写真提供/COTTON CLUB 撮影/米田泰久
 

面白い音楽をやってこそ! モンケストラ結成しちゃいました!

 近年、ジャズの鬼才セロニアス・モンクの再評価というか再発見といったような動きが活発に行われている。数多くの奇行、奇癖の持ち主だが、何よりも音楽家の関心は、その独創的な曲、演奏世界にある。ジョン・ビーズリーもその一人で、彼は何とモンケストラというオーケストラを組織してしまった。もっともビーズリーは、多くのモンク賛美者とは違って、その世界に耽溺することなく、ゆくゆくは羽を伸ばしてモンク以外の作品をとりあげることも考えている。

 実際、ビーズリーのモンクへの関心は、端的に言えば、音楽の面白さで、音楽は面白くなくてはいけないと考える音楽家なのである。ピーター・アースキンの最新作『ドクター・アム』は、ウェザー・リポートの現代版というのが基本コンセプトだが、キーボード奏者、編曲者として重要な役割を果たしているビーズリーの仕事っぷりは、まさにその音楽の面白さに集約される。常識を超えたリズムやアンサンブルを大胆に採用し、既成のイメージに囚われないそのアレンジ世界は、どこかモンク的な音楽の驚きにつながっている気がするし、一方、キーボードの演奏はジョー・ザヴィヌルのスタイルをまったくコピーすることなく、自分の世界をそこに着実に埋め込んでいく。これもまた常識を引きずらない音楽家魂と言うべきだろうか。

 セッション・ミュージシャン、スタジオ・ミュージシャンとしてたくさんの仕事をこなしてきたジョン・ビーズリーだから、当然たくさんのノウハウをもっているが、そのスタートは、やはりビッグ・バンドへの関心に行き着く。父がジャズ学校の教師で、そんなわけでサドメル・オーケストラを初め、クインシー・ジョーンズメイナード・ファーガソンなどを聴き漁ったようで、自然に自分のバンドの夢をどこかで育んでいたに違いない。

 きっかけは突然だったと言っていい。シベリウスを勉強していたとき、モンクの曲をコンテンポラリーなハーモニーでやったらどうなるだろうと思いついた。仲間とリハーサル・バンドを結成しやってみたら、これがとても面白く、夢中になってついにはアルバム制作にまで発展したという。「モンクは、クレイジーな音楽家だから、クレイジーなアレンジでもいいだろうと思ってやったんだ」と笑った。「サド~メル・バンドも発足当時はみんなスタジオ・ミュージシャンばかりで、それはぼくらも同じ。音楽が面白ければ、楽しければいいのさ。」という言葉には、音楽家の基本姿勢、活動を続ける核心のようなものがある。発売はこの秋の予定。さらにセロニアス・モンク生誕100年の来年に向けて積極的に活動したいという。