INTERVIEW

SKY-HI × tofubeatsの音楽談義―ディープな探求心を持つ2人が、ケイトラナダを起点に同時代のポップ・ミュージックを語る

SKY-HI × tofubeatsの音楽談義―ディープな探求心を持つ2人が、ケイトラナダを起点に同時代のポップ・ミュージックを語る

ハイチ生まれカナダ在住の新鋭トラックメイカー、ケイトラナダのファースト・アルバム『99.9%』の日本盤が先日リリースされた。本作はハウスを基調としていた初期のプロデュース作から音楽性を広げ、クレイグ・デヴィッドアンダーソン・パックアルーナジョージゴールドリンクジ・インターネットシド・ザ・キッドフォンテリトル・ドラゴンなど多彩なゲストを招集。J・ディラ由来のヒップホップや2000年代初頭のネオ・ソウル、ジャズ、ハウス、ディスコまでを吞み込みながら、〈ディアンジェロ&ザ・ヴァンガード『Black Messiah』以降〉とも言えるオーガニックなソウル・ミュージック勢ともリンクしたサウンドを全編に広げている。強い記名性と確かな審美眼を活かしながら、同時に頭を空っぽにしても楽しめるキャッチーなサウンドを実現させている点も『99.9%』の魅力だろう。

そこで今回は、アルバム・デビュー以前からケイトラナダの音楽を聴いていたというtofubeatsSKY-HIの対談を行った。J-Pop仕事からビート・ミュージック、ヒップホップなど幅広い活動を続けるtofubeatsと、AAAのメンバーでありつつラッパーとしても定評のあるSKY-HIこと日高光啓。リスナーとしてディープな探求心を持ち、アーティストとしても特定のジャンルにこだわらない活動を続ける彼らは、果たして『99.9%』をどう聴いたのだろう? トラックメイカー/ラッパーそれぞれの観点から、ケイトラナダの魅力を2人に語ってもらった。文中に出てくる音楽観や固有名詞の数々には、同時代のポップ・ミュージックを楽しむためのヒントがたくさん詰まっているはずだ。

KAYTRANADA 99.9% XL(2016)

 

『99.9%』は、曲数が多いところに既視感がある(tofubeats)

――ケイトラナダの話に入る前に、お2人の出会いについて改めて訊かせてください。最初に知り合ったのは『lost decade』(tofubeatsの2013年作)収録曲“Flesh Salad”の制作を通してですよね。tofubeatsさんはインディーズでの初のフル・アルバムのタイミングで、日高さんはSKY-HIの活動が徐々に本格化していく時期でした。

tofubeats「自分のアルバムに驚きを入れられたらと思っていたんですけど、風呂敷を広げすぎても良くないので、実力もあって、なおかつ僕が呼んでも変じゃない人を考えていたんです。あと、僕は家でも録れるラッパーの方って好きなんですよね。そういう人は自分で完成形をわかっているので、ラップも全然違う。そこからダメ元で頼んでみたんです」

――日高さんも〈tofubeatsならぜひ〉という感じだったそうですね。

SKY-HI「それはもちろんですよ」

tofubeats「ありがたいです(笑)。日高さんって、例えば5年前の発言と比べても、リリックなどの根っこの部分がズレてないと思うんですよね。最初に決めた的(まと)に一直線で向かっているというか。SKY-HIとそれ以外の活動が分かれていることで、それがより可視化されていて、自分のなかで〈これはこうするのが正解〉というのを持っているのがバシバシ伝わってくる」

――中身も男前というか。

SKY-HI「まぁ、そうですね」

tofubeats「(そう言われても)1mmも否定できない(笑)」

――逆に、日高さんから見たtofubeatsさんの魅力というと?

SKY-HI「たくさんありますけど、音楽や自分自身に対して純粋ですよね。音楽を好きになると中学生くらいで何かしらのこじれが生まれて、グリーン・デイサム41しか聴いていないのに〈俺はもう洋楽しか聴けない〉とか言ったりするじゃないですか(笑)。それも決して悪いことではないと思うけど、トーフの場合はあらゆる音楽に対して衒いがないというか。レヴューっぽい言い回しを使うと〈あらゆるジャンルを内包している〉みたいな」

tofubeats「確かに書かれがち(笑)」

SKY-HI「でも、本当にそういうニュアンスかというとそうでもなくて、それより単純に好きなんだろうなと。だから、森高千里さんや藤井隆さんと一緒にやってもイヤらしさがない。それってすごいことだと思うんです。〈やれたら超楽しいじゃん〉というのが、〈やれたらおいしいじゃん〉と結び付かない。いわゆるジュニア・ハイスクール・ステューデント的な感覚というか」

tofubeats「それは僕自身も一番気にしていますね。いっちょ噛みしてやろう感があったら、それってもう終わりじゃないですか」

――コラボが実現したあとも、2人で音楽の話をしたり交流を深める機会はあったんですか?

SKY-HI「僕のラジオ番組に出てもらったときに、オフエアでもいろいろと話しましたね」

tofubeats「そのときはヒップホップの話をしました。〈最近、何聴いてますか?〉みたいな感じで」

SKY-HI「あとはOL Killerlyrical school、tofubeats、SKY-HIの4組で一緒にライヴ(2014年の〈PINK SCREAM #3〉)をしたときに “Flesh Salad”で一緒に踊ったよね。アウトキャストみたいなことをやろうと思って(笑)。それに、トーフのリリース・パーティー(2014年の〈tofubeats “First Album” release party〉)にも出させてもらったし。そのときは中華料理を食べに行って」

tofubeats「そこでは、あまり音楽の話はしなかったんです」

――じゃあ、今日は久しぶりに2人で音楽の話をしていきましょう。ケイトラナダにちなんでR&Bやヒップホップ、ビート系だと、最近はどんな音楽を聴いていますか?

SKY-HI「今年はまず1月にアンダーソン・パックの『Malibu』、2月にBJ・ザ・シカゴ・キッド『In My Mind』があって……。そういうオーガニックな作品をよく聴いてます。そのアンダーソン・パックも参加している、ケイトラナダの作品もまさにそう。すごくオーガニックで、エレピ(エレクトリック・ピアノ)もローズじゃなくてウーリッツァーを使っている。バスドラもビットを歪ませているけど打ち込みで、〈そこは90sっぽく(人力に)しないんだ〉みたいな」

★アンダーソン・パック『Malibu』の紹介記事はこちら
★BJ・ザ・シカゴ・キッド『In My Mind』の紹介記事はこちら

アンダーソン・パック『Malibu』収録曲“Am I Wrong”
アンダーソン・パックが参加した『99.9%』収録曲“Glowed Up”

 

tofubeats「(ケイトラナダには)ちょっとピーキーな感じがありますよね」

SKY-HI「そうそう。あとはジャスティン・ティンバーレイクの新曲(“Can't Stop The Feeling!”)も良かった。逆にフューチャー(ベース/ハウス/ガラージなど)とかは、今年の春先以降はあまり聴いていないかな。電子音系でいいものがあったら改めて聴きたいんだけど、家を引っ越してからはオーガニック系が多い」

ジャスティン・ティンバーレイクの2016年の楽曲“Can't Stop The Feeling!”

 

――tofubeatsさんもそのあたりは聴いていますか?

tofubeats「もちろん、めちゃくちゃ聴いてます。その一方で、アノーニの『Hopelessness』や、エイサップ・ファーグの新作(『Always Strive And Prosper』)も好きでした。あと、ここ1か月はフランスのヒップホップをよく聴いていますね。最近のフランスは、チャートのトップ10がほとんどオートチューンのかかったヒップホップだったりして、アメリカよりもジャマイカンな雰囲気で〈ちょっとだけイマイチ。95点!〉みたいな(笑)」

――ハハハハ(笑)。

★アノーニのインタヴュー記事はこちら
★エイサップ・ファーグを紹介している〈tofubeatsの棚の端まで〉第39回はこちら

アノーニ『Hopelessness』収録曲“Drone Bomb Me”
フランスのヒップホップ・デュオ、PNLの全仏2位を記録した2015年作『Le Monde O Rien』収録曲“Le Monde O Rien”

 

tofubeats「そういう感じが好きでディグっているので、ケイトラナダの今回のアルバムは、初期にあったオタクっぽい感じが抜けたのは嬉しくもあり、ちょっと悲しくもありという感じで(笑)」

SKY-HI「まぁ、俺は今回のアルバムも十分オタクっぽいと思うよ(笑)」

tofubeats「あと僕は、曲数が多いところに既視感がある……」

――まるで、昔の自分を見ているようだと。

tofubeats「そうなんですよ。ファースト・アルバムであるが故に曲を詰め込んじゃう感じがもう(笑)」

※ケイトラナダ『99.9%』は全15曲(ボーナス・トラック除く)、tofubeatsの初フル・アルバム『lost decade』は全17曲、メジャー初作『First Album』(2014年)は全18曲収録

SKY-HI「トーフも住む場所が逆だったら、こういうアルバムを作っていたのかもね」 

ケイトラナダ

 

ケイトラナダは意識的に〈いなたくしたい〉と思っていそう(SKY-HI)

――そもそも、彼の音楽を知ったきっかけは?

SKY-HI「自分の場合は、(ケイトラナダが参加した)ジ・インターネットの『Ego Death』ですね。ケイトラダムス名義の作品も少しは聴いていたんですけど、あのアルバムのタイミングで〈めちゃくちゃいいな〉と思って」

※ケイトラナダが2010年のデビュー当初から名乗っていた名義。2012年に現在の名義となる。ちなみに、本名はルイ・ケビン・セレスティン

ケイトラナダがプロデュースしたジ・インターネット『Ego Death』収録曲“Girl”
ケイトラダムス名義での2010年のミックステープ『The Weather Report』

 

tofubeats「僕はジャネット・ジャクソン“If”のリミックス(2012年)※1ですね。あれが超クラブ・ヒットになったじゃないですか。しかも、そのあと同じシーケンスでエイメリーの“Why Don't We Fall In Love”を手掛けたり、同じようなリミックス/エディットを量産していて(笑)。個人的には、ああいう感じを〈バックビート・ハウス〉と呼んでいるんですよ。最近で言うとジャロウ・ヴァンダル※2とか、ああいうフューチャー・ハウス的な動きの先駆けというイメージでした」

※1 ケイトラナダは2012年頃からSoundCloudに非公式のリミックスを多数アップし続けて、それが広く注目を集めるきっかけとなった。詳しくはこちら
※2 LAの気鋭コレクティヴ、Soulectionなどで活躍するビートメイカー

――実際に、2012年頃のケイトラナダはウィークエンドを筆頭としたオルタナティヴなR&Bとも共振しつつ、そこにハウスの要素を加えてラジオ・ヒットを連発していました。

tofubeats「そうですよね。ハウスのBPMでトラップっぽい要素も感じさせる、みたいな]

――お2人がケイトラナダについて感じる一番の魅力というと?

tofubeats「やっぱり、ビートじゃないですか。4年間くらいずっと3連っぽいシャッフルの曲を作っていて〈そんなに好き?〉みたいな(笑)。そういう意味では、シグニチャー(特徴的)的ですよね。キックも〈コスッ〉って音が割れたピーキーなものを使っていて、そういう自分だけのテンプレがあるから、何をやってもいいところまでいく。クラブでも曲がかかった瞬間に〈あ、ケイトラナダだ〉とわかりますよね」

SKY-HI「確かに。あとは音を薄くしたい、音数を絞りたいという考えと同時に、意識的に〈いなたくしたい〉と思っていそうな部分もありますよね。ジ・インターネットの“Girl”も『99.9%』に比べたらオシャレな作品ではあるけど、例えば(同じオッド・フューチャー関連の)ドモ・ジェネシスあたりと比べたらちょっといなたい。そこにケイトラナダの〈これが自分の音だ〉という意思のようなものを感じるんですよね。今回のアルバムで、これだけ右に左に振りきれたゲストを呼べるのも、〈(バラバラな曲を寄せ集めた)コンピレーションみたいにはならない〉という自信があるからじゃないかな」

――ちなみに、『99.9%』で好きな曲は?

tofubeatsゴールドリンクが参加した“Together”とかいいですよね」

※Soulectionなどで活躍する93年生まれのラッパー。先鋭的なビートを乗りこなす独特のフロウが持ち味で、ケイトラナダと多くのコラボを重ねている

SKY-HI「俺は“One Too Many”かな。最初から温度感が低いわけではないけど、結局高いところまで行かずにずっと進んでいくのがクールだな、と」

――“One Too Many”にはフォンテが参加していますが、この『99.9%』には最先端の若手から一時代を築いたヴェテランまで、いろいろなアーティストが客演していますよね。

※人気ヒップホップ・トリオのリトル・ブラザーを経て、現在はフォーリン・エクスチェンジの一員としても活躍している78年生まれのラッパー

SKY-HI「クレイグ・デヴィッドが(“Got It Good”で)参加しているのは、トーフが『First Album』で森高(千里)さんを迎えたのに近い感覚じゃない?」

※90年代後半に2ステップUKガラージのシーンから台頭したイギリス屈指の人気ソウル・シンガー。2010年代は存在感が薄れていたが、ディスクロージャーなど後進の台頭やドレイクとのコラボ説など、最近は動きが活発

tofubeats「ああ、確かに。クレイグ・デヴィッドは最近のイイ仕事率も本当にすごいですよね。(昨年発表された)“When The Bassline Drops”も良かったなぁ」

森高千里が参加したtofubeats『First Album』収録曲“Don't Stop The Music”
クレイグ・デヴィッドとビッグ・ナースティの2015年のコラボ曲“When the Bassline Drops”

 

――2曲目の“Bus Ride”では、ジャズ・シーン屈指のドラマーにして、生前のJ・ディラとも交流を持ったビートメイカーでもあるカリーム・リギンスがドラムを叩いています。そういえば以前、mabanuaさんがSKY-HIさんに〈ロバート・グラスパールーツっぽい感じのビートを取り込んだ曲を作りたいんですよ〉〈J-Popとか意識しなくていいです〉と言われたと、Mikikiの記事で語っていましたよね。

SKY-HI「やっぱりそこは、mabanuaさんに(プロデュースを)お願いする時点でそういう気持ちでしたから」

★SKY-HIにまつわるエピソードも! mabanua × OMSBのJ・ディラ対談はこちら

mabanuaがプロデュースしたSKY-HIの2016年のシングル“クロノグラフ”

 

――なるほど。

SKY-HI「あと、ヴィック・メンサとの曲(“Drive Me Crazy”)も格好良いですよね。BPMは最近のヒップホップなんだけど、音色がケイトラナダでしかない(笑)」

tofubeats「何か(自分のなかで)キットみたいなものがあるんでしょうね。作風は変わってもサウンド・デザインは昔と変わってなくて、そこがすごくいい。でも、昔はもっとボディ・ミュージックっぽかったですよね。僕がBoiler Room史上トップ3に入るくらい好きなのがケイトラナダの回なんですよ。(途中で)ちょっとドン臭そうな女の子がずっとアピールしているところも含めて最高で(笑)。あのときにプレイしていたような曲は、今回のアルバムを通しても少ないじゃないですか。だからライヴ・ヴァージョンはまた別にあるのかな、と思ったりもします」

Boiler RoomでのDJセット。ケイトラナダが着ているのはカリーム・リギンス『Alone Together』(2012年)のジャケT

 

SKY-HI「そうだよね。もともと踊れるものが好きな人だもんね」

tofubeats「このアルバムで、ちょっとオーガニックなサウンドになったことにびっくりしたんですよ。〈こんな感じのイメージじゃなかったよな〉と思いながら聴いていて。そういう意味で、このアルバムでは録音物としての体裁を100%に持っていこうとしているなと」

――全体の流れも繋がっていて、よく考えられていますよね。

tofubeats「曲間がゼロなんですよね。iTunesでCDを取り込むと、(プレイリストの)〈最近追加した曲〉の欄では曲順が逆で再生されるじゃないですか。僕は最初、このアルバムを逆から聴いていたのに全然気付かなくて(笑)。だから、〈家で聴いてください〉と言わんばかりのリスニング・アルバムになっている。あと、この人の曲はイントロとアウトロがなくて、ミックスをさせてくれないんですよ。“If”のリミックスもクラブ・バンガーなのにフェイドインで入るという(笑)。いまの時代、ハウスにイントロを付けないのは意思があってのことだと思うので、この人はポップスにしたいんだろうなと」

SKY-HI「あとは、客演陣の仕事量にばらつきががありますよね。アルバムの全体像を考えて、どれくらい意識的にそうしたのかはわからないですけど」

tofubeats「そのあたりは録るだけ録って、いらないものは間引いてるのかもしれないですね。もともとエディットの人なので、そのあたりは躊躇がなさそう」

SKY-HI「作りはじめたときと(完成時で)全然トラックが違う、というものもありそうだよね。それこそヴィック・メンサとの曲は絶対にそうだと思うし。逆に“Together”や“One Two Many”は、最初から曲を作ろうとしている感じがあるというか」

tofubeats「僕は“Breakdance Lesson N.1”も好きです。この曲はエディットっぽいから好きなのかな」

SKY-HI「どういう考えでこの曲名にしたのかが気になる。ここでの“Lesson”は自分がしているの? されてるの?」

tofubeats「自分が練習をしてるイメージってことじゃないですか? やっぱり、そこも(オタク的で)惜しい感じがある(笑)」

SKY-HI「そもそも作品を〈100%〉にしようと思ったら、こんなタイトルの曲は普通入れないよね(笑)」

――ちなみに『99.9%』というタイトルには、ケイトラナダがゲイであることも関係しているみたいですよ。もともと〈自分は完全な人間じゃない〉というコンプレックスを抱えていたんですけど、最近になって〈セクシャリティーをきちんとオープンにしよう〉と親に打ち明けたらしくて。それで〈100%ハッピーな状態に近付いている〉という意味も含まれているそうです。

tofubeats「あー、いい話じゃないですか。じゃあ、このアルバムを出すことによって〈100%になるんだ〉という思いが込められているのかもしれない」

SKY-HI「それを聞くと、次にどんな作品を出すのかも気になる」

田舎で聴いても良く聴こえるアルバムはいい(tofubeats)

――『99.9%』と並べて聴きたい他の作品を挙げるとしたら?

tofubeats「やっぱりゴールドリンクとかじゃないですかね」

SKY-HI「俺、最近のゴールドリンク仕事ですごく好きな曲があるんですよ。アンダーソン・パックと一緒にやっている“Unique”」

tofubeats「あっ、僕も今朝(取材日の朝)買いました。この曲には同時代性を感じますね。アンダーソン・パック本人の作品だと、一緒に並べるにはちょっと綺麗すぎると思うので。あとは、“I’m In Control”以降の、なぜかソカ系統になっているアルーナジョージとか」

アンダーソン・パックが参加したゴールドリンクの2015年作『And After That, We Didn't Talk』収録曲“Unique”
アルーナジョージの2016年の楽曲“I'm In Control”

 

――2人はトラックメイカーとラッパーとして共作をしていますが、そのときのコラボと『99.9%』でのコラボを比べて、何か感じることはありますか?

tofubeats「スタジオに入っているかいないかの違いだけで、あまり変わらないんじゃないですかね。あとは……全体としてわりとサクッと作った曲が多いような印象を受けます」

SKY-HI「〈こういうトラックにラップや歌を乗せてよ〉という作業をスタジオでやったあとに、家に帰って一人で作ってるみたいなね」

tofubeats「そもそもこのアルバムって、どれか一つ飛び抜けたコラボがないところが逆にいいところだと思うんです。抑えるところは抑えるようにしてるんじゃないかな」

SKY-HI「シングル曲が立ちすぎていたら、アルバムとしての評価は変わっていたかもしれない。それだとヴィック・メンサの曲も、ただ地味なだけの曲だと思われていたような気がする」

ヴィック・メンサが参加した『99.9%』収録曲“Drive Me Crazy”

 

――ちなみに、2人がコラボしたときはどんな制作風景だったんですか?

SKY-HI「“Flesh Salad”のときは、送られてきたトラックを聴いた時点で(tofubeatsが)意図するものを感じましたね。嘲笑みたいな雰囲気がほしいんだなと思って。あとは、トーフが曲を提供したりリミックスを作ったりするとき、相手の写真を横に置いて作業しているという話を聞いていて、俺のときもそうだったらしいので〈気持ちが悪いな〉と(笑)」

――ハハハハ(笑)!

tofubeats「いやいや、どんな人と仕事するときも同じということですよ(笑)。僕が(相手の写真が載っている)雑誌を横に置いたりしながら作業するのは、雑に仕事をしないためなので。あと、コラボには大喜利的な意味合いがあるので、日高さんとのときもテンポが変わるところを作って、〈やりにくいだろうな〉と思われそうなことをあえて投げてみました。僕が担当した(SKY-HIの)“愛ブルーム”のリミックスも、最初はヴォーカルを全抜きしたものを送りましたしね」

SKY-HI「そうそう(笑)」

 

tofubeatsPUNPEEさんと作業したときにも〈1デシベルだけ下げときました〉とメールが来て、実際に聴いてみたら(トラックが)半分くらい変わってる、みたいなことがあって。僕はそういう人のほうが好きなんです。トラックダウンを頼んだはずなのに、返ってきたら音がすごく増えていたりとか。それで、“愛ブルーム”のリミックスも最初はヴォーカルもなくてキーも高いものを“声入ってます”と送ってみたら、〈流石にこれは……〉と言われて(笑)」

SKY-HI「ライヴで使いたかったので、〈流石にこれはできねえな〉と思ったんですよ。そうしたら、すぐに声の入ったヴァージョンが届きました。逆にトーフの場合はNGが全然なくて、送られてきたトラックに対して自分がどんなことを返してもどんどん通るというか。すごいプロデューサーだと思いましたね」

tofubeats「僕は基本的にNGを出したくないんです。一緒にやるからにはその人の個性を出してほしいと思っているので」

――ケイトラナダに話を戻すと、『99.9%』をまだ聴いたことのない人に薦めるとしたら、どんな言葉を使いますか?

tofubeats「聴きやすい(笑)」

SKY-HI「あとは、〈きっと思ってるよりいいよ〉とか(笑)。まだ聴いてない人のなかにはクラブ・ミュージックにそれほど詳しくない人が多いかもしれないし、そもそもケイトラナダがこの作品を届けたいと思っているのも、ダンス・ミュージック・ラヴァーというより……」

tofubeats「(広い意味で)音楽ファンって感じですもんね」

SKY-HI「そうそう。だからジャンルなんてわからなくても楽しめる作品だと思うし、普通に作曲能力の高い人だよって。このあと、女の子のヴォーカルだけを迎えた10曲くらいの全編歌ものアルバムも作りそうな感じ」

tofubeats「あと、『99.9%』は思想的なものが入っていないライトな感じがする点で、最近リリースされたなかでもいいアルバムだと思いますね。例えば、アノーニの作品もかなり好きですけど、あれは真正面から聴くと精神がヤラれちゃうじゃないですか。でも『99.9%』には〈車のダッシュボードに入れておくのにいい〉という種類の良さがある」

SKY-HIビヨンセケンドリック・ラマーのように、いまアメリカで評価されている音楽は精神性が強いものが多い傾向にあると思うけど、それとは違うタイプの作品だよね」

――どんなシチュエーションで、このアルバムを聴いていました?

SKY-HI「最近、風呂にスピーカーを入れたのでそれで聴いてみたんですけど、それもすごく良かったですよ。ナチュラル・リヴァーブが掛かって、めちゃくちゃ音が良くて」

tofubeats「いいなぁ。僕は神戸で車のなかで聴いてましたね。そのままホームセンターとかに行く、みたいな。自分のなかで〈田舎で聴いても良く聴こえるアルバムはいい〉という基準があって。都会で聴いているときは最高だけど、神戸に帰って聴いたら〈あれ?〉みたいなものは結構あって。でも、都会で聴いても、田舎の景色を見ながら聴いてもいいアルバムは大丈夫」

SKY-HI「ああ、なるほど。俺も田舎で聴きたいな」

――つまり、いろんな人が聴いても魅力が感じられる、開かれたアルバムでもあるということですよね。最後に2人の今後の予定について教えてください。

SKY-HI「俺は7月にシングル“ナナイロホリデー”を出して、そのあとはツアーを回ります。それにいまは曲を作るのが楽しくていろいろ作っているので、すでに情報が出ているもの以外も含めて、今年から来年の頭くらいまでは活発な感じでいけるんじゃないかと思います。(tofubeatsを見て)ツアーでは神戸にも行きますよ」

tofubeats「じゃあ、神戸牛を持っていきます(笑)」

SKY-HI「SKY-HIとして、例えばback numberSEKAI NO OWARIのような人たちと同じ舞台で勝負を仕掛けたい気持ちがありますし、自信も持っています。でもそれと同様に、地方で活動している(無名な)バンドやアーティストと自分が一緒なんだという意識もあって。だからラッパーとしてだけでなく一人のミュージシャンとして、各地のいろんな人たちと一緒にやりたいし、一緒に戦いたい。そういうツアーを回ろうと思って、いまは情報を集めているところですね。〈意識解放区〉に飛び込んでいる感じというか」

SKY-HIの2016年作『カタルシス』収録曲“Ms. Liberty”

 

tofubeats「僕は『クラシカロイド』の仕事が決まったのと共に、新曲も作って現場で降ろしている状態で。それに、今年はライヴと並行してDJもがんばりたいです。普通にハウスとかのDJをして地力をつけたい。他にも、去年会社を作って少し利益が出たので、自分の作品ではないヴァイナルを出すレーベルを始めようと思っていますね。自分の次のアルバムも目下制作中です」

※「おそ松さん」「銀魂」を手掛けた藤田陽一監督による2016年秋に放送予定のアニメ

SKY-HI「あと、もがちゃん(最上もがでんぱ組.inc)にラップをさせたりとかね。もがちゃんとは仲が良いから、実はこっちにも連絡が来たんですよ」

――〈PlayStation4〉の新作ソフト紹介動画ですね。

tofubeats「もしかして、〈ラップを教えてください〉みたいなやつですか? 裏でそんなことが! 最上さんとは結局一回も会わずに仕事を終えたので、〈tofubeatsが『ありがとう』と言っていた〉とお伝えください(笑)」

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