伝説のキューバンジャズ・グループ〈イラケレ〉の音楽とスピリットを次世代へ!

 ジャケットに記された“Tribute to Irakere”というタイトルに心が躍った。1973年にキューバのトップ・ピアニスト、チューチョ・ヴァルデスアルトゥーロ・サンドヴァルパキート・デリヴェラらの凄腕ミュージシャンと結成したイラケレは、ジャズやクラシック音楽の洗練されたハーモニーと、キューバ音楽やアフリカ音楽の持つカラフルなリズムなどを融合させた躍動的な音楽で1970~90年代を席巻。現在も音楽シーンに影響を与え続ける伝説のフュージョン・バンドだ。本作は、そのリーダーであったヴァルデスが2015年8月にフランスのマルシアック・ジャズ・フェスティバルで行なったイラケレへのトリビュート・コンサートの模様を伝えてくれる嬉しいライヴCD&DVD。

CHUCHO VALDES Tribute To Irakere: Live In Marciac Jazz Village(2016)

 その記念すべきステージに立つのは、ヴァルデスが2010年から率いている若手精鋭集団、アフロ・キューバン・メッセンジャーズ。このコンサートに臨むヴァルデスの心の中には、イラケレの音楽とスピリットを次世代に伝えたいという強い気持ちがあったと伝えられている。そんなヴァルデスの熱い思いに応えるようにして、若きメッセンジャーズの面々は盤面いっぱいに熱演を展開。CDとDVDの2枚セットになっているが、DVDはコンサートをコンプリートに収録。巧みなカメラワークによって鮮明に描き出された映像を観ていると、まるでその場にいるかのような臨場感に包まれる。ホーン・セクションのキレの良いアンサンブルが鳴り響くイラケレの代表曲《Juana 1600》でスタートした後、バッハからデイヴ・ブルーベックまで飛び出してくる変幻自在のヴァルデスのピアノがフィーチャーされた《Yansa》や 《Afro-Comanche》、ミュージシャンとオーディエンスが一体となって盛り上がる《Afro-Funk》などを経て、怒涛の最終曲《Los Caminos》まで、イラケレの人気曲とヴァルデスの最新アルバム『Border-Free』(2013年)の楽曲などを織り交ぜた充実のプログラム。そこからはイラケレの音楽を起点とした現代キューバ音楽の息吹が伝わってくる。