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カタログも続々とリイシューされるこの機会に、彼らの軌跡を振り返ろう!

TRAVIS Good Feeling Independiente/HOSTESS(1997)

胸を打つ美メロで知られる4人だが、スティーヴ・リリーホワイトが手掛け、全英8位を記録したこの初作に充満するのはむしろパワフルなエネルギー。時にギターが歪み、時にフランがシャウトするなど、若さが前面に出ている。リリース時にはオアシスともよく比較され、当のノエルも彼らを高く評価。ミディアム・テンポでじっくり感情を高ぶらせる“All I Want To Do Is Rock”など、後の〈トラヴィス節〉に通じる曲も。

 

TRAVIS The Man Who Independiente/HOSTESS(1999)

バンドの名を一躍広めた初期の代表作。曲の良さやライヴ活動でじわじわ評判を呼び、初登場7位から時間をかけて全英1位に! “Driftwood”“Turn”“Why Does It Always Rain On Me?”など、軽やかで思わず口ずさみたくなるナンバーが多め。彼らならではの純粋さや透明感が、こちらの心まで美しくするような内容だ。ナイジェル・ゴドリッチを主軸に、イアン・グリンブルマイク・ヘッジズもプロデューサーに名を連ねる。

 

TRAVIS The Invisible Band Independiente/HOSTESS(2001)

グループとしての記名性の高さよりも音楽そのものの質が大切――そんな思いもタイトルに込め、見事に全英チャート初登場1位を記録。引き続きナイジェル・ゴドリッチに指揮を委ね、ヴィンテージ機材で知られるハリウッドのオーシャン・ウェイ・スタジオで録音。“Flowers In The Window”をはじめ、アコースティックを基調とする音作りが、メロウさとエヴァーグリーンさの共存した空気感に結び付いている。

 

TRAVIS 12 Memories Independiente/HOSTESS(2003)

ニールの怪我を機にしばし活動を休止して生まれたこの4作目は、彼らが初めて社会問題を歌った一枚に。きっかけは2001年の同時多発テロ事件。“The Beautiful Occupation”では多国籍軍のイラク侵攻を、“Re-Offender”ではDV問題を取り上げるなど、世界に蔓延するさまざまな矛盾や歪みを描いてみせた。シリアスでダークなトーンが全体を覆うなか、生き抜くための希望を感じさせる美曲“Love Will Come Through”が光る。

 

TRAVIS Singles Independiente/HOSTESS(2004)

現時点で唯一となるベスト盤。タイトル通り、デビュー以降のシングル曲がズラリと並ぶほか、2つの新曲(“Walking In The Sun”と“The Distance”)も収められている。曲順は発表の時系列ではない。それゆえに彼らの成長譚ではなく、〈見えないバンド(=The Invisible Band)〉ということにこだわり、曲の良さのみで勝負してきた彼らの哲学が、感嘆するほど良い曲たちの間から純粋に浮かび上がってくる。

 

TRAVIS The Boy With No Name Independiente/HOSTESS(2007)

泣きながら笑いたくなるようなメロディーが連なる、トラヴィスらしさが発揮された一枚。本作に先立ってフランに子供が生まれたことも関係し(“My Eyes”はずばり息子誕生の曲)、人生の多彩さ、命や愛など人間にまつわるポジティヴな側面に目を据えた、とても晴れやかな作品だ。また、フラン以外のメンバーも作曲者としてクレジットされ、転機を感じさせる。プロデュースはナイジェル・ゴドリッチ。

 

TRAVIS Ode To J. Smith Red Telephone Box(2008)

自身のレーベルから発表した本作は、〈名もなきキャラクターに関する短編小説集〉というイメージで作られたそう。数回の小さなギグで楽曲たちを演奏し、こなれさせ、2週間という短期間でRAKスタジオにてレコーディング。果たして、初作にも通じる独特のロック感やエネルギッシュさが宿ることに。収録曲の半分以上をアンディ・ダンロップ(ギター)とダギー・ペイン(ベース)が書いている点も見逃せない。

 

FRAN HEALY Wreckorder Wreckord/Rykodisc(2010)

フランによる初のソロ・アルバムは、彼が住むベルリンでの録音。ポール・マッカートニーニーコ・ケースノア&ザ・ホエールトム・ホブデンら豪華ゲストも大勢駆け付けている。プロデュースはエミリー・ドビンズと共にフラン自身が担当。歌を軸にしつつ、ドラムンベースを採り入れたり、ピアノをリズム楽器のように使用したり、本隊のプロダクションとは異なるアプローチが試された、意欲的な一枚だ。

 

TRAVIS Where You Stand Red Telephone Box(2013)

自分の子供に人生で大切なことをひとつずつ伝えていく“Reminder”を筆頭に、穏やかで明るい曲ばかり。ダギーは本作を「ポジティヴでハッピーな作品」と衒いなく語っていた。デモを持ち寄る従来の方式ではなく、初めてスタジオで4人全員が100%コラボしながら制作。その結果、タイトル・トラックなど数曲でフランは演奏せずに歌うのみ、というこれまた初の試みも。前に向かおうとする彼らの姿勢が見え隠れする。