YOSA
注目プロデューサーによる〈ニュー・シティ・ヒップクラブ〉作品とは?
クロスオーヴァーな手腕を見せた一昨年の『Magic Hour』で早耳の注目を集めたYOSAが、OMAKE CLUB入りして2枚目のアルバム『Orion』をリリースした。OMAKE CLUBといえば、その初作にも客演していたTOKYO HEALTH CLUBの推進する〈踏み台レーベル〉で、このセカンド・ステップはYOSAの良さをよりキャッチーに届ける契機となるだろう。
そもそも10代の頃にレソパルから発表したEPや、コンポスト・ブラックから出たエディ・ミーツ・ヤンナ“Not What You Do”のリミックスが逆輸入的に話題となり、いわゆるダンス・ミュージック方面で認知されてきたYOSAだが、ハウスやニュー・ディスコ、アンビエントR&Bを絶妙に折衷したトラックメイカーとしての持ち味は、一面的な評価に止まっていいものではない。初作『Magic Hour』でもShigeoJDやK.A.N.T.Aをフィーチャーしていたのに続き、今回はSALU、NOPPAL、BASI(韻シスト)、Itto、SNEEEZE、そしてJABBA DA HUTT FOOTBALL CLUBといった豪華なラッパー陣から、水曜日のカンパネラや綿めぐみの制作でも知られるOBKR、OMAKE所属のZOMBIE-CHANGまでゲスト陣を増量、モダンな日本語ラップとしても都会派インディー・ポップとしてもスムースに耳を楽しませてくれる内容となっている。
眩しい滑り出しをIttoがしなやかに彩った“Life with You”、大ネタ使いに3度はダウンできるNOPPALとの“Spresh”、ハードボイルドなBASIの言葉がシブい“運命”など好曲が目白押しで、特にSALUとZOMBIE-CHANGが歌声を交わす“夜明け前”はSALU自身の新作にもリンクするドリーミーな出来映え。前作同様にSpiritztoneが要所に挿入したギターも効果を出している。THCやOMAKE周辺が賑わしくなってきた時節、この『Orion』を見上げてみよう。 *出嶌孝次