JAZZ WORLD BEAT 2016
JAZZの新たなビートが生まれる

 〈WORLD BEAT〉毎年この刺激的なフェスティヴァルに思いを馳せる人は少なくないのではないだろうか。過去スタッフ・ベンダ・ビリリシンク・オブ・ワンなどを配し刺激的かつヴァラエティに富んだラインナップでリスナーを唸らせてきた国内屈指のワールド・ミュージックの祭典である。今年もその開催がアナウンスされた。そしてそこには「JAZZ」という冠がついている。

 主催するプランクトンは文字通りワールド・ミュージックを本懐としてきたが、渋さ知らズ山中千尋の公演をプロモートするなど独自のジャズ的側面も持ち合わせている。だからこそ、そのプランクトンによるジャズ・フェスティヴァルにはより一層のこだわりが表れ、今回も充実と興奮を与えてくれるに違いない。

 めぐろパーシモンホールを舞台に2部構成の大ホールと「アフタヌーン・サロン・ジャズ」と題された小ホールでの公演、3つのテーマからなる今回のイヴェント、第1部では畠山美由紀エミ・マイヤーという二人の才媛がそれぞれスタンダードを歌う。自由な佇まいと豊かな表現力を以てCMなど多岐にわたり活躍する彼女達が敢えてジャズ・スタンダードに挑む時、そこで生まれるものは?

 そして〈WORLD BEAT〉と題された第2部こそ本フェスの目玉、鍵盤の魔術師オマール・ソーサと革新のタップダンサー熊谷和徳の共演だ。2014年、会場を熱狂の渦に巻き込んだ奇跡の夜から2年、今回はオマールと熊谷の一対一でのパフォーマンスである。

 オマールの指が紡ぐ音から滲み出るビートがダンスを誘い、熊谷はダンスからビートを生み出す。身体に直結したビートの交感がジャンルや国境を融解するのだろう。ジャズとはそのようにして何度も新たなビートを獲得してきた。最新作『JOG』で魅せる最先端のジャズに共鳴するかのようなオマールの新境地を経てのアプローチは特に見もの、一挙一動、目が離せないことになるだろう。

 大ホールでの公演に先立って開催される小ホールでの公演も、小沼ようすけスガダイローダブルトーラス間を奏でる、そのサブステージと呼ぶには魅力的に過ぎる充実の面々が繰り出す精緻かつダイナミクス極まる表現によって予備知識無用で我々をジャズの世界へ招き入れてくれる。

 3部とも、わかりやすいドラムによるビートは存在しない。内から沸き起こる魂のやりとりによって生み出される鼓動、それが心を躍らせる時、ジャズを入口に世界が繋がる。

 それを感じる夏が今年やってくるのだ。

オマール・ソーサ・クァルテットによる2014年のライヴ映像
熊谷和徳とU-zhaanによる2011年のパフォーマンス映像
 

LIVE INFORMATION

ジャズ・ワールドビート 2016
○7月16日(土)
会場:めぐろパーシモンホール(東京)
【大ホール】16:15開場/17:00開演
出演:オマール・ソーサ/熊谷和徳/畠山美由紀/エミ・マイヤーwith ダブルトーラス
MC:中川ヨウ
【小ホール】13:30開場/14:00開演
出演:ダブルトーラス/スガダイロー/小沼ようすけ/間を奏でる
www.plankton.co.jp/jazz2016