〈第4シーズン〉の幕開けを担ったのは、アトモスフェリックな歌で孤高の存在感を保ち続ける空気公団の山崎ゆかり! 〈変化〉を中心に置いた新曲群を二人が語る

 澄んだ歌声と柔軟な音楽性でファンを魅了し続けている花澤香菜。サード・アルバム『Blue Avenue』以降、およそ10か月ぶりのリリースとなるシングル“透明な女の子”が完成した。リスナーとしては気になるのは、〈曲に関わるのは誰か?〉というところだろう。これまでも制作陣の人選にビックリさせられ、同時にその据わりの良さに唸らされてきたが、今回も驚きと納得が同時に訪れるに違いない。白羽の矢が立ったのは、空気公団山崎ゆかりである。本作は、カップリングを含めた全3曲に加え、アートワークやMVまでのトータル・プロデュースを山崎に委ねた(山崎が作詞以外で楽曲提供するのは初めてのこと)。その化学反応は如何に。花澤、山崎のふたりに話を訊こう。

花澤香菜 透明な女の子 アニプレックス(2016)

山崎「(花澤の)第一印象としては、おとなしいなと」

花澤「顔合わせの時に、〈どういうシングルにしましょうか〉というお話しをさせていただいたんですけど、口ベタなもので……」

山崎「そういえば、〈自分のなかにおじさんがいる〉って言ってましたね」

花澤「可愛いものとか可愛い女の子を見ると〈キャー!〉ってなるんじゃなくて、〈うおお!〉ってなるっていう話をして(笑)」

山崎「初対面で〈あれ?〉っていう(笑)。でも、歌と真剣に向き合っている人だと感じました。そうじゃないと私もできないなと思っていたので。私は曲を書き溜めているわけではないので、花澤さんからテーマをもらいたいと依頼して、モチーフをもらってから作りました」

 山崎はモチーフを受け取った段階で、花澤から〈変化したい〉という気持ちを汲み取ったという。

山崎「2~3いただいたモチーフには、なぜそれを選んだのかという理由も書かれていたんです。それらをトータルで考えた時に〈変化したい、挑戦したい〉というのが一番ピッタリだと思いました」

花澤「私は小説を読むのが好きで、悩んだりした時に小説から自分を励ます言葉をもらったりするので、〈これ〉と思っていたものをお送りしました。内容を細かく覚えてないんですけど(笑)、〈強くなりたい〉というようなことを書きました。歌に限らず、お芝居でも何でもチャレンジして変わっていきたい、成長したいと思っているので」

 そうして完成したのが“透明な女の子”。誰しもが持っている弱さと強さの両方を描いた、柔らかくも芯のある楽曲は、花澤香菜×空気公団のコラボでないと生まれ得なかったものだろう。

山崎「人って基本的に弱くて脆いものだと思うんです。だけど、強い自分もいて。その二人を書けたらいいなと思ったんです」

花澤「ライヴ・サーキット(2月末まで全国9か所で開催中の〈かなめぐり~歌って、読んで、旅をして~〉中に“透明な女の子”を聴いて、心を強く持ってステージに臨んだりしているので、すでに心の支えになっています。誰でも変わっていかないといけないと思うことはたくさんあると思うんですけど、そういう時にやる気になれる曲になればいいなと思っています」

 アートワークやMVには金髪の花澤が登場するが、これは明確な〈変化〉の意志を感じ取れる大きなサプライズとなった。

山崎「“透明な女の子”の目に見える形として、この感じがいいなと思っているんです。花澤さんの単なるヴァージョン違いというよりも、クレッシェンドが大きいほうがよかった。それだったらはっきりと違うものにしようと。打ち合わせの時に(ウィッグを)見せるタイミングを見計らいました(笑)」

花澤「ふふ。ただ金髪というわけではなくて、〈こういう子がいてもおかしくないよね〉っていう自然な感じにしてもらいました。金髪にしたらこうなるんだと思って、私自身も楽しかったです。服装も山崎さんにチョイスしていただきました。自分が違う人になったみたいでウキウキしながら撮影に臨みました」

 カップリング曲も強力。「〈パン屋〉と〈読書〉が好きだということで、そのふたつを舞台にして男性の視点から歌ってみたらどうかなと思って」(山崎)書かれたという“パン屋と本屋”は、演奏に栗コーダーカルテットが参加しているのもポイントとして挙げておきたい。そして、ラストを飾る“雨降りしき”は、ピアノ演奏と同時に歌ったという静謐なバラードになった。

山崎「こういう曲は重ね録りをしていくと空気が淀む気がするんです。同じ空気のなかで同じ呼吸をしながら録るのが醍醐味だと思うので、挑戦してもらいました」

花澤「相手の出方で自分を変えてみたり。生ものだけれど、録音物として残るというのがライヴとも違う感覚で楽しかったです。これは一回きりじゃもったいない、またやってみたいと思いました」

 以上、色味の異なる全3曲。トータリティーのある聴き応え十分な作品で、花澤の新たなシーズンが幕を開ける。