COLUMN

細野晴臣 「HOSONO百景」

「ここではないどこか」から聴こえてくる音楽

 2000年にブリティッシュカウンシルの招きで、英国の音楽家・評論家デイヴィッド・トゥープが来日し、当時翻訳が進められていた彼の著書『EXOTICA』の朗読と細野晴臣との対談が行なわれた。印象的だったのは、年齢こそ近しいが、生まれも育ちも異なる環境にあったふたりが、しばしば冗談のように口にしていたのが、「ふたり(の趣味趣向)は似ている」「他人とは思えない」ということだった。

 対談は、ピーター・バラカンという最適な司会者を得て、いわゆる「エキゾティック・ミュージック」をきっかけに進んだが、そこからアンビエントへと話が展開していく中に、映画からの影響、異国への憧憬といったものがさまざまに影響していることが話された。

細野晴臣,中矢俊一郎 HOSONO百景 河出書房新社(2014)

 この本を読みながら、15年近く前の会場の様子、座っていた座席の感じまでが、なぜか思い出された。偶然隣に座ったのは朗読されたテキストの抄訳をした大里俊晴だったこととか。

 イーノのエキゾティック・ミュージック作品『テイキング・タイガー・マウンテン』には夢から着想された曲がある。見知らぬ国の見知らぬ音楽が、既知の音楽との混交された状態で夢に現れる。エキゾティカ、アンビエントというのはそういうことなんだろう、と思う。あえて脈絡をはずしてしまうような、ある意味イカサマっぽい捏造音楽は、SFのような光景でもある。

【参考動画】ブライアン・イーノの74年作『TAKING TIGER MOUNTAIN』収録曲 “Taking Tiger Mountain”

 

 もともとは、旅行雑誌に連載されたディスクガイドであったという本書は、まさに音によって近所から自身の住む東京という都市、そこからヨーロッパへ、あこがれの都市へ、さらには宇宙、見果てぬ理想郷へと細野の案内で音の旅をする。細野の音楽制作の原泉とは、異質なもの、未知のものへの飽くなき関心なのだということがよくわかる。音楽とは「ここではないどこか」への憧れであり、つねに「ここではないどこか」から聴こえてくるものであり、それは自分を世界の外側に置くことで聴こえてくるのかもしれない。

 


 

LIVE INFORMATION

『TOKYU MUSIC LIVE 2014  矢野顕子プロデュース/ポップスのおいしい作り方』
○6/4(水)、5日(木) 18:00開場  19:00開演
出演:矢野顕子/細野晴臣(TINPAN林立夫(TINPAN)/
           鈴木茂(TINPAN)/大貫妙子清水ミチコ岸田繁くるり
会場:Bunkamuraオーチャードホール
www.jtokyugroup.jp/action/musiclive/

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