INTERVIEW

でんぱ組.inc、さらなる拡張めざしてJ-Popを更新せんとする気概に満ちた新アルバム『GOGO DEMPA』を古川未鈴が語る

でんぱ組.inc、さらなる拡張めざしてJ-Popを更新せんとする気概に満ちた新アルバム『GOGO DEMPA』を古川未鈴が語る

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みんなの背中を少しは押せるようになった――勢いのままに駆け抜けてきた6人の日々があるからこそ丁寧に歌えたニュー・アルバムを、古川未鈴が語る

自分の役割を知った

 「あまりに壮大だから、ファンの方のあいだで〈でんぱ組.incは解散しちゃうんじゃないか〉って噂が流れたんですよ。大団円すぎだし、やり切った感がありすぎたみたいです。〈え!? しないよ?〉みたいな(笑)」(古川未鈴:以下同)。

 これは、先日公開された“STAR☆ットしちゃうぜ春だしね”の9分近くに及ぶMVの話である。壮大なセットとダンサーを従え、メンバーそれぞれが映画のオマージュとなるシーンに登場するMVで、最終的には出演者が総登場して30名超のモブ・シーンになるのだが、その撮影が華々しく終わったかと思うと、カーペットに並べられた人物名をカメラが追っていく長回しが始まり、メンバーはカメラを追って画面に映り込んで歌う。それがエンド・クレジットであるのと同時に、もうひとつの新曲“ファンファーレは僕らのために”のMVとして成立するという凝りまくった仕様になっているのだ。このテンションの高い2曲と〈やり切った感がありすぎ〉の圧倒的なクリエイティヴィティーを目のあたりにし、来たる4枚目のフル・アルバム『GOGO DEMPA』への期待値が一気に跳ね上がったわけだが、6人はその期待にしかと応えてみせたと言っていいのではないだろうか。この新作は、これまでのグループのイメージを保ちつつもさらなる拡張をめざし、果てはJ-Popを更新せんとする気概に満ちた作品となった。

でんぱ組.inc GOGO DEMPA MEME TOKYO/トイズファクトリー(2016)

 「去年は“おつかれサマー!”から季節感のある曲が続いて、その後に1月の“破! to the Future”から2月、3月とでんぱ組.incとしてはド直球の曲がきて。季節感とでんぱ組.incらしさと、そこにもうひとつの要素を付け足して出来たのが『GOGO DEMPA』なのかなって思います。いままでは〈勢い!〉っていう感じだったけど、今回は丁寧さもある。“キボウノウタ”とかまさにそうで。別日にもう一度録り直させてもらったくらい、歌をがんばりました。それから、みんなのことを応援するような歌が多いです。いままでみんなの背中を押したことがあるのかって考えると、私はそんな人ではないなと思っていて。でもいまは、〈どーん!〉とは押せないけど、〈ちょん〉くらいはできるようになったかな(笑)。(現体制になって)5年目だからこそ歌えるようになった曲がたくさんあります」。

 “惑星★聖歌~Planet Anthem~”はこれまでなかったタイプの楽曲のひとつ。でんぱ組.inc流のEDMで、いつになく力強いメッセージはジェーン・スーのペンによるもの。

 「あるようでなかった曲ですよね。新しい挑戦もしていて。ラップ部分をえいたそ(成瀬瑛美)とピンキー(藤咲彩音)に全部任せているんです。6人平等に歌うことが多かったので、こういうふうにフィーチャーする形も珍しいです」。

 そして、Laika Came BackCozyこと車谷浩司が作詞/作曲した“アンサンブルは手のひらに”はスウィング・ジャズ・テイストな仕上がりに。

 「(夢眠)ねむさんがキャーキャー言ってましたね。これはレコーディングの最後が私だったんですけど、こういう楽曲だから大人っぽく色気ムンムンで歌いたいじゃないですか。でも、まとめて聴いてみたときにちょっと明るさが足りなかったみたいで、〈未鈴ちゃん、明るく歌って〉って言われて、〈はいわかりましたー〉って(笑)。この5年で成長できたことは、みんなが自分の役割を知ったことだと思います。ここはこう歌ったほうがでんぱ組.incとしていいだろうし、バランスもいいだろうって考えられるようになりました」。

 

どうか今を諦めないで

 全体を通して感じるのは、メンバーの歌に説得力が増したということ。歌が良くなったと思うか訊いてみると、こんな答えが返ってきた。

 「上手くなったとは思ってないかもしれない。みんなオタクだから理想が高いんですよ。本当は〈もっとこんな感じで歌いたい〉と思っているのに、そこに辿り着けていなくて、悔しいと思いながらがんばってます。昔はよく泣きながらレコーディングしてましたし(笑)。でも確かに、ちょっぴりですけど、最近はやりたいことが表現できるようになった。ここはスラーがかかった歌い方をしよう、クレッシェンドにしようって自分で試行錯誤できるようになったのが楽しくて。自分の歌声も嫌いだったけど、一生この声と付き合っていくんだから、この声が輝けるような歌い方を見つけるしかないんだなって思うようになりました。本当は透き通った声になりたかったですけどね(笑)」。

 らしくないほどエモーショナルな歌が聴ける“ユメ射す明日へ”は、最後の“あした地球がこなごなになっても”を迎える直前の『GOGO DEMPA』のハイライトと言えよう。

 「〈だからどうか今を 諦めないでいてね〉って最後に向けて盛り上がるところがあるんですけど、このアルバムを通して言いたいことはこの一言に尽きます。私はとにかく諦めないでガムシャラに生きてきたらなんとかなったよ、というところがあります。そのことを伝えていきたいなと思っているので、ここはかなりの想いを込めて歌わせていただきました。以前までのアルバムは〈これを聴けばでんぱ組.incがわかります〉みたいな説明をしていたんですけど、『GOGO DEMPA』は〈こんなでんぱ組.incも見られます〉っていう説明の仕方に変わりました。それくらいヴァラエティーに富んだ楽曲を歌えるようになったんじゃないかなと思います。それと、(初回限定盤は)ライヴの映像が入っているんですよ。そこは推したい! (でんぱ組.incの魅力を伝えるには)ライヴを観てもらうのが手っ取り早い。暇にさせない自信はあります。〈なんじゃこりゃ!?〉ってなってもらえると思う」。

 それにしても今回のインタヴュー、数年前だったら考えられないほど前向きな言葉が並んだのが印象的。

 「いやいや、私が前向きになれるのはでんぱ組.incのことだけですよ! あとは〈生きるのがめんどくさい……〉っていつも思ってます。昨日はカップ麺を2個食べましたし(笑)。そこは変わってないです。でも、みんなが喜んでくれることを報告したりするのが好きなんですよね。〈全国ツアーが決まりました〉とか〈どこどこでライヴをやります〉とか。そういうことを絶やさずに言っていけるグループでいたいなと思っています。まずはアルバムをひとりでも多く、たくさんの人に手に取ってもらいたいと思っています」。

タワーアカデミー
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