予定から数年レヴェルで延期になった時点で、当初の〈3部作〉じゃなく別の動機付けによる作品に気持ちを移しているのだろうと思っていたら、本当にシリーズ第2部としてニュー・アルバムが律儀に到着。前作『BLACKsummers'night』リリース時のインタヴューで〈希望に満ちていて、気分を昂揚させてくれるポジティヴなアルバム〉と予告していたそのまんまではないものの、ブルージーな感傷や倦怠も美意識のフィルターを通してスピリチュアルな歌世界に変える術はこの人ならでは。イントロが一瞬“All I Do”っぽいダンサブルな冒頭曲をはじめ、躍動するリズムのなかで自在に歌声を泳がせる姿が随所で印象を残すのは、やはり今回も前作同様にライヴ・パフォーマンスから得た興奮をフィードバックした結果でもあるのだろう。もちろん、その空間を支配するヴォーカルの求心力が、〈いい感じなネオ・ソウル風〉の有象無象とは似て非なる点。気合いと野心がリズミックに蠢く力作で、これは『blacksummers'NIGHT』にも期待できそうだ。