COLUMN

東京文化会館の人気企画〈プラチナ・シリーズ〉、クラウス・フロリアン・フォークトや渡辺貞夫ら登場する豪華な5公演

上野の森の「宝石」の音楽空間で間近に聴く、耳のご馳走たち

 東京のJR上野駅に面した広大な緑の上野公園。改札を出てすぐに、他国のル・コルビジェ建築とともに世界文化遺産の指定を目指す国立西洋美術館があるが、その向かい側にはコルビジェの弟子だった前川國男が設計した東京文化会館が威容を誇る。日本が太平洋戦争に敗れ、東京が大空襲で焼土と化してから僅か16年後の1961年(昭和36年)に完成した同会館は長く、都民にとっての「日本を代表する音楽の殿堂」であり続けた。

 日本国内の器楽ソリスト、声楽家、室内楽奏者には649席の適切な規模、優れた音響、長い歴史を刻みながらもモダンさを失わない雰囲気のすべてが「宝石」のように輝く理想のリサイタル会場である小ホールが、ひとかたならない存在意義と価値を放ってきた。

 86年のサントリーホール開館を境に公共と民間のホールが首都圏で急増、様々な企画を競うようになってしばらくの間、東京文化会館は地味な存在と映っていた。だが2004年に音楽監督制を導入し、初代に指揮者の大友直人(現在は小林研一郎)が就いて以降、従来のクラシック音楽の狭い枠にとらわれない大胆な企画で再び注目を集めだした。小ホールを舞台にした「一流アーティストによる珠玉のコンサート」という触れ込みの、「プラチナ・シリーズ」も人気企画であり、16年度5回の顔ぶれは「超」のつく豪華さだ。

クラウス・F・フォークト(C)Alex Lipp
 
浜田理恵
 
ゴンサロ・ルバルカバ(C)Yasuhisa Yoneda
 
タチアナ・ヴァシリエヴァ(C)Sasha Gusov
 
渡辺貞夫(C)Masaya Takagi
 

 6月6日の初回はハンブルク州立歌劇場管弦楽団のホルン奏者からオペラ歌手に転じ、新世代のヘルデンテノールの旗手に躍り出たクラウス・フロリアン・フォークト。新国立劇場の『ローエングリン』で再び主役を歌うための来日だが、上野の森へはピアノのヨプスト・シュナイデラートとともに現れ、リート(ドイツ歌曲)の傑作であるシューベルトの連作歌曲集「美しき水車屋の娘」に挑む。9月22日の第2回は日本、フランスの両国で幅広いレパートリーを切り開いてきたソプラノの名歌手、浜田理恵による「言葉は歌い、音楽は語る」。ピアノで加わる三ツ石潤司がこの日のために作曲した「音楽遊戯《アリスの国の不思議》」の世界初演が注目される。10月6日の第3回はキューバのジャズ・ピアニスト、ゴンサロ・ルバルカバで、破格の音楽性は説明不要! 11月2日の第4回は進境著しいロシアの女性チェロ奏者、タチアナ・ヴァシリエヴァによる無伴奏3曲の直球。2017年2月17日の第5回は「ジャズ界のスーパー・レジェンド」と銘打ち御大、渡辺貞夫が「大トリ」を担う。もう全部、聴きに出かけるしかないだろう。

クラウス・フロリアン・フォークトによるシューベルトの歌曲〈小川の子守歌〉

 

LIVE INFORMATION

Music Program TOKYO プラチナ・シリーズ
○第1回
クラウス・フロリアン・フォークト ~スターテノールが歌う「水車屋の娘」~
6月6日(月)19:00開演
出演:クラウス・フロリアン・フォークト(T)ヨプスト・シュナイデラート(p)
曲目:シューベルト:歌曲集「美しき水車屋の娘」
○第2回
浜田理恵 ~言葉は歌い、音楽は語る~
9月22日(木・祝)16:00開演
出演:浜田理恵(S)三ツ石潤司(p)晴雅彦(Br)中村真美(cl)山本直輝(vc)
曲目:サティ:ダフェオネ
○第3回
ゴンサロ・ルバルカバ ~キューバが誇る世界的ジャズ・ピアニスト~
10月6日(木)19:00開演
出演:ゴンサロ・ルバルカバ(p)
○第4回
タチアナ・ヴァシリエヴァ ~無伴奏チェロの若き至宝~
11月2日(水)19:00開演
出演:タチアナ・ヴァシリエヴァ(vc)
曲目:J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV1007、無伴奏チェロ組曲第5番 ハ短調 BWV1011/コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタ
○第5回
渡辺貞夫 ~ジャズ界のスーパー・レジェンド~
2017年2月17日(金)19:00開演
出演:渡辺貞夫(sax)ほか
www.t-bunka.jp/

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