本国タイでの絶大な支持をステップに、この夏、日本へ……そして世界へ!!

 結成から16年、バンコクを拠点にいま世界へ大きく羽ばたこうとしているバンドがいる。それが本稿の主役、スロット・マシーンだ。彼らは過去にタイ国内で5枚のアルバムと1枚のベスト盤をリリースし、2014年にはアルバム・デビュー10周年を記念した野外ライヴで15,000人を動員。こうした地元での人気を足掛かりに本格的な世界進出へ乗り出したわけだが、その一環として今夏〈フジロック〉に参戦する。日本ではまだ正式なデビュー前にもかかわらず(噂によるとメジャー間で争奪戦が繰り広げられているとか)、わが国を代表する巨大フェスへ出演が決まったことからも、この4人がいかに注目されているか窺えよう。

「日本の国際的な音楽フェスで演奏するのは初めてだし、新しいアルバムもリリースしたばかり。新曲を披露するためにいろいろ準備しているよ。〈フジロック〉にタイのバンドが出演するのは初めてらしいね。それが俺たちであることをとても誇りに思う。もちろん新曲だけじゃなく、スロット・マシーンの代表曲となっているタイ語のナンバーも演奏する予定だ」(フォエット、ヴォーカル)。

SLOT MACHINE Spin The World Bec-Tero(2016)

 今回リリースされた6枚目のアルバム『Spin The World』は初めて全編英詞で歌った意欲作だ。プロデューサーにはU2ローリング・ストーンズキラーズらを手掛けてきたスティーヴ・リリーホワイトを迎えている。「バンドの勢いをよく伝えていると思う。世界中に聴かせたいと思った音が、この曲にはすべて詰まっているんだ」とドラマーのオートも仕上がりに満足気な“Give It All To You”ほか、ここにはファンキーなポップ・ロックがギッシリ。「酔っ払った若者がパーティーで盛り上がっているイメージ」(フォエット)という“Girl! Do It Again”や、剥き出しのダイナミックなアンサンブルがカッコ良い“MTR”といったアップテンポな楽曲群が、苗場のオーディエンスを汗だくになるまで踊らせてくれるに違いない。

 もっとも、「さまざまなスタイルやムードの曲がアルバムには収録されているよ」とフォエットが強調する通り、彼らは『Spin The World』でたくさんの引き出しを開けている。その好例が、ベーシストのガクいわく「レゲエとタイの民族音楽とワールド・ミュージックとスロット・マシーンのコンビネーション」を狙った“The Land Of Himmaphan”、ファルセット・ヴォイスで涙を誘うバラード“Sweet Bird”あたりだろう。

 スロット・マシーンが80年代のUKニューウェイヴから影響を受けていることはあきらか。例えばボーイ・ジョージのように世界中の音要素を採り入れながら、ギターやキーボードでしっかり板に付いたオリエンタルな旋律を紡いでいく……。そこに彼らの強烈な個性を感じる。

 最後に〈フジロック〉で楽しみにしていることを訊いてみると、「間違いなくレッド・ホット・チリ・ペッパーズのステージ! 彼らはレジェンドだよ! ガクはダンス・ミュージックを楽しみたいと言っていて、なかでもフライト・ファシリティーズは絶対にチェックするべきだってさ。オートはSPECIAL OTHERSを観たがっているね。彼はSPECIAL OTHERSの大ファンで、特にアジア各地のスタイルをいろいろ合わせたようなメロディーに心酔しているんだ」(フォエット)と屈託のないコメントが戻ってきた。何だか親近感が湧くな~。