聴覚でよみがえるウルトラマンの記憶

 ウルトラマンシリーズ放送開始50年(2016年時)記念となる歴代ヒーローの主題歌を集めた大全集が遂に完成! 初代「ウルトラマン」から「新ウルトラマン列伝」主題歌までを収録。“ウルトラマンX”“ウルトラマンギンガの歌”など99曲をDISC 5枚に詰め込んだ、近年の印象的なウルトラ主題歌を網羅できるウルトラマン・ファン必聴の作品となった。

VARIOUS ARTISTS 『ウルトラマン主題歌大全集 1966-2016』 コロムビア(2016)

 ウルトラマンと言えば筆者にとっては「ウルトラマンタロウ」である。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「帰ってきたウルトラマン」「ウルトラマンA」と続きそのあとに登場したのが「タロウ」。当時(幼少のころ)この名前のインパクトは非常に強いものだった。さらに、〈ウルトラの父がいる、ウルトラの母がいる、そしてタロウがここにいる〉というあの物悲しくも力強いメロディは、この世代にはたまらない、何とも言えない独特な印象を残した。今でも口ずさめる人が少なくないだろう。これだけ長い歴史を創ってきた作品だけに、子供のころに聞いていた曲から、自分が親になって子供と一緒に聞いた曲など、多くの人の生活に寄り添ってきたことだろう。

 歌い手の移り変わりにも注目していただきたい。前述の「ウルトラマンタロウ」の曲であれば〈少年少女合唱団みずうみ〉が、また昭和の主題歌キング・水木一郎、ささきいさおらの出番ももちろん堪能できる。THE ALFEEや京本正樹などの大御所から、中西圭三、MISIA、V6、doaなど、表現力や歌唱力でウルトラマンのバックを固める〈聴かせ系〉まで。そして三枝夕夏、愛内里菜、宮野真守、ウルトラ超特急のようなフレッシュな歌い手たちの表現のプラットフォームとして。ウルトラマン主題歌が〈子供向け〉から〈一緒に見る大人向け〉、果ては〈子供ではなく大人向け〉という流れも含みながら、J-POPの移り変わりやアーティストの活動とどう絡んで来たのか、などに目を向けてみると、ウルトラマンと音楽の関係の深みを実感することが出来るだろう。

 〈少年少女合唱団みずうみ〉にも子供や孫がいるメンバーもいるかもしれない……そんなことに思いをはせながら、アニメでもなく、戦隊ものでもなく「ウルトラマン」という一つのジャンルとしてエンターテインメントに君臨するこのコンテンツを、主題歌という切り口で味わい尽くしてみてはいかがだろうか。