アニメ「神のみぞ知るセカイ」のハクアが歌う“NAKED GENIUS”や、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」に登場する新垣あやせの“白いココロ”といったキャラクター・ソングを担当し、高い歌唱力と的確な表現力、透明感と愛らしさに溢れた声質に注目が集まっていた声優の早見沙織。昨年夏にアーティスト活動を本格的にスタートさせた彼女が、ファースト・アルバム『Live Love Laugh』をリリースした。幼少の頃から両親の影響でジャズやソウル、ファンクなどに親しみ、学生時代は夏フェスでRADWIMPSやサカナクション、東京事変といったバンドの音楽を体感。さらには「いまも足繁くライヴに通ってます。シェリル・リンを親と観に行ったり」という筋金入りの音楽好きでもある早見。「赤髪の白雪姫」のオープニング・テーマとなったデビュー・シングル“やさしい希望”と、セカンド・シングル『Installation/その声が地図になる』を含む本作には、彼女自身の音楽的な嗜好が大きく反映されているという。

早見沙織 『Live Love Laugh』 ワーナー(2016)

「いままでに歌ったことがないような楽曲にもチャレンジしていますが、基本的には私が好きなテイストだったり、自然に歌えるものが中心。〈自分に身近な楽曲〉というのは意識しながら制作していましたね。タイトルの『Live Love Laugh』に関しては、あとから振り返ったときに〈ファースト・アルバムの頃は、こういうことを大事にしていたんだな〉と立ち返ることができる言葉にしたくて。自分の音楽の軸として、そういうものがあったら素敵だと思うんですよね」。

 アコギとピアノを軸にしたオーガニックなサウンドと爽やかなメロディーラインを備えたポップ・チューン“NOTE”、ギター・ロックのテイストを押し出したアレンジのなかで〈数cmの自由を捨てて/新しい碧へ〉という前向きな意志を込めた歌詞が広がる“水槽”。カラフルな楽曲が揃った今作の中心にあるのはもちろん、彼女の歌声だ。楽曲の世界観とテーマを正確に捉え、豊かな広がりを持つポップスへと導く彼女のヴォーカルこそが、このアルバムの軸を担っている。

 「“NOTE”は最初に聴いたときから〈アルバムの1曲目っぽいな〉という印象があって。爽やかなイメージでスッと入ってくるし、私自身にもすごく馴染みましたね。“水槽”は大学生の頃、フェスに行ったときのことを思い出しました(笑)。アニメのキャラソンなどでもあまり歌ったことがない曲調だったので、レコーディングは新鮮でしたね」。

 タンゴのエッセンスを交えた官能的なナンバー“レンダン”、ピアノのみのシンプルなアレンジにより、生々しい歌の表情が感じられるバラード“あるゆらぐひ”などは、自身が作詞を担当している(後者は作曲にも参加)。特に詞が先行のスタイルで制作された“To years letter”には、今年5月に25歳となる彼女の心境が色濃く映し出されているようだ。

 「〈時間の経過〉をテーマにして書いた歌詞ですね。高校時代の友達と通っていた学校を見に行ったり、小さい頃に暮らしていたところの近くをたまたま通ったり、そういうことが重なって、そのたびに自分のなかで変わったところ、変わってないところを考えて……。シングルのリリース・イヴェントでこの曲を歌ったときに、いろんなことを思い出してジンワリきたのはビックリしましたね(笑)。でも、同じようなことは誰にでもあるんじゃないかなって」。

 今後は夏に〈Animelo Summer Live 2016 -刻 TOKI-〉に出演し、さらに秋には大阪、千葉、東京でワンマン公演を開催するなど、ライヴ活動も活性化。最初のアルバムが完成したことで、早見自身の音楽に対するモチベーションもさらに上がっているという。

 「いまは〈アルバムの曲をライヴでどんなふうに歌うか〉ということを考えていますが、フル・ステージには曲が足りないし、それを補うために(新曲を制作して)新しいジャンルを開拓したいなという気持ちもあって。そのときに、自分が人生のなかで触れてきた音楽を、より幅広く活かしていけたらいいなって思いますね」。

 


早見沙織
5月29日生まれ、東京出身の声優アーティスト。直近の「赤髪の白雪姫」「魔法つかいプリキュア!」「甘々と稲妻」「無彩限のファントム・ワールド」をはじめ、これまでに多くのアニメ作品へ声優として参加する傍ら、さまざまなキャラクター・ソングで歌唱を担当している。2015年4月、アーティスト・デビューすることを発表し、8月に初のシングル“やさしい希望”をリリース。2016年は2月に2枚目のシングル『Installation/その声が地図になる』を送り出し、8月に開催される〈Animelo Summer Live 2016 -刻 TOKI-〉への出演も決定。音楽活動が活発化するなか、ファースト・アルバム『Live Love Laugh』(ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント)をリリース。