COLUMN

西本智実×高見沢俊彦が伝統と革新を具現化、ロックとオーケストラが見事なコラボ見せたコンサートの模様をレポート

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  • 2016.04.26

【LIVE REPORT】
INNOVATION CLASSICS TOMOMI NISHIMOTO×TOSHIHIKO TAKAMIZAWA
西本智実×高見沢俊彦

 
(C) 加藤千絵(CAPS)
 

伝統と革新~西本の視点でクラシック作品の聴き方を提案するコンサート

 世界を舞台に活躍する指揮者、西本智実と、THE ALFEEのリーダーでありギタリスト、高見沢俊彦によるコラボレーション・コンサートが開催された。高見沢からの発案かと思いきや、じつは西本からのオファーでスタートしたというこのプロジェクト。それだけに西本のクラシック・サイドからのロックへの関心が発想の源であり、彼女流の新しい試みが盛り込まれていた。そして、それに応えることが出来たのはロックのみならずクラシックにも造詣の深い高見沢の懐の深さ故のことであろう。

 さて、バンド形態で演奏するロックとオーケストラによるクラシックの共演は、過去にも色々な形でアプローチがなされてきた。まず、60年代後期から70年代初期にかけてイギリスのロック・バンド、ムーディー・ブルースディープ・パープル、イタリアのイ・プーなどが自身のオリジナル曲に大々的にオーケストラをフィーチャーしたアルバムを発表。これらはバンドの演奏を核としながらオーケストラの演奏が伴奏として機能するというスタイル。一方、その時代にイギリスのロック・バンド、エマーソン・レイク&パーマーEL&P)は、オーケストラを加えずにキーボード、ベース、ドラムというバンド編成で『展覧会の絵』を発表。その後イングウェイ・マルムスティーン松本孝弘は、エレクトリック・ギターのソリストとしてオーケストラと共演するという、エレクトリック・ギター協奏曲のスタイルによる作品を発表した。

 じつは、このエマーソン・レイク&パーマーのアルバム『展覧会の絵』との出会いこそが西本をこのプロジェクトへ駆り立てたきっかけ。高見沢にとってもこのアルバムは少年時代にリアルタイムで聴いて心躍らせた忘れがたき名盤である。そこから次々にアイデアが膨らんでいったことは想像に難くない。EL&Pのようにクラシックの題材をバンドのみで演奏したり、逆に通常通りオーケストラだけで演奏したり、両者が同時に演奏したり、さらにギターとオーケストラの協奏曲となったり、いろいろなアプローチが可能だ。つまり、今回の二人のプロジェクトはクラシック、ロックというジャンルの融合であると同時に、過去における様々なアプローチの融合でもあるのだ。

 コンサートの第一部は西本がバンドとオーケストラの演奏バリエーションを巧みに構成した「ヴィヴァルディ:四季から『夏』第三楽章」、高見沢がオーケストラと一緒に演奏したくて選んだという「アルビノーニ:弦楽のためのアダージョ」など、二人のこだわりが反映された興味深い選曲が並ぶ。そして第2部は二人のコラボレーションのきっかけでもあるムソルグスキー作曲:ラヴェル編曲による組曲「展覧会の絵」。バンドによる演奏や高見沢のギターによるソロ・パートをふんだんにフィーチャーすることによって、オリジナルのピアノ・バージョンやラヴェル編曲によるオーケストラ・バージョンでもなく、さらにEL&Pのバンド・バージョンでもない、全く新しい『展覧会の絵』を聴かせてくれた。 元来、コアなクラシック・ファン、ロック・ファンにはそれぞれのジャンルの伝統性を重んじる保守的な傾向が強い。それはとても大切な事である。しかし革新的な試みを忘れてしまうと、そのジャンルは閉塞化してしまう。それだけにジャンルをクロスオーバーするこのプロジェクトには、双方を理解した上での有無を言わせぬ説得力が必要。つまりアーティストとしての莫大なエネルギーを要するのであるが、さすが両ジャンルにおいて旬な活躍を展開している西本智実と高見沢俊彦。伝統と革新を具現化したコラボレーションを見事に成し遂げた。

 


INNOVATION CLASSICS
TOMOMI NISHIMOTO×TOSHIHIKO TAKAMIZAWA

○2016年2月20日(土) Bunkamura オーチャードホール
○出演:西本智実(指揮)高見沢俊彦(g)イルミナートフィルハーモニーオーケストラ
○演奏曲
Takamiy Classics Fantasy op.1
ヴィヴァルディ:「四季」より『夏』第3楽章
マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲
アルビノーニ:弦楽のためのアダージョ
エルガー:行進曲「威風堂々」第1番
ムソルグスキー:ラヴェル編曲 組曲「展覧会の絵」

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