アルバム作品で振り返るDJ RYOWのジャイアント・ステップ

 昨秋にDREAM TEAM MUSICの設立を発表し、キャリアをさらに一歩進めたDJ RYOW。ここではオリジナル・アルバム中心にその歩みを振り返っておこう。岐阜出身で名古屋を拠点とする彼は、M.O.S.A.D.を擁するクルー=BALLERSに所属。MCのWATTと組んだENDLESS FILEのDJ/プロデューサーとしても活動するなかで、その名を一躍広めたのは、2005年に発表したDJ RYOW名義でのシングル“WHO ARE U?”だろう。生前のTOKONA-Xが発する豪放な名古屋弁を支える強靭なループは、威風堂々としたカッコ良さもあって現在も愛されるクラシックとなっている。そして、(同曲は未収録ながら)同月のファースト・アルバム『PROJECT DREAMS』(MS)では、M.O.S.A.D.やまだ新進だったAK-69をはじめとする名古屋勢を中心に、以降の作品にも欠かせない般若(RYOWのソロ作にはすべて参加!)やRYUZO率いる京都のR-RATED勢など全国からラッパーを招待し、その腕前をアピールしてみせた。

2005年のシングル“WHO ARE U?”

 

 同年にはENDLESS FILEでの初作『Beginning of Legend』を発表する一方、2006年からミックステープ『052 LEGENDS』シリーズを開始し、並行してハードコア畑のTOMOKIYOと組んだGRAND BEATZとしてもアルバム『Project Dreams pt.2』(同)をリリース。特に後者は2009年の『Project Dreams pt.5』(同)まで続くこととなった。その2009年には、TOKONA-Xの音源をヒストリカルに満載しつつ“WHO ARE U? 2009”(AK-69と"E"qualAkiraが参加)も収めた名作ミックスCD『BEST OF TOKONA-X』(同)も投下。SOCKSを含む若手集団のYOUNGEST IN CHARGEなど後進のフックアップやプロデュースにも積極的に取り組み、東海シーンきっての名裏方というポジションを盤石のものとしたのだった。

 そんなRYOWがより個を立ててリーダー作を送り出しはじめたのは、2010年の『MORE THAN MUSIC』(同)からだろう。そこまでのキャリアを包括するようなミックスCD(MACCHOにRYUZO、MASTA SIMONを交えた“WHO ARE U? 2011”を収録)も付いた同作は、気心の知れたメンツを主軸に作り上げたそれまでの集大成となった。

2010年作『MORE THAN MUSIC』収録曲“More Than Music”

 

 そして、Growthとの共同制作にシフトした2012年の傑作『LIFE GOES ON』(同)では、KOJOEAKLO、USのフレッド・ザ・ゴッドサンといった新鮮な手合わせも実現。なかでもDJ TY-KOHY'SSIMONA-THUGを迎えた“Don't Stop”は、それまで名古屋産品に偏見のあったヘッズ層も振り向かせるクラブ・バンガーに。アルバムのツアーを収録したDVD+ミックスCDのセット『LIFE GOES ON LIVE DVD AND MIX TAPE』(同)には、KOHHとDIZZLE、SOCKSを交えたそのリミックスもエクスクルーシヴ収録されている。

2013年作『LIFE GOES ON LIVE DVD AND MIX TAPE』収録曲“DON'T STOP REMIX”

 

 で、そうした成果を踏まえて登場したのが2014年の傑作『#IDWT -IN DREAMS WE TRUST-』(同)ということになるだろう。ここでは冒頭の“Turn Up”でKOHHとSMITH-CNに加えてZeebraを招き、他にもISH-ONE田我流紅桜J-REXXXLUNACREAMMinamiRHYMESTERMummy-Dら刺激的な手合わせだらけの豪華な一枚となった。

2014年作『#IDWT -IN DREAMS WE TRUST-』収録曲“#IDWT -In Dreams We Trust-”
2014年作『#IDWT -IN DREAMS WE TRUST-』収録曲“New Era”

 

 先述のように2015年にはDREAM TEAM MUSICを設立、TOKONA-Xの新リミックスも満載したクラシック主体の『THE MIX TAPE VOLUME #1 -BACK TO THE CLASSIC CUTS-』(DREAM TEAM MUSIC)と2015年のヒットを満載した『THE MIX TAPE VOLUME #2 -RAP CITY 2015-』(同)というミックスCDを連続リリース。並行してSOCKSの強力なソロ作『Never Dream This Man』(同)も放っていて、『216』以降のレーベルの動きについても注視せざるを得ないだろう! *轟ひろみ

2015年作『THE MIX TAPE VOLUME #2 -RAP CITY 2015-』収録曲“BUCHIAGARI”