福島県は猪苗代湖畔で行われるカルチャー・ミックス・フェスティヴァル〈オハラ☆ブレイク'16夏〉が今週末の7月30日(土)から9日間に渡って開催される。福島のちょうど中央に位置する猪苗代湖畔の大自然のなかで、究極にスロウな空間作りをめざした同フェスは、昨年に続いて今回が2回目。音楽のみならず映画や演劇、アートといったさまざまな文化に出会える催しとなっている。

何しろ9日間の開催で、ミュージシャンから小説家まで、参加するアーティストも数多くいることもあり、まだ行ったことがない人には〈それでどんなフェスなの?〉というのが正直なところだろう。ということで、ここでは開催目前スペシャルとして、〈オハラ☆ブレイク〉とは一体どういうフェスなのか、ほかとは違う何が待ち受けているのかを紹介したい。地元の人はふらりと、また遠方の人はちょっとした小旅行気分で、ぜひ気軽に足を運んでみてほしい。 *Mikiki編集部


 

〈オハラ☆ブレイク〉は、東北最大級の音楽フェス〈ARABAKI ROCK FEST.〉の企画制作を行うARABAKI PROJECT/GIPが2015年に始めた〈大人の文化祭〉。福島のシンボルである磐梯山と猪苗代湖に挟まれた美しく広大な会場に、音楽、舞台、美術、写真、映画、小説、ファッション、食など、多様なジャンルの表現者が集結する。

この〈大人の文化祭〉の特徴は、何と言ってもリラックスした雰囲気。そもそもイヴェント名にある〈オハラ〉とは、会津地方に伝わる民謡〈会津磐梯山〉の登場人物・小原庄助から取ったものである。歌のなかで〈朝寝、朝酒、朝湯が大好きで身上を潰した〉と表現される彼の生き様を、会津が誇るスローライフの原点と解釈し、目まぐるしい情報社会の現代に新たな価値観を提示。ほかのフェスと比べても、非常に穏やかな時間と空間の中で、思い思いの体験を味わえることが大きな魅力となっている。

昨年行われた初回は宮本浩次エレファントカシマシ)や吉井和哉らが登場したが、今回も、音楽界からはロックの大御所が参加。壮大な湖畔の風景を望みつつ、よそではなかなか見られない貴重なアコースティック・ライヴを展開する。

特に注目は、 ROSSOThe Birthdayで活動を共にしたチバユウスケイマイアキノブによるアコースティック・ユニット=Midnight Bankrobbersの、約7年ぶりとなる再始動ライヴ。過去のバンドでの曲から2人によるオリジナル・ナンバーまで、いまの2人が奏でるからこその新鮮なパフォーマンスに期待が集まる。また、夜空のもとで演奏される浅井健一とヴァイオリン奏者による親密なライヴや、田島貴男オリジナル・ラヴ)に長岡亮介ぺトロールズ)、さらに今回初めて弾き語りを披露するHY新里英之ACIDMAN大木伸夫の各パフォーマンスも感動を呼びそうだ。

(左から)田島貴男(ORIGINAL LOVE)、長岡亮介(ぺトロールズ)
 
新里英之(HY)のメッセージ映像
 

ほかにも昨年に引き続き、斉藤和義中村達也によるMANNISH BOYSや、ハナレグミゴンチチサニーデイ・サービス曽我部恵一はソロでも出演)らの出演が決定している。

MANNISH BOYSからのメッセージ映像
 

また、豪華な出演者による一見意外な編成のステージからも目が離せない。若大将・加山雄三THE King ALL STARSとして、名越由貴夫ウエノコウジ武藤昭平高野勲山本健太と共に登場。実力派演歌歌手の神野美伽は、古市コータローTHE COLLETORS)やクハラカズユキThe Birthday)と領域横断型のロックなアクトを繰り広げる。さらには、尾崎豊の長男である尾崎裕哉や、坂本九の長女・大島花子など、伝説的なミュージシャンの2世によるパフォーマンスも。自然豊かな土地で、新しい音楽の可能性や才能の誕生に立ち会える、忘れ難い経験となるだろう。

神野美伽からのメッセージ映像
 

一方、音楽以外にも会場にはさまざまなジャンルの表現者によるユニークなイヴェントが盛りだくさん。普段は小説、演劇、美術、映画といったジャンルに接する機会が少ない人にも未知の扉を開いてくれるこれらの企画は、〈オハラ☆ブレイク〉ならではの豊かな個性となっている。

屋外の会場を含む美術展示では、知る人ぞ知る手塚治虫の名作漫画「すきっ腹ブルース」をフィーチャー。同作にインスパイアされた美術家たちの作品や、その複製原画が展示される。また、忌野清志郎の娘・百世が表紙を手掛けた、〈オハラ☆ブレイク〉特製の手塚作品のオムニバス・マガジン〈オハラ☆ブレイクと「すきっ腹のブルース」〉を販売。忌野の絵画展と、百世によるゴム版画アート作品の展示も併せて見たい。

また昨年も参加し、猪苗代湖への想いなどを土台にした短編小説「三人の男が猪苗代湖で会う話-スパイ・失恋・エスケイプ-」を書き下ろした小説家・伊坂幸太郎は、今年はその続編「猪苗代湖の話2016-スポンジとサマー-」を無料配布。猪苗代湖で知り合った3人の主人公の1年後を描く内容で、TOMOVSKY“スポンジマン”(2005年作『不思議な六月の夜』収録)とTheピーズの“サマー記念日”(2005年作『赤羽39』収録)いう2つの曲に着想を得た夏物語だ。加えて注目は、伊坂と劇団ペテカン大木温之(Theピーズ)が組んで行う、小説「三人の男が猪苗代湖で会う話」の舞台化。音楽や風景と溶け合った舞台で、観客をその物語世界へと誘ってくれるだろう。

TOMOVSKY 
 
大木温之(Theピーズ)
 

さらに、2020年のオープンをめざして世界中のアナログ・レコードを収集する〈ロックの図書館〉では、美術家の奈良美智を中心とする美術ユニット・THE WE-LOWSがレコードの保冷コンテナを装飾。音楽関係のステッカーでコンテナの扉を埋める、参加型のプロジェクトも行われる。完成したコンテナは、図書館の目標を広める〈ロックの図書館分室〉として、全国の芸術祭や音楽フェスティヴァルを回る予定だという。

THE WE-LOWS
 

このほかにも、カンヌ受賞経験もある映画監督、河瀬直美がプロデュースする短編映画祭や、絵本「ブーアの森」の原画展など、知的好奇心をくすぐる企画が多数。

大自然に囲まれた緩やかな時間のなかで、さまざまな表現世界にじっくりと浸かれる〈オハラ☆ブレイク〉。その体験はまた、福島という地域の魅力の再発見にも繋がっていくはずだ。福島が誇るスロウな〈大人の文化祭〉に、あなたも訪れてみては?

Predawnからのメッセージ動画
 
フラワーカンパニーズからのメッセージ動画

 


オハラ☆ブレイク‘16夏

場所:福島県・猪苗代湖畔

日時:7月30日(土)開場9:00/終演予定20:00
7月31日(日)開場9:00/終演予定20:00
8月6日(土)開場9:00/終演予定20:00
8月7日(日)開場9:00/終演予定20:00
※常設展示のみ
8月1日(月)~8月5日(金)11:00~19:00(入場は閉門の30分前まで)

ライヴ出演者

7月30日(土)
宮崎朝子SHISHAMO)/OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND/Midnight Bankrobbers(チバユウスケ/イマイアキノブ)/浅井健一/T字路s/山崎彩音/GOMALIOSGOMA&中村達也)/神野美伽伽 with 古市コータロー+クハラカズユキ/パイナップル独りウェイ/ペテカン/奈良美智(DJ)/板垣響紀

7月31日(日)
Curly Giraffe w/高田漣 Guest:藤原さくら/長岡亮介(ぺトロールズ)/トータス松本スガシカオ(ソロ)/田島貴男(ORIGINAL LOVE)/Heavenstamp(ACOUSTIC SET)/原田茶飯事サニーデイ・サービスmeico/ペテカン/青谷明日香/TOMOVSKY/大島花子/板垣響紀

8月6日(土)
新里英之(HY)/大木伸夫(ACIDMAN)/佐々木亮介a flood of circle)/Chabo×CaravanPredawnLeyona meets Miton山口洋×矢井田瞳MY LIFE IS MY MESSAGE)/ゴンチチ/蠣崎未来/パイナップル独りウェイ/佐藤和哉(篠笛奏者)/つじあやのライブ&夏休みウクレレセッション/山田佳奈(劇団□字ック)×フラワーカンパニーズ(アコースティック)×真心ブラザーズ

8月7日(日)
G-FREAK FACTORY(ACOUSTIC SET)/THE King ALL STARS(ACOUSTIC SET)/ましまろ/ハナレグミ/MANNISHBOYS/尾崎裕哉/畠山美由紀細美武士/山田佳奈(劇団□字ック)×フラワーカンパニーズ(アコースティック)/meico/熊谷和徳/曽我部恵一

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