2010年にRPA&ジ・ユナイテッド・ネイションズ・オブ・サウンドとして作品を発表した元ヴァーヴのフロントマン。ソロ活動はもう封印と思いきや、何と10年ぶりとなる4枚目の新作が突然ドロップされた。しかも、その内容はミディアム・テンポな曲でストリングスを美しく響かせる、つまりヴァーヴ時代の大ヒット作『Urban Hymns』(97年)に通じる手法なのだから驚くばかり。ちなみに、ストリングス・アレンジはあの時と同じウィル・マローンだ。だが、そこはリチャード、約20年越しの二匹目のどじょうでは当然ない。いまやR&Bやヒップホップに精通する彼ならではのリズム使いや音色も折節に見え隠れし、深き音の層を分け入るような音響がごく自然に鳴っているのは流石。何より、人生経験を映したヴォーカル表現によってバラード群が琴線に触れまくり、これほど胸に染みるのか……と。全英1位は確実だろうし、日本にいるすべてのUKロック好きもひとまず表題曲だけでも聴いて、そして泣け。