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SWV、ミュージック・ソウルチャイルド、ラリー・グラハム&グラハム・セントラル・ステーションが登場! 〈Billboard JAPAN Party〉の観どころを解説

SWV、ミュージック・ソウルチャイルド、ラリー・グラハム&グラハム・セントラル・ステーションが登場! 〈Billboard JAPAN Party〉の観どころを解説

2014年はデ・ラ・ソウルピート・ロック&CLスムースファーサイドという90年代からヒップホップ・シーンの歴史を刻んできた面々が登場、昨年はザップタキシード、帝王ジェイムズ・ブラウンを支えてきたミュージシャンによるオリジナル・ジェイムズ・ブラウン・バンドといった新旧ファンクの顔役が揃い――過去2回に渡ってBillboard JAPANがプロデュース&〈SUMMER SONIC〉とのコラボレーションで行われた〈Billboard JAPAN Party〉が今年も開催! 8月21日(日)に〈サマソニ〉東京会場の〈BEACH STAGE〉でのライヴに加え、〈SUMMER SONC EXTRA〉として東京&大阪のBillboard-LIVEにて単独公演が行われる。

夏の風物詩として確立しつつある同パーティーに今回出演するのは、ミュージック・ソウルチャイルドSWVラリー・グラハム&グラハム・セントラル・ステーションの3組! ミュージック・ソウルチャイルドとSWVは今年リリースされた最新作を引っ提げての待望の来日、そしてラリー・グラハムはなんと齢70(開催時)にして現役バリバリな熟練のステージで魅せてくれるはずだ。ここでは、そんな3組それぞれの音楽の魅力やライヴの観どころを、bounce連載〈IN THE SHADOW OF SOUL:ソウル・ミュージックの光と影〉などでもお馴染みの音楽ライター、林剛氏に解説してもらった。

 

SWV

シェリル“ココ”ギャンブルタマラ“タージ”ジョンソンリアン“リリー”ライアンズから成る、90年代のR&Bシーンを代表するガールズ・グループ。92年に『It's About Time』でデビューし、300万枚を超えるセールスを記録。“Weak”(92年)や“Right Here (Human Nature Remix)”(93年)、“You're The One”(96年)といったヒットを飛ばしつつ、計3枚のアルバムを残して98年に解散。その後、個々で活動をしていたが2005年に再結成。ライヴを精力的にこなし、来日公演もたびたび行われた。2012年にはマス・アピールと契約して復活後初のアルバム『I Missed Us』を発表、グラミー賞にもノミネートされる。そして今年2月に通算5作目となる最新作『Still』をリリース。

SWV Still Mass Appeal/eOne/ビクター(2016)

 

「SWVはTLCとかと並んで90年代に登場したガールズ・グループで、 R&Bファンの間では非常に人気の高い人たちですが、98年に一度解散をしています。メンバーもそれぞれ別の道を歩みはじめて、もう復活はないかなと思われていたところに、2000年代に再結成というか再会をしました。それからはライヴ活動をしたりしつつ、しばらく新作はリリースされていなくて、2012年に復活後初の『I Missed Us』を発表しています。それが、解散してから、その後の17年間が何もなかったかのようにそのまま(の音)だった。レフト・アイを失ったTLCがもう以前と同じライヴをできなかったり、アン・ヴォーグが分裂してしまったいま、彼女たちの〈変わらなさ〉は凄いし、貴重ですよ。ハーモニーが聴けるっていう意味でも」

92年作『It's About Time』収録曲“Weak”
 
96年作『New Beginning』収録曲“You're The One”
 

――90年代の匂いが閉じ込められているわけですね。

「そうなんです。中心メンバーのココがゴスペル・シーンで活躍し続けてきたことも大きかったと思うんですよね。再結成して『I Missed Us』をリリースする前には来日公演もやっていて、その頃のライヴを観ても、やっぱりSWVはSWVだなと。90年代からあった甘酸っぱくてキュートな感じと、ゴスペル上がりらしいゴリゴリした感じも併せ持っている。それに復活後の楽曲を90年代の曲と交えて歌ってもまったく違和感がない。かといって懐古趣味になっているかと言うと、そうではないんですよね。取り立てて新しいことをやっているわけではないんですけど、2010年代にも聴ける。逆に言えば彼女たちのようなグループを迎え入れる土壌がもう一度形成されたということでもあると思うんですけど」

ココの2009年作『The Winner In Me』収録曲“The Winner In Me”
 
2012年作『I Missed Us』収録曲“Co-Sign”
 

――オーセンティックな個性を活かしつつモダンということですよね。

「そうですね、ほんとに。だから、90年代のSWVを知らない人もすんなりと入りっていけると思いますよ。いまはガールズ・グループって復活の兆しが少しありますけど、R&Bの世界では存在自体が少ないので、彼女たちのハーモニーを新鮮に感じる人もいるかもしれませんね。まあ2010年代も後半になって、SWVを〈ガールズ・グループ〉と呼ぶのもアレですが(笑)、でも本当にあの頃のままのパフォーマンスをしてくれるし、今年リリースされた最新作『Still』もそうですが、懐かしい部分もありつつ、2010年代のメインストリームでもあって、上手くやってると思います」

2016年作『Still』収録曲“Ain't No Man”
 

――SWVのライヴは結構ご覧になってるんですか?

「ライヴは初来日以来、ほぼ毎回観てます。ゴスペルのプロデューサー/ドラマーで、ココの旦那さん=マイケル・クレモンズがバンマスを務めていて、バンドもゴスペル・シーンにいる人たちなので非常に演奏が上手いというか、生で良い音を出すんですよ。また、ココがリード・シンガーではあるんですが、リリーとタージも歌うパートが増えてきて、ライヴでの存在感も増している。ライヴはアルバム同様、イメージとしてはほとんど変わらないですね。そういえば、『Still』の日本盤に収録されたボーナス・トラックにはライヴ音源が入っていて、それも彼女たちが20代の頃に歌っていた感じとほぼ変わりない。それが普通に素晴らしいなと。20年前のイメージをキープしたままライヴ・パフォーマンスをできるシンガーって本当に少ないから。そう思うと驚異的ですね。R&Bの90年組は本当に歌力があったんだなと。あと、ライヴでは自身の楽曲に加えてカヴァーも歌います。アルバムにも入ってますが、パティ・ラベルの“If Only You Knew”やスウィッチの“They’ll Never Be”とかは、Billboardでライヴをやった時も歌ってくれましたね。彼女たちの曲は、それこそマイケル・ジャクソンの“Human Nature”を引用した“Right Here”のリミックスに代表されるようにソウルねたの曲も多くて、最近は歌詞でR&B名曲のフレーズを引用していたり、オマージュっぽいことをやっていたりするので、そこからオリジナルの曲に繋げて歌ったりすることも期待できますね。まあ、聴きどころ、観どころはいくらでもあります」

“Right Here (Human Nature Remix)”

 

MUSIQ SOULCHILD

2000年にデフ・ジャム傘下のデフ・ソウルからアルバム『Aijuswanaseing』でデビューした、フィラデルフィア出身のR&Bシンガー。ジル・スコットらと並ぶ新世代フィリー・ソウルの旗手として注目を集める。USビルボード・チャート1位を獲得した2002年の2作目『Juslisen』以降は名義を〈ミュージック〉に改め、グラミー賞にも数度ノミネート。2007年作『Luvanmusiq』以降はミュージック・ソウルチャイルドへ名前を戻してコンスタントに作品を発表し、シリーナ・ジョンソンとのコラボ・アルバム『9ine』(2013年)や別名義での音源リリースを経て、今年4月に5年ぶりとなるオリジナル・アルバム『Life On Earth』を発表した。

MUSIQ SOULCHILD Life On Earth My Block/eOne/ビクター(2016)

「もともとミュージック・ソウルチャイルドは、〈ネオ・フィリー〉と僕らが勝手に呼んでいた、2000年代前半にフィラデルフィアで生まれたムーヴメントの第1世代としてジル・スコットらと同じ頃にデビューして、ディアンジェロ以降のネオ・ソウルみたいな音楽を、フィラデルフィアをベースにしてやっていたんです。日本では〈フィリー・ソウルの申し子〉みたいな言われ方をしていて、実際に初期の頃はいわゆるフィリーらしい、ジャジーなテイストの楽曲をやっていましたが、本人はヒップホップがすごく好きな人で、かつてはフィラデルフィアのサウス・ストリートという現地の若者が集まる通りで、フリースタイルでラップしていた。ヒップホップ世代のソウル・シンガーなんです。だからインタヴューでも、昔のソウルをよく知らないから聴いてみようかな……と語っていたくらい、いわゆるフィリー・ソウルに対する造詣とかも当初はそこまで深くなかった。だからなのか、2作目『Juslisen』(2002年)、3作目『Soulstar』(2003年)では〈ソウルチャイルド〉を外した〈ミュージック〉名義でリリースしていました。〈ソウル・ミュージックの申し子だ〉と言われてるけど、本人は実際ちゃんとソウルを聴いてきてなかったから、〈ソウルチャイルド〉を名乗る資格はないし、荷が重いと思ったみたいな感じだったと思います(笑)」

2000年作『Aijuswanaseing』収録曲“Just Friends (Sunny)”
 
2003年作『Soulstar』収録曲“Forthenight”
 

――なるほど(笑)。そして4作目以降にソウルチャイルドが復活するわけですね。

「初作の『Aijuswanaseing』から3作はデフ・ソウルからリリースしていたんですが、その後アトランティックに移った時にミュージック・ソウルチャイルドという名前を復活させて。その時にプロデュースしたのがウォーリン・キャンベルだったんです(2007年の4作目『Luvanmusiq』)。まだ無名だった頃のBJ・ザ・シカゴ・キッドBJスレッジ名義で曲を書いていたりもするアルバムですが、そのアルバムくらいまではフィラデルフィア的なサウンドで、70年代ソウルやジャズを好きな人がすんなりと入っていきやすいソウル・ミュージックという感じだったんですが、周囲から〈フィラデルフィア〉とか〈ネオ・ソウル〉というふうに括られることが多くなって、それが直接の原因ではないと思いますが、アトランタに移住してしまうんですよね。それからサウス・ヒップホップの音を採り入れたりするようになって、ちょっと方向転換します」

2007年作『Luvanmusiq』収録曲“B.u.u.d.y.”
 

――今年4月にリリースされた5年ぶりのオリジナル・アルバム『Life On Earth』では、ウォーリン・キャンベルが『On My Radio』以来となるプロデュースを手掛けていますね(ミュージック・ソウルチャイルドとの共同プロデュース)。この作品の評判がまたとても良くて。

「そうですね。2013年にウォーリン・キャンベル主宰のレーベル=マイ・ブロックと契約していたんですが、その頃に別のレーベル(シャナキー)でシリーナ・ジョンソンとレゲエ・アルバム(2013年作『9INE』)を作ったり、その後に覆面ラッパー的なハッスルやオルタナティヴなソウルをやるパープル・ワンダーラヴという名義で作品をリリースしていたり――作品の良し悪しとは別に、ちょっと迷走しているのかなという印象でした。ミュージック・ソウルチャイルドという名前のアーティストは、もうどっかに散ってしまったのかなというくらいに思っていたんです。でも今回、久々にミュージック・ソウルチャイルドとしてウォーリンのレーベルから新作を出したら、これが素晴らしい内容で」

『9ine』収録曲“Feel The Fire”
 

――このアルバムの林さん的な聴きどころは?

「新作の話も含めたミュージックのキャリアについては、Billboard JAPANさんのサイトでオフィシャル記事を書かせてもらったので、そちらもお読みいただけると嬉しいのですが、今回は彼のリスナー/パフォーマーとしての音楽体験がストレートに反映されているんだろうなと思いました。ア・トライブ・コールド・クエストの“Jazz(We've Got)”と思われるトラックを引用した曲があったり、以前から言われているスティーヴィー・ワンダーの影響が濃いものや、エリック・ベネイが歌うAORというかアース・ウィンド&ファイアっぽい曲もある。あと、いまヒップホップでもR&Bでもジャズでも西海岸に勢いがありますよね。ウォーリン・キャンベルもその西海岸の人ということもあるからか、ケンドリック・ラマーアンダーソン・パックなんかと絡んでいたラプソディをフィーチャーしていたりします。ミュージック本人かウォーリンなのかわかりませんが、そういう動きも少なからず意識しているんじゃないかなと思いましたね」

2016年作『Life On Earth』収録曲“I Do”
 

――より旬の音を意識したような。

「ええ。客演仕事なんかを見ていても思うんですが、例えば、ウォーリン・キャンベルが手掛けているダマーニというラッパーの近作『Thoughtful King』では、ロバート・グラスパーが参加した“Now That's Love”という曲のフックで、ミュージックがデバージの“Love Me In A Special Way”を歌っているんですよね。ほかにもミュージックは、ロバート・グラスパー・エクスペリメントの『Black Radio』(2012年)や、テラス・マーティンの『3ChordFold』(2013年)へも参加していました。まあそんな感じで、ここ数年わりと話題になっている作品に顔を出しているんですよ。その起用のされ方は、ある意味、同じフィラデルフィア出身のビラルにも似てますよね。ただ、そのわりにミュージックのアルバムはR&Bリスナー以外から絶賛されることが少なくて、そこがちょっと惜しい気もします。正統派すぎるのかな? だから、今回は最新作を携えて来日するわけですから、この機会に彼のストリートな部分と言ったらアレですが、もうちょっと尖った部分にも触れてみてほしいですね。ラップするように歌う、ラップ・シンギングと言われる歌い方は、ディアンジェロの系譜にあるものなんですよ」

ダマーニの2014年作『Thoughtful King』収録曲“Now That's Love”
 

――なるほど。では、今回のライヴの観どころはどのあたりでしょうか?

「バンドがどういった編成で来るのかにもよると思うんですが、最新作がウォーリンと組んでいることもあって、アトランティックでの1作目の感じに戻っている から、その頃のライヴに近いムードになるんじゃないかなと。あくまで予想ですけどね。ミュージックはデビューの頃から、しょっちゅうではないけど、わりと来日していて、特に初期の頃はフィラデルフィアの空気をそのまま運んできたようにメロウな感じで、グルーヴも最高だった。演奏陣も、当時ルーツジェイムズ・ポイザーの二番手、三番手でやっていたような人たちで、めちゃくちゃスキルが高かったですね。その後には女性メンバーで揃えたバック・バンドで来日したこともありましたよね。ただ、アトランタに移住して以降のライヴは、初期の頃に比べるとテンションが落ちて きた感じも正直あったり……でも、グラスパーなどと絡むようになって以降は初期の感覚が戻ってきてる感じで、今回のアルバムには昔のフィリーといまの西海岸の良い部分が出ている。だから相当期待できると思うんですよね。ジャズやヒップホップの要素も強く出してくる人なので、改めてそういう部分にも注目したいです」

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