今だから音にのせたい言葉

 未知なる音を追い求めながら駆けていく3人のあとをついていくと、2016年のLITTLE CREATURESに出会えた。デビュー25周年を迎えた彼らの新作の名は『未知のアルバム』。思えば未知なるリズムや言葉の響き、未知なる景色を追い求め続けてきたのがバンドの歴史であり、きっと集大成的作品になっているのだろうと思いきや、残念ながら空振り。どうにも言葉にしがたい不可思議な顔立ちをしたロックが勢い良く飛んでくるではないか。青柳拓次が語る。

LITTLE CREATURES 未知のアルバム CHORDIARY(2016)

 「レコーディングは悩むのを禁止にしてザクザク録っていった。テーマは、3つの音を重ねて超シンプルに、ソリッドにいこうってこと」

 昨日よりも鋭く太く。それを合言葉に彼らはエモーションに突き動かされるように音を紡ぐ。そうやって生み出された音楽がやせ細ったものになるはずがない。

 「実はデモの段階ではもっと現代的で奇妙な音楽だったのね。でもスタジオでヴィンテージ機材を使ってみたら圧倒的にそっちが良くって。結局音楽性が楽器に引っ張られるようにしてこういう形になった。ほぼ全曲すごく弾きにくい昔のグレッチを使ったんだ。で、いまのギターと持ち替えてやってみると、単純なリフの説得力が変わってきちゃうんだよね。より単純にすればするほどエモーションが高まっておもしろかった」

 ここでの刺すように鋭い青柳のギターは掛け値なしに素晴らしい。太線でグワッと書くようにザックリとした感じをめざしたというが、それはバンドとして初めて臨むこととなる日本語歌詞にも当てはまる。

 「いまならいけるかなという直感が働いたんだ。最近は文章を書くときも上手く言いたい、とか、誰もやったことのない書き方をしたい、とかいう考えがボンとなくなっちゃって。それよりもっとシンプルな表現に魅力を感じるようになって。普通で思いのこもったシンプルな言葉こそよりパワフルだと気づいたんだよ」

 けっしてツイストしたりせずただただ真っ直ぐズバッと聴き手に向かって放り込む。音の切れ味は下手すると過去最高値を示しているかも。ひょっとすると持久力は落ちているかも知れないけど、懐の大きさならそんじょそこらのバンドには負けはしないという自負が浮かぶアンサンブルも素晴らしい。控えめだけど骨太な3人の佇まい。なんだろう、このイイ感じ。

 「理屈で作ってないから、今回は表面的な部分で受け取られるのと深層の部分で受け取られるのと反応にかなり幅があるかもしれない。でも聴き手のモヤっとしたよくわからない感情に触れられたら嬉しい」

 5年ぶりに届いた新作。下手すると次は30周年のときかも。そうしたら彼らは50代か。それはおもしろい。

 


LIVE INFORMATION

LIVE INFORMATION Unknown Tour 2016
○9/22(木・祝)18:00開演 会場:東京・グローブ座
○9/30(金)19:30開演 会場:名古屋・TOKUZO
○10/1(土)18:00開演 会場:京都・磔磔
○10/2(日)18:00開演 会場:大坂・NOON+CAFE

FUJI ROCK FESTIVAL ‘16出演決定!
○7/22(金)FIELD OF HEAVEN
www.littlecreatures.jp