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 では5月10日に東京文化会館で行われた記者発表(デフォートとカシアス両氏からの映像によるコメント)とオフィシャル資料を元に「ひとりの男の視点で描かれ、しかも主要な登場人物は沈黙の女たち……という小説を、音楽劇としてどのように具現化できるかチャレンジだった」(デフォート)という、本舞台のコンセプト及び出演者の概要、そして簡単な筋立てを以下にまとめてみよう。

[01]
歌手陣のメインとなるのはバリトンとソプラノ。江口老人役は初演と同じ、俳優としても定評のあるバリトン歌手のオマール・エイブライムが演じ、眠れる若い女たちを前にした印象や彼女たちが呼び起こす過去の女性遍歴などを語る。

オマール・エイブライム
©Kurt Van der Elst

[02]
初演のバーバラ・ハニンガンに変わって主役のソプラノを務めるのはベルギーの新星、カトリン・バルツ。彼女の役どころはかなり難解で、江口の行動や思考を個人的に解釈しながら、彼の記憶の中から現れる過去の女性としても語り(対話し)、舞台の「自然」描写などの表現も担う。

カトリン・バルツ
©Claudia Hansen

[03]
眠れる女たちは初演と同じく日本人ダンサーの伊藤郁女による身体表現によって演じられるが、同時に4名の女声コーラスの声を通しても描写される。コーラスはソプラノ:2名にメゾ・ソプラノ:2名からなり、昨年オーディションで選ばれた日本人の若手実力派歌手で構成。

伊藤郁女
©Kurt Van der Elst

[04]
訪れた江口が寝室に入る前に館の女主人と交わす会話もこの作品では大きな意味を持ち、舞台では男女の俳優による台詞で演じられる。今回の日本初演では長塚京三と原田美枝子がこの重要な役を担い、日本語の台詞が用意される。

長塚京三

原田美枝子
©平岩享

[05]
音楽はバロックと現代音楽を融合させたような作風だが、ジャズ・ピアニストとしても活躍する作曲家の個性として即興的な手法も用いられている。演奏は若手音楽家の育成や地元・上野地区との連携を図る意味で、東京藝術大学の2~4年生で構成されるアンサンブル「東京藝大シンフォニエッタ」が担当。指揮を初演と同じパトリック・ダヴァンが務める。

パトリック・ダヴァン
©Julien Pohl