この作品は、10年に一度、出会うか否かの映画的体験が出来る。鬼才と言うレッテルが付いてまわったトッド・ヘインズ監督。しかし、そのレッテルはこの作品で忘れ去られるだろう。作品全てが美しいの一言に尽きる。1960年代のアメリカをここまで忠実に再現しているだけでも脱帽だが、テレーズとキャロルの視点をスクリーン上で巧みに入れ替える演出、この作品で重要な色となる赤を潜在的に入れてくるところ、全てにおいて非の打ち所がない。淀川長治先生がこの映画を観たら、どう思うだろう? 私がレヴューを書くのも今回で最後となるが、最後に本作を執筆できたことを光栄に思います。