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カールとリックの30年(以上!)

 カール・ハイドリック・スミスが共に活動を開始したのは、なんと80年のことだ。後のTOMATOに名を連ねるジョン・ワーウィッカーも含む前身バンドで、ニューウェイヴ全盛期にメジャー・デビュー。アルバムを2枚出した後にサイアーへ移籍する段階で、メンバー交替も踏まえてアンダーワールドへと発展している。通称〈Mk-I〉と呼ばれるバンド時代のアンダーワールドも引き続きシンセポップ路線で2枚のアルバムを残すも脱退が相次ぎ、3枚目のアルバム制作中にレーベルから契約を切られてしまう。2人の逆襲はそこから始まった。

UNDERWORLD Dubnobasswithmyheadman Junior Boy's Own/Universal(1994)

クラブDJのダレン・エマーソンを加えたトリオ=通称〈Mk-II〉での初作。幻の3作目のためにMk-Iで作っていた“M.E.”も含みつつ、ダンス路線へ大胆に移行したサウンドが巨大フェスの時代にハマった。現行の20周年記念盤には代表的なアンセム“Rez”(93年)などを追加収録!

 

UNDERWORLD Second Toughest In The Infants Junior Boy's Own/Universal(1996)

〈2番目のタフガキ〉という邦題も秀逸(?)な世界的ヒット作。ダレンの関与が増したことでトランシーなダンス・トラックとして強度を増しているのがポイントだ。20周年記念盤には、映画「トレインスポッティング」で著名な“Born Slippy .NUXX”(95年)などを山盛り追加。

 

UNDERWORLD Beaucoup Fish Junior Boy's Own/Universal(1999)

解散危機を乗り越え、ツアーしながら制作されたこともあって、ドナ・サマー“I Feel Love”のベースラインを引用した“King Of Snake”など直情性とスケールの大きさがさらに際立った一枚。同年には〈フジロック〉登場も果たすも、結果的にはダレンを含むトリオでの最後のアルバムに。

 

UNDERWORLD A Hundred Days Off Junior Boy's Own/Universal(2002)

カールとリックのコンビという現体制のキックオフ。ガンガン踊らせる“Dinosaur Adventure 3D”などを主軸に、ダレン離脱を経ても変わらないユニットの現在と未来を提示してみせた。アンセミックなプログレッシヴ・チューン“Two Months Off”が本国でもヒットを記録。

 

UNDERWORLD Oblivion With Bells Underworld/Universal(2007)

ツアーや音源配信への試み、ガブリエル・ヤレドとのサントラ制作などを挿んだ5年ぶりのアルバム。フロアライクな側面が後退し、歌モノとしての色合いが濃い“Boy, Boy, Boy”など多様な楽曲を披露している。サポートDJのダレン・プライスU2のラリー、そしてイーノも参加。

 

UNDERWORLD Barking Cooking Vinyl(2010)

ダブファイアマーク・ナイトポール・ヴァン・ダイクアップルブリムら各界の大物と共作曲が並ぶ、従来の流れにおいては異色なコラボ集。それゆえかトラックごとの彩りもジャケ通りにカラフルで、全体的に聴きやすい。ハイ・コントラストとのポップなドラムンベース“Scribble”はその極み。

 

KARL HYDE Edgeland BEAT(2013)

イーノ近年の相棒として知られるギタリストのレオ・エイブラムスをパートナーに迎えた、カール初のソロ・アルバム。アコースティックな雰囲気のトラックに本人の歌唱がじっくり馴染む純粋な歌モノ作品で、ユニットから解放されることで主役のアーティスティックな知性が表に出た印象だ。

 

RICK SMITH Trance Universal(2013)

「トレインスポッティング」以降も絡んできたダニー・ボイル監督作品のサントラは、単独でスコアを担当したリックのソロ作とも言えるものに。合間にモービーらの楽曲もチョイスしつつエレクトロニックなオリジナル曲を聴かせ、とりわけエミリー・サンデーを迎えた“Here It Comes”が素晴らしい。

 

ENO・HYDE Someday World Warp/BEAT(2014)

アンダーワールド作品での共演から交流を温めてきたカールとブライアン・イーノによるタッグ作品。イーノと新鋭フレッド・ギブソンの主導するソング・オリエンテッドな内容で、全体の雰囲気は両者に共通するニューウェイヴ作法で気楽にまとめられている。アンディ・マッケイもサックスで参加。

 

ENO・HYDE High Life Warp(2013)

上掲作から数か月後に届いた豪華タッグのセカンド・アルバム。即興性も高いインスト中心の方向性は前作の真逆を行くもので、実験的な要素も強いセッション作品だ。レオ・エイブラムスらを従えてCDJをエキセントリックに操るイーノの楽しそうな姿に、カールも思わずリックが恋しくなった?