MUSIQ SOULCHILD
ネオ・フィリーきってのソングスターが新たな環境で作り上げた珠玉のニュー・アルバム!

 シリーナ・ジョンソンとのレゲエ・コラボ企画『9ine』(2013年)はあったし、クリセット・ミシェルテラス・マーティンロバート・グラスパー・エクスペリメントらの作品に参加もしていた。そのグラスパーに“SoBeautiful”をカヴァーされたことも記憶に新しいものの、オリジナル・アルバムは実に5年ぶり。ネオ・フィリーが生んだ最高のソングスター、ミュージック・ソウルチャイルド待望の新作『Life On Earth』がついに届けられた。デフ・ソウル~アトランティックを通じて後見した辣腕ケヴィン・ライルズ(現在はディアンジェロらをマネージメントしている)の元を離れ、今回のミュージックはウォーリン・キャンベルの主宰するマイ・ブロックに移籍。ウォーリンといえば『Luvanmusiq』(2007年)と『OnMyRadio』(2008年)で組んだ仲だし、近年は自身の手掛ける奥方エリカダマーニの楽曲にミュージックを招いてもいた。そんな好相性は、全曲が両者の共同プロデュースとなった今作においても最高の成果を上げている。

MUSIQ SOULCHILD (MUSIQ) Life On Earth My Block/eOne/ビクター(2016)

 “Champ”使いのリズミックな前半からドープな後半へ至る2段構えの冒頭曲“Wait A Minute”から一気に引き込み、ATCQ“Jazz(We've Got)”と同ネタの“Heart Away”など多重的な意味を忍ばせた名曲を列ね、トニ・トニ・トニの同名曲をドレイキーな風情で引用した“Loving You”、そこからドンテ・ウィンスロウ指揮のホーンを配してEW&Fマナーの“Changed My Mind”へ流れるあたりは〈ソウルチャイルド〉の面目躍如。そんな〈サン・オブ・ソウル〉ぶりは、いつも以上にメロディーメイクや唱法もろともスティーヴィー・ワンダーの影響を全開にした“Walk Away”や“Game Of Love”(日本盤のボートラ)の素晴らしさからも明快に伝わってくる。〈複雑な音楽的フォーミュラをシンプルに表現する〉ことを目標にしてきたという彼らしく、過去最高に伸びやかな歌声で温かくモダンなソウルを描く魔法の筆捌き。すべてのソウル/R&B好きに推薦したいこの快さは理屈じゃない。