無二の退廃美を湛えた逸品を、ポスト・ロック~エレクトロニカ界の才人らがリミックス

 壮麗な電子オーケストラと無機質なビート/ノイズ、消え入りそうに儚い歌声で無二の退廃美を築く男女デュオ、matryoshka。その活動10周年を記念し、彼らの2012年作『Laideronnette』を丸ごとリミックスしたアルバム『pseudepigrapha』がリリースされた。

matryoshka pseudepigrapha Virgin Babylon(2016)

 透明感を湛えたこのポスト・クラシカル作品を改編すべく集結したのは、青木裕downy)、mosimossAnoice、一般公募で登板したCandlegravityらエレクトロニカやポスト・ロック界の才人たち。生ドラムの乱打が静から動へと加速をスリリングに増幅するworld's end girlfriend、ビートを強調することでアンビエントな浮遊感を際立たせたウルリッヒ・シュナウス、ヴォーカル・エディットなどを交えて躍動的なエレポップと化したGo-qualia、暴力的なビートが跋扈するarai tasuku、クールな変則テクノに変換したmergrim……と、どれも素晴らしい出来だ。荘厳なエンディングを演出するセルフ・リミックス曲はもちろんのこと、ユニットの特性と言えるであろう幽玄なロマンティシズムを別角度から楽しめる一枚となっている。