いまや世界的なキーワードである〈EDM〉を冠し、いまの自身のDJスタイルを映した最新ミックスCDが登場!

 日本のダンス・ミュージック・シーンをリードし続けるヴェテラン、DAISHI DANCEがミックスCD『EDM LAND』をリリースした。クラブの現場でのプレイをダイレクトに封じ込めた彼のミックスCDシリーズ〈MYDJBOOTH〉に連なる作品と位置付けられてはいるのだが、タイトルに〈EDM〉の文字を冠していることが目を惹くし、最大のポイントでもあるだろう。その真意とは?――本作について、現在のダンス・ミュージック・シーンについて、DAISHI DANCEに話を訊いた。

DAISHI DANCE 『EDM LAND』 ユニバーサル(2014)

 

メロディアスなDAISHI DANCEからフェス感のあるDAISHI DANCEに変化した

――DAISHI DANCEさん恒例のミックスCDシリーズ〈MYDJBOOTH〉ですが、今回は〈EDM LAND〉というタイトルを冠していますね。

「僕は90年代からDJをやっていて、各々の時代のアッパーなダンス・ミュージックを一貫してかけ続けてきました。前回のミックスCD『MYDJBOOTH.3』がちょうど〈EDM〉というキーワードが出てきた頃で、そっちをいま聴いてもEDMとして受け止められる内容ではあるんです。ただ、ここ1年くらいでEDMというキーワードが本当に定着したし、今年は日本国内にEDMの巨大フェス(〈ウルトラ・ミュージック・フェスティヴァル〉)が上陸する年になるし。そういうなかで、EDMという言葉を冠すると自分のいまやっている活動が明確になると思ったんです」

DAISHI DANCEの2013年のミックスCD『MYDJBOOTH.3』ティーザー映像

――DAISHI DANCEさんの現在のDJスタイルをわかりやすく伝えるためにEDMというタームを持ち出した、と。

「ええ。〈EDM縛りのミックス〉みたいなことではなくて、いまのDJスタイルがそのまま反映されています」

――ずっと現場に立たれていて、EDMが定着したという実感はありますか?

「マイアミの〈ウルトラ・ミュージック・フェスティヴァル〉やベルギーの〈トゥモローランド〉といった巨大ダンス・ミュージック・フェスがここ数年でワールド・ツアーを始めるようになって、世界各地で物凄くDJフェス・ブームになっていったんです。一方でビルボード・チャートのポップスがダンス・ミュージックを吸収するようになった流れもあって、EDMが世界的なトレンドになった。その動きがようやく日本にも入ってきたタイミングだと思います。〈ウルトラ・ミュージック・フェスティヴァル〉はちょっと前から韓国でも行われていたんですが、日本にはこの秋にやってきます」

今年3月に行われた〈ウルトラ・ミュージック・フェスティヴァル〉での
ジャックUのライヴ映像

――日本ではちょっと遅れた形で定着したということですか。

「逆に日本では80年代後半から90年代にかけてNY発のダンス・ミュージック黄金期の流れがあって、アジアのなかでも早くからクラブ・カルチャーが大きく盛り上がって一度成熟したと思うんです。その反面、90年代のシーンの構造を最近まで引きずってしまったところがあって、それで切り替えが遅れたんじゃないかなと。東南アジアや韓国は90年代にクラブ・シーンが発展していなかったので、先入観なしに新しいEDMの潮流がダイレクトに流れ込み、大きなダンス・シーンが生まれて盛り上がりを見せていると思ってます」

――なるほど。

「あと、日本ではロック・フェスが歴史もあって主流だし、ロック・フェスのいちステージにDJが入るような感じじゃないですか。海外ではダンス・ミュージックに特化したフェスがたくさんあるし、そこに若い子たちが集まって何十万人も動員している。当然、ヘッドライナーはDJです。そういうあり方がようやく今年から日本でも始まるんじゃないかと思っています。今回のジャケには、今年の1月に幕張メッセで行われた〈electrox〉というEDMのフェスに出た時にDJしながら撮った写真を使っているんですけど、このフェスがすごい盛り上がりで。日本でもEDMを中心とした大型フェスとも連動したダンス・ミュージックが浸透してきているのを肌で感じました」

――日本でもクラブ・ミュージックがカジュアルに受け止められるようになってきたということですかね。

「いまや海外のダンス・ミュージック・フェスがYouTubeで生中継される時代で、それも大きいと思うんですよね。クラブに来るようなアンテナ張ったお客さんは、例えばさっきも話した〈ウルトラ・ミュージック・フェスティヴァル〉の中継をチェックしている。〈ウルトラ〉でヘヴィー・プレイされていた曲をフェスの直後に東京でかけても、物凄い盛り上がるんです」

――クラブ・ヒットの生まれ方も変わってきているんですね。

「そうですね。90年代はレコード屋さんからクラブ・ヒットが生まれていたと思うんですけど、そういう流れとはまったく違ってきている。フェスでたくさんかかることがヒットに繋がるし、DJもフェスでのヒットを狙って、そこに合わせて曲を出していったりするんです。リリースされる曲の数も膨大だし、ヒットのサイクルもすごく速くなってるなと感じます」

――そういう状況のなかで、今回のミックスCDはどのように選曲していったんですか?

「去年の暮れぐらいからいつもかけている曲、これからかけようとしている曲をピックアップして。締め切りギリギリの新曲もライセンスを取って入れました。レコーディングした時の週末にDJをするなら……っていう選曲ですね」

――構成についてはいかがでしょう。ある一夜のダイジェストなのか、セットのなかの1時間を切り取ったものなのか。

「CDの収録時間――最大78分のセットをやるような感覚ですね。レギュラー・パーティーでは6時間のロング・セットだし、フェスでは1時間くらいだったりする。時間によって当然選曲や流れは変わってきます。78分という枠のなかで導き出された選曲ってことですね。それから、クラブなどの現場と同じ環境で録っているんです。機材はCDJを3台とミキサー、エフェクター。コンピューターを介さずに生でミックスしています」

――全体を通して、DAISHI DANCEさんのオリジナル・アルバムともシンクロする音だなと感じました。

「DJは一貫してアッパーなスタイルなんですけど、楽曲制作に関しては、デビューして何年かはメロディアスで綺麗な曲を中心に作っていたんですね」

DAISHI DANCEの2013年作『NEW PARTY!』ティーザー映像

――DJとトラックメイキングを別物と考えていた。

「ええ。それが、ここ2〜3年でダンス・ミュージックがどんどんオーヴァーグラウンドに出てきて、ダンス・フェスが巨大化するなかで、クラブ・トラックもクラブ向けというよりかはフェス向けになっていく傾向があったんです。よりテンションが上がっていくというか。毎週新譜をチェックするなかで、その変化が自然と自分のなかに入ってきたんでしょうね。自分の楽曲もDJの際に即戦力となるような、盛り上がるものを作りたいと思うようになったんです。メロディアスなDAISHI DANCEからフェス感のあるDAISHI DANCEに変化した。プレイスタイルもどんどん派手になってますから。旗を作ってブンブン振り回したり(笑)」

――今回のミックスCDにも、もちろんメロディックなEDMも入っていますね。

「そうですね。DJにしてもオリジナルにしても、メロディアスなものは好きで、アッパーな展開のなかにミックスしています。以前よりは楽曲制作もメロディー重視というよりワールド・トレンドなアッパーEDMが中心になっていますが、もちろんメロディアスなものを作らないというわけではないですし、〈the ジブリ set〉シリーズなどの別の形でそういった路線を追求していきたいとは思っていますね」