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宝箱に収められた12曲をひとつひとつ取り出してみよう

豊崎愛生 all time Lovin' MusicRay'n(2016)

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1. 銀河ステーション
コトリンゴの作詞、ミトクラムボン)の作曲によるドラマティックなオープニングに対し、豊崎が提案したテーマは〈エモい曲〉。歌詞のモチーフは「銀河鉄道の夜」で、〈亡くなった友達と旅をする〉という物語を下敷きに、華やかさと憂いが交じり合う歌に仕上がっている。「最近のクラムボンのライヴや“yet”というシングルが衝撃を受けるくらいエモーショナルだったこともあって、〈エモい曲をお願いします〉って無茶ぶりさせてもらいました(笑)。叩き付けるようなコトリンゴさんのピアノも凄いし、疾走感、ワクワク感、ライヴ感がたっぷり詰まった曲になりましたね。歌詞は、私が『銀河鉄道の夜』を歌うように朗読したらこういう感じになるっていうもの。明るくてキラキラしたイメージのなかに、どこか寂しそうな雰囲気が出せてたらいいですね」。 *森

クラムボンの2015年のシングル“yet”
 

2. クローバー
アルバムのリード曲は、AKB48“365日の紙飛行機”の作曲で知られる角野寿和青葉紘季aokadoが手掛けた叙情的なミディアム・バラード。〈大事なものを心に秘め、未来に向かって進んでいきたい〉というメッセージを込めた歌詞は、彼女自身のリアルな思いともリンクしているようだ。「“春風 SHUN PU”(2011年のシングル)みたいな、柔らかくて優しい、少しだけ和の匂いがする曲があったらいいんじゃないか?という提案から出来た曲です。アルバムは3月のリリースだし、新生活の始まりだったり、お別れを経験した方にも共感してもらえる曲になったらいいなって。〈小さな私の宝物は/今でも心の奥でずっとずっと輝いている〉という歌詞は、このアルバムに込めた思いそのもの。今回のアルバムをいちばん総括している曲ですね」。 *森

AKB48の2015年のシングル“365日の紙飛行機”
 

3. Uh-LaLa
〈思い切り夏っぽい曲〉というお題に、つじあやのが作詞/作曲で応えたキュートなロック・チューン。サーフなギター・フレーズやどこかモッドな音作りが印象的な編曲は関淳二郎によるもので、メッセージ性から離れ、心浮き立つような夏の光景をモチーフにした歌詞と相まって、どこまでもゴキゲンな一曲に。 *土田

 

4. 恋するラヴレター
以前からロックンロール好きで、ルースターズクールスTHE MACKSHOWを愛聴していたという豊崎。その趣味をダイレクトに反映したのが、作詞/作曲をROLLY、編曲を長谷川智樹が担ったカラフルでポップなこのナンバーだ。「グラム・ロックっぽい“叶えたまえ”も収録されるし、〈ザ・ロックンロール〉と言えるような曲をやるならいまじゃない?と思って、ROLLYさんにお願いしました。私のなかでこの曲はすかんちのイメージ。“恋するマリールー”の兄妹みたいな曲にしたくて、〈恋する~〉というタイトルにしてもらったんですよ(笑)。私のなかには前から流れているサウンドだし、意外な面を出したつもりはなかったんですけど、スフィアのメンバーには〈愛生ちゃん、あんなにテンションの高い曲も歌うんだね!〉って言われちゃいました(笑)」。 *森

 

5. ほおずき
〈夏の一枚〉をテーマにしたシングル“Uh-LaLa”が初出のこの曲は、初顔合わせとなった蔡忠浩bonobos)のプロデュース。黄昏れた空気を演出するフルートの旋律とゆったりとしたバック・ビートに乗せて歌われるのは、〈淡い初恋の思い出〉。時折挿入されるダブ・ミックスが甘酸っぱい郷愁を助長する。 *土田

 

6. ディライト
2作目『Love Letters』から半年後、本作へ向けてキックオフ。たむらぱんが作詞/作曲/編曲を担った10枚目のシングルの表題曲は、人生の岐路に耳にしたらたまらなくグッときそうな春ソング。柔和に〈バイバイバイ〉と告げるサビが本当に切ない。清廉なピアノが残すノスタルジックな余韻も◎。 *土田

たむらぱんの2014年のベスト・アルバム『tamuLAPIN』収録曲“love and pain”
 

7. トマト
詞/曲を元ズータンズじんプラットホームが、アレンジをあいみょんChaki仕事に携わる橋口靖正が受け持ったこの曲は、〈わたし〉から〈あなた〉に向けたハートフルなラヴソング。二人の温かい関係性が伝わる軽やかな足取りのバンド・サウンドとラヴリーなコーラスが、ほのぼの気分を運んでくれる。 *土田

 

8. ポートレイト
The Remember Me中村僚とその弟である友に作/編曲が託されたのは、優美なストリングスも要所に配されたピアノ・バラード。不器用な過去の自身と向き合い、穏やかに受け容れる歌詞は、歌い手の心情を普遍性をもって言語化することに長けた古屋真。言葉を噛み締めるかの如き丁寧な歌唱が感動を呼ぶ。 *土田

 

9. 叶えたまえ
T・レックスに着想を得たというジャケにも〈グラム・ロック〉というテーマが表出していたシングルのタイトル曲。佐藤タイジが詞/曲を、シアターブルックが編曲/演奏を担当しただけあって渋味のあるロック・ナンバーだが、豊崎の歌がまろやかさを添えている。歌詞が伝えるのは、時空を超えた大きな〈愛〉。 *土田

 

10. シャムロック
古屋真と関淳二郎のタッグによるこの曲は、ほんのりカントリー・タッチのポップ・チューン。〈かかと弾ませて行きましょう♪〉〈口笛揃えて行きましょう♪〉というリリック通り、軽快に刻まれるビートやクラップがウキウキと街を行く主人公の姿を浮かび上がらせる。ハッピーなフィーリングに包まれた一曲。 *土田

 

11. タワーライト
APOGEE永野亮さんに東京タワーの曲を作ってほしい!〉という豊崎の明確なヴィジョンから制作がスタートしたこの曲は、緻密なエレクトロニクスとオーガニックなギター、そして儚く甘美なメロディーがひとつになったナンバー。「永野さんのソロ・ワークも大好きで、よくCDをかけながら一緒に鼻歌で歌ってたんです。おこがましいですけど、そのときから〈この感じだったら、自分の曲としても表現できるかも〉というイメージがあったんですよね。レコーディングには永野さんがコーラスで参加してくれて、まさに〈夢が叶った!〉っていう感じでした。あと、ちょこっとだけギターも弾かせてもらってるんですよ~。東京タワーは(徳島県出身の豊崎にとって)いまも憧れの象徴だし、見るたびにドキドキするんです。初心を忘れずにいられる、大切なモチーフなんですよね」。 *森

 

12. 一千年の散歩中
9枚目のシングル“CHEEKY”でもタッグを組んだ安藤裕子の作詞/作曲によるこのナンバーは、繊細かつ雄大な旋律と共に〈あなたに会いに行こう〉という前向きなフレーズが広がるバラード。30代を目前にした豊崎自身の状況とも強く重なっているという。「“CHEEKY”のときは〈寂しいよって大きな声で言えない女の子〉というイメージで書いてくれたみたいなんですが、今回は20代最後の年ということを踏まえて、〈もう1回真っ白になって、思い切ったことをやってみよう〉という前向きな気持ちにさせてくれる曲を作っていただきました。素っ裸の気持ちじゃないないと歌えない曲だし、レコーディングでもいちばん緊張しました。森俊之さんが〈必要な音しか残っていない〉というアレンジを施してくれて、優しい雰囲気のなかにもソリッドな手触りがある曲に仕上がってますね」。 *森

安藤裕子の2016年作『頂き物』収録曲“骨”