台湾ポップ・シーンを代表する3人組、宇宙人(Cosmos People)が、2月に同時リリースした『10000 Hours』『TIMELAPSE』を引っ提げて3月にジャパン・ツアーを開催。Mikikiでは先立って彼らの新作についてのインタヴューを公開しましたが、ここでは3月4日に行われた東京・原宿ASTRO HALL公演の模様をレポートします。

日本のファンのみならず、台湾からもはるばる訪れた人もいたのか(!?)、端々で中国語も飛び交うアットホームなライヴとなりました。6月には再来日が決定している(概要は記事の最後に!)宇宙人、その予習としてもご活用ください。 *Mikiki編集部

★台湾の3人組、宇宙人(Cosmos People)の〈宇宙人らしさ〉とは? 日本語詞に初挑戦&自身の成長過程映した2作品を語る

 


初めて観る宇宙人のライヴ。事前に聴いておいたのは、先立ってリリースされた日本語でのアルバム『TIME LAPSE』。台湾では母国語で歌ったアルバムが3枚出ているけど、それもあえて聴かずに。〈きっと好きなはず!〉という信頼をいただいてレポートを頼まれたので、まずは観てみようと、冷静に(文中の曲名は後からリサーチしたもので、観てるときは知りませんでした)。

神宮前の交差点を渡り、会場となっている原宿ASTRO HALLに近づくと結構な行列。宇宙人ってそんなに人気バンドだったのか!?――と、ここで早くも〈乗り遅れた〉気分を痛感する。会場に入ってあたりを見渡すと、お客さんの層は、バンドと同世代(20代後半)かちょっと上、女性がやや多いかな?という印象。400人キャパの会場はいっぱいいっぱい。〈まだお客さんが入って来られますのでもう一歩前にお詰め願いまーす!〉という会場スタッフの声がひっきりなしに響く。

いよいよ開演! 女性ファンからの黄色い声援も飛び交うなか、温かい拍手に迎えられてメンバーが登場。イントロダクションは、ブルージーなインストゥルメンタル。えっ!? 宇宙人ってそういうバンドなのか?――『TIME LAPSE』では、J-Pop的な佇まいもあるクールでちょっぴりソウルフルなバンドという印象があったので、予想外の出だし。それでもって矢継ぎ早に届けた次の曲“真實朋友 (Offline Friends)”のイントロがまたガレージ・テイストで、続く“沒感覺 (Rudderless)”も同様にビートルズ由来を思わせるポップなメロディーがすごく好印象で、たまらなく良い。前へ前へと出てくるドライヴィンなベース、情熱的なギター・ソロなど個人技もしっかりとアピールしながら、カーッと熱くなるツボとうっとりさせるツボ、それらをバランス良く突いてくる楽曲の数々は、すーっと染み入る感じ。

〈トキオ~、宇宙人です!〉というメンバーの挨拶に続いて演奏されたのは……おっ、これは知ってる曲! 『TIME LAPSE』にも入っていた、口笛のイントロも印象的な日本語曲“あなたは”。ファンの間ではすでにキラー・チューンとなっているようで、イントロが鳴った瞬間から大盛り上がり! CDで聴くよりもグルーヴィーな演奏が際立っている。

続く90年代グラスゴー・サウンドを彷彿とさせる“Oh Girl”や、ライトなファンク・ナンバー“要去高雄 (高雄に行かなきゃ)”……サウンドもヴァラエティーに富んでいて、しかしそれ以前に、引力の強いメロディーでグイグイ引き寄せていく彼ら。リズム&ブルース風の“彼女はBOSS”など、この日は『TIME LAPSE』収録の日本語曲もいくつか披露してくれたのだが、ヴォーカル・小玉シャオユー)の歌唱はたどたどしさが少ないどころか、しっかりと情感が伝わってくるもので、外国人特有の、日本語で歌うと一気に萌え要素が加わる感じがなく、逞しい。

中盤では、ボッサ・テイストを忍ばせた“想把你拍成一部電影 (君を撮りたい)”、幻想的なスロウ“一萬小時 (10000 Hours)”、宇宙人流の“Let It Be”とでも呼びたいピアノ・バラード“淹沒 (Drown In You)”など、じっくりと胸アツにさせるナンバーを立て続け、バンドの懐深さを見せつけてくれた彼ら。 

ステージはまだまだ終わらない。ギターの阿奎アークェ)が〈ボクのいちばん好きな曲です〉と送ったハートフルでソウルフルなポップソング“寂寞之上 (Alone Together)”や、メロディーと寄り添って泳ぐエレピの響きがノスタルジアを誘う“摔角選手 (レスラー)”でふたたびお客さんの身体を揺さぶりはじめると、極めつけは4ビートのロックンロール“踢踢他 (ヤツを蹴っちゃえ)”。

その後、この日最初のMCらしいMCを聞かせてラスト・スパート。出だしで長閑なポップスかと思わせながら後半に向かって徐々に盛り上がり、果てはお客さんとの合唱まで発展する大曲“一起去跑歩 (一緒に走ろう)”、2トーン・フィーリングの“Hey”で賑々しく本編終了!――そうだ、〈このバンドって誰っぽい?〉と訊かれたら、マッドネスと答えることにしようかな。この雑食感というか、キャラも含めた人懐っこさも含めて。でも、すぐに〈なるほど!〉と手を打ってくれる人はいるか!?

アンコールは、しっとりと“兩人雨天”から。『TIME LAPSE』では日本語で歌っていたが、ここでは台湾語ヴァージョンで演奏。そして最後は、日本語で歌う“もっと遠くへ”。本編で幾度となく生まれていた一体感が、ここに来て最高点に。アリガトウ!――思わずそうつぶやきたくなるフィナーレだった。

それにしても、彼らのライヴを初めて観て感じたのは、非常に親しみやすく、感情を揺さぶるグッド・メロディーを持ちながら、そこだけに頼らず、そこばかりで押さず、さまざまなサウンド・アプローチでお客さんを終始ワクワクさせてくれるエンターテイメント魂。比較的女性のお客さんが多めのライヴでよく見かける、男性客の肩身が狭くなるような雰囲気はまるでなくて、みんなが幸せそう。このバンドを、今度は自分が誰かに紹介しなくちゃいけない番だなあと思わされるステージだった。

【SETLIST】
1. Intro
2. 真實朋友(Offline Friends)
3. 沒感覺(Rudderless)
4. あなたは ~And You?~
5. Oh Girl
6. 要去高雄(高雄に行かなきゃ)
7. 彼女はBOSS ~She's The Boss~
8. 想把你拍成一部電影(君を撮りたい)
9. 一萬小時(10000 Hours)
10. 淹沒(Drown In You)
11. 寂寞之上(Alone Together)
12. 摔角選手(レスラー)
13. 踢踢他(ヤツを蹴っちゃえ)
14. 一起去跑步(一緒に走ろう)
15. Hey
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EN 1. 兩人雨天(Rainy Day)
EN 2. もっと遠くへ ~Move Forward~

 


 宇宙人(Cosmos People)来日!

「台湾カルチャーフェスティバル」オープニング企画
〈台湾の音楽フェスへ行こう!〉

6月11日(土)台湾文化センター
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〈Cosmic Lounge〉
6月12日(日) MOTION BLUE YOKOHAMA
自由席 6,000円
BOX席 24,000円+シート・チャージ 6,000円(4名まで利用可能)
1st 開場 3:15pm/開演 4:30pm
2nd 開場 6:15pm/開演 7:30pm
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