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メンバーが選ぶ〈長い一日〉のサウンドトラックたち

須田洋次郎(ドラムス)

FABIANO DO NASCIMENTO Danca Dos Tempos Now-Again(2015)

THE HELIOCENTRICS & MELVIN VAN PEEBLES The Last Transmission Now-Again(2014)

 須田の一枚目は、リオ出身のギタリスト、ファビアーノ・ド・ナシメントの2015年作 『Danca Dos Tempos』(Now Again)。「ちょうどアルバムのアレンジを進めていた去年の秋頃に聴いていました。個人的に〈南米感〉が裏テーマな曲もありましたが、音が減っていくなかで面影はほとんどなくなってしまいました。気持ちとしては強く影響を受けています」。続いては、実験ファンク・バンド、ヘリオセントリックスと黒人映画の第一人者、メルヴィン・ヴァン・ピーブルズの2014年のコラボ盤『The Last Transmission』(Now Again)。「漂い続ける不気味な空気。同じく制作期間に聴いていた一枚です。ファンキーで即興性がありながら、この雰囲気はなんなんだと考えさせられました。『A Long Day』後半の暗い部分は、このアルバムを想いながら叩きました」。

 

川辺素(ヴォーカル/ギター)

MADONNA Like A Virgin Sire(1984)

NED DOHENY Separate Oceans Numero(2014)

 川辺がはじめにセレクトしたのは、マドンナの84年のセカンド・アルバム『Like A Virgin』(Sire) 。「バンド演奏でのダンス・ミュージックって何かな、と探していた時に〈コレいいな!〉とトーキング・ヘッズ同様にヒントになったもののひとつ。マドンナがいないマドンナみたいな音楽ができないかなと考えていました」。そしてもう一枚は、ウェストコースト系のAORを聴かせるネッド・ドヒニーの編集盤『Separate Oceans』(Numero)。「代表曲の他にデモが多数収録されている。そのデモ群は少ない人数の編成でラフかつあっさりとしたアレンジながら、それがかえって新鮮に聴こえました。今作の全体のアレンジはレイヤーを多く重ねるのではなく、慎ましいサウンドに統一するヒントにしました」。

 

nakayaan(ベース)

THE INTERNET Ego Death Odd Future/Columbia(2015)

LOOSE JOINTS Pop Your Funk West End(2013)

 nakayaanが最初に選んだのは、オッド・フューチャー所属のダウンテンポなソウル~R&Bバンド、ジ・インターネットの2015年作『Ego Death』(Odd Future)。「この3作目は、浮遊感は減ったものの、垂涎のクールさのベースラインが引っ張るボトムのぶっとさに完全に〈殺〉られ、屍のように繰り返し聴くばかりだった」。もうひとつは、アヴァン×ダンス音楽を推進したNY地下界の要人アーサー・ラッセルスティーヴ・ダーキストから成るルース・ジョインツの代表曲“Is It All Over My Face”。ここでは彼らのシングル・コレクション『Pop Your Funk』(West End)を紹介。「ラッセルのビートは適度に冷めていて、かつユーモアに溢れている。スカスカなアンサンブルで踊り狂えるということを教えてくれる」。

 

大竹雅生(ギター)

SLAPP HAPPY Acnalbasac Noom Recommended(1980)

ZNR Barricade 3 MARQUEE(1977)

 大竹がまずピックしたのは、カンタベリー系のアヴァン・ポップ集団、スラップ・ハッピーの80年作『Acnalbasac Noom』(Recommended)。「“めまい”のツアー時に自分が持って行ったCDのなかにたまたま入っていて、車内で流していたのをきっかけにその後もよく聴いていました。シンプルな編成と飾りのない音ながら、曲ごとにさまざまな表情を見せていく演奏は、制作時のモードに影響を与えた気がします」。もう一方は、退廃的なチェンバー・ポップ・デュオ、ZNR(ゼッデンネール)の77年作『Barricade 3』(MARQUEE)。「曲作りの時期に良く聴いてました。形容しがたい隙間だらけのチープな室内楽で、どことなく不穏な空気が流れています。自分たちの作品にどんな影響を及ぼしたかは謎ですが、あえて言うなら『A Long Day』後半の空気感でしょうか」。 *構成/bounce編集部