凄まじい悲しみを怒りへ転化した内なる爆発――予期せぬ復活作となった『RIOT』は、その先へ向かうためのポジティヴな暴動だ!

 2015年末に活動休止を発表、デビュー前から制作に深く関わるサウンド・プロデューサーのminatoと結成したユニット=ViCTiMをスタートさせるも、minatoが心身不良に陥り、プロジェクトの停止を余儀なくされたVALSHE。しかし彼女は、みずからの創作活動を停滞させることなく、4枚目のミニ・アルバム『RIOT』を完成させた。〈内なる暴動〉をテーマにした本作にはもちろん、昨年末以降、彼女の身に起きた出来事が色濃く投影されている。

VALSHE RIOT Being(2016)

 「minatoに休養が必要なことがわかって、最終の決断として〈ViCTiMの活動を止めよう〉と言ったのは自分なんです。その直後の3日間くらいは気持ちが落ちて、茫然としてしまったんですが、そのうちに〈この状況じゃないと出来ない曲を作らないといけない〉と思うようになって。そのときに思い出したのが、以前minatoが言った〈VALSHEは悲しいときに怒るんだ〉という言葉だったんです。確かに自分は悲しさを人に伝えることに罪悪感があって、〈だったら、怒ってると思われたほうがマシ〉と考えてしまうところがあって。ViCTiMが止まったとき、それならこの悲しみをすべて怒りの表現に転化すれば、絶対に良いものが出来ると思ったし、自分の中の感情を爆発させられると考えたんですよね」。

 表題曲“RIOT”は、生々しいヘヴィー・ロック・サウンドと、失意から立ち上がろうとする狂暴なまでの意志を込めた歌がひとつになったアッパー・チューン。この曲にはViCTiMの楽曲制作で得た経験も活かされているという。

 「『RIOT』のサウンドに関しては、これまでのVALSHEの音楽とViCTiMで経験したことの融合を図りたくて。生バンドの激しいロック・サウンドを軸にしながら、荒々しさ、反骨精神を上手く表現できたと思いますね。制作が始まった当初は吐き出すように歌詞を書き、歌う予定だったんですが、結果的にはこの先に向けた〈決意表明〉の意識が強くなりました」。

 ソロ・デビュー前に制作し、「いちばん良い形で発表できるタイミングを待っていた」というdoriko作曲のデジタル・ロック“COUNT DOWN”も本作の核になっている。端的に言えばこの曲は、VALSHEの過去と現在を強く繋いでいるのだ。

 「〈VALSHEとしてこれからどういうサウンドで活動していくか?〉を模索していた時期の曲で、自分も大好きだったんです。“RIOT”が現在のVALSHEを表現した曲だから、自分の根底にあるもの、一聴して〈VALSHEの音だ〉とわかってもらえる曲も入れたくて、だったら“COUNT DOWN”しかないなって。歌詞の原型はminatoが書いたんですが、そこにもVALSHEの根本の考え方、活動のスタンスが込められているんですよ」。

 〈どんなに大事な人であっても、自分のできることは限られている〉という無力感から出発し、〈この状況を活かせるかどうかは自分次第〉という意思に至る過程を描いたバラード“MONOLOGUE”、「VALSHEの最新デジタル・サウンドを表現したかった」という“PANIC ROOM”、ライヴを強く意識した“RADICAL COASTEЯ”、そして、「もっとストレートにリスナーを応援できる曲が作りたくて」という意思の下に制作されたポジティヴなメッセージ・ソング“LUCKY DAY”など、この半年間の喜怒哀楽から生まれた楽曲が並ぶ『RIOT』。まるでドキュメンタリーのような色合いを持つ本作は、VALSHEの今後のクリエイティヴにも大きな影響を与えていくことになるだろう。

 「普段は創作のストーリーから曲を作ることが多いんですけど、今回の一連の出来事を客観的に振り返ってみると、これだけで十分にドラマティックだし、それをストレートに出すのがいちばんいいと思ったんです。この状況のなかで良い作品が作れたら、〈すべては意味のある出来事だった〉と思えるだろうな、って。ぜひファンの人たちにも楽しんでほしいし、minatoにも聴かせたいですね」。