クラシック音楽には「形式の美学」という側面も存在する。定まったフォーマットの中に収められるからこそ創意や工夫が活きていく。「ソナタ」や「交響曲」といった形式と並んで「24の前奏曲」というのも実は作曲家の創意が迸る美しい形なのだ。調性音楽のすべての可能性である24の調で構成され、古くはショパン・スクリャービン・ショスタコーヴィチらなど優れた作曲家によって発展した構造。そこに「アンビエント/ミニマル」的アプローチで切り込んだファン・フェーンの傑作『ミニマル・プレリュード』は現代の美学の頂点に他ならない。