タニザワトモフミ〉から〈谷澤智文〉へ。名前の表記を変えて新たな一歩を刻むシンガー・ソングライターの新作は、タイトル通りスペイシーな広がりを持ったアルバムだ。谷澤は2012年に世界一周の旅に出て、そのなかで書き溜めた曲を元にバンド・プロジェクト、SPACE LIKE CARNIVALをスタート。それが現名義の活動へと発展したが、本作では彼が旅先で聴いたさまざまな音楽からの影響を散りばめながら、各曲が継ぎ目なく繋がれていく。多彩な楽器の音色、トライバルなビート、沸き上がるコーラスなど、いくつもの要素を織り込んで次々と変化する音の風景。そのトリッキーな演出に胃もたれしないで聴いていられるのは、弾き語りを軸にしたアコースティックなサウンドの心地良さに加え、そこに広々とした立体的な音響空間があるからだ。そして、主役の滑らかなファルセット・ヴォイスはメロディーに乗って伸びやかに飛翔する。一冊の本を読むように、一本の映画を観るように、歌の世界を旅する作品だ。