本来なら「音・人・出会い」というタイトルとなるはずだったのだろう。それを変えたA.E.とはAfter the Earthquake…震災後という意味で、震災後作曲された新実氏の作品をカウントする番号となっている。音楽のことはもちろん、政治から靴、美味しいものまでをまとめたエッセイだ。が、あの日。誰しもが忘れえぬ大震災から、エッセイの内容は人との繋がりについて書かれる事が増えていく。あとがきの最後『進むことが大切なのだ』と自分に言い聞かせている姿は、震災のもたらしたものを改めて見せている。作曲家の日常をコミカルに、震災という非日常を克明に記録した一冊だ。