよね。残らないものを作っているという部分で、葛藤はありませんか?

森山 僕がステージに立つということを選んだ時点で、残るということを求めていないと思うんです。映像として残っている舞台作品って普通に観られる機会もありますけど、本質が半減してしまうので。やっぱり、空間をみんなで共有しているかどうかは大きな違いで、テレビで俯瞰して舞台を観てもその時の空気感は伝わらない。情報として分かっても、それは舞台を観たということにはならないんですね。体験することなんで、舞台を観るというのは。だから、ダンスの公演もそもそも残るものではないし、残るとしたら観た人の身体、頭の中に残っていくというか。僕も忘れていく一方で、何かしらのメモリーはどこかに蓄積されていっている感じだし。

蓮沼 音楽の場合はパフォーマンスを映像という視点で観ることとは違って、ベンヤミン的な思考じゃないけど、CDやレコードの複製作品になると基本的にアウラはなくなるとされていますよね。確かに、コンサートや演奏会に行くっていう営みが中心だった時代はそうだけど、ここまで録音された音源を聴くことが音楽体験として圧倒的に多い世の中になると、ものとしてのCDやレコードにもアウラ的なものがあるんじゃないかって僕は思うんですよね。例えば、70年代のアナログ・シンセを使って高解像度で録音すると音の響きが昔と違うんですよ。今の耳でその音を聴くだけでも閃きがあります。そういう着想とも『メロディーズ』は繋がっていて、レコーディング行為から作品化されたアルバムにもアウラに近い何かはあると思っていて。

――今後2人が一緒に作品を作ることがあったらどんな形になるんでしょう?

蓮沼 ミュージシャンに呼ばれたことある? 音楽の公演に出てくれとか。

森山 あったかなあ。あまり記憶にないかも。

蓮沼 音楽の側からダンスの人を誘うのって面白いと思うんだけどね。普通の考え方だとダンスの中に音楽があるから、僕もそうした理由でお誘いを受けるわけですよね。でも、そうじゃなくてダンスの音楽を作曲したいから踊ってくれない?みたいな感じが面白いなってたまに考えます。単純に音楽ライヴで踊ってください、ということでは無くて、現代的に音と身体の関係を追求した作品制作に興味があって。

森山 たまにミュージシャンに呼ばれてやっているのを観るけど、すごく難しいんだよね。歌詞、メロディ、伴奏があって楽曲として成立していると、隙間がないから。ダンサーがただそこにいるだけでいいっていう。そこに踊り手として自分の「言葉」をミックスするならいちから作らないと無理だな、というのは観る度に思う。そういう「言葉」と音楽の出会いみたいなのはやりたいと思っていますね。横浜の時は、ある種できあがっている舞台に執太くんに来てもらったけど、ミュージシャンの目線から身体が入ってくるのも全然有り得る話だしね。

蓮沼 そうそう。今興味あるのそれなんだよね。

森山 身体性なんだ。僕とりあえず(執太くんと一緒にやった)ダンス公演のツアーはこれからもやりたいと思っているんで、声かけますよ。継続的にやっていくつもりなので。

蓮沼 よろしくお願いします。

 


LIVE INFORMATION

蓮沼執太メロディーズ・ツアー2016

○3/19(土)札幌 OTO TO TABI(フェスティバル出演)
○3/26(土)福岡 ROOMS
○4/24(日)東京 Billboard Live Tokyo
○5/14(土)名古屋 森、道、市場2016(フェスティバル出演) 他
www.shutahasunuma.com/

大植真太郎×森山未來×平原慎太郎
「談ス」

○3/1 (火)神奈川 鎌倉芸術館 小ホール
○3/3 (木)~3/8(火)東京 イイノホール
○3/9 (水)名古屋 アートピアホール
○3/11(金)~3/13(日)大阪 大阪ビジネスパーク円形ホール
○3/14(月)長野・松本 まつもと市民芸術館 実験劇場
○3/16(水)金沢 金沢市文化ホール
○3/17(木)新潟 りゅーとぴあ・劇場
○3/19(土)青森 リンクモア平安閣市民ホール(青森市民ホール)
○3/20(日)仙台 仙台電力ホール
○3/22(火)札幌 道新ホール
○3/24(木)京都 ロームシアター京都 サウスホール
○3/25(金)広島 広島市南区民文化センター
○3/26(土)福岡 アクロス福岡 イベントホール
○3/27(日)大分 大分コンパルホール
○3/29(火)沖縄 国立劇場おきなわ
http://dansu2016.com/

 


TOWER RECORDS INFORMATION

蓮沼執太『メロディーズ』発売記念 ミニLIVE & サイン会
○2/29(月)20:00~
タワーレコード渋谷店 8F Space HACHIKAI特設ステージ
http://tower.jp/store/event/2016/02/003045

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