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『Amnesty(I)』と共に光の閉ざされた世界を包む、2016年の冷ややかな舞踏音楽。夜明けはまだ遠い……

EXPLODED VIEW Exploded View Sacred Bones(2016)

ポーティスヘッドジェフに見い出されたミステリアスなシンガー、アニカの新プロジェクトはメキシコを拠点とするプロデューサーたちとのセッションから誕生。感情を押し殺したような冷たい歌声と、ノイズドローンが戯れるダークウェイヴ趣味たっぷりのサウンドは、何とも形容し難い禍々しさで溢れている。

 

DEATH GRIPS Bottomless Pit Harvest/HOSTESS(2016)

活動停止も突然ならば、復帰も突然だったヒップホップ・トリオ。この新作ではハードコアからノイズ、フットワークなどをエクスペリメンタルに吐き出し、変わらぬ無軌道ぶりを見せているが、不思議と統一感があってアルバムとしての完成度は高し。クリキャスも真っ青なテンションの高さは狂気そのものだ。

 

RAWTEKK Here's To Them Med School(2016)

極太のベースラインを執拗に這わせ、ドラムンベース・サイドからゴスへのアプローチを試みるニューロファンク・デュオ。あどけなさを垣間見せる女性ヴォーカルやアンビエンスを湛えたシンセ、ダークながらもキャッチーなメロディーで独特の世界観を構築するところなど、クリキャスとの共通点は多い。

 

LOLA COLT Twist Through The Fire Black Tigress(2016)

60年代風のサイケデリック・ロックシューゲイザーやゴス味で包み、暗く重たいトーンでプレイするロンドン出身の6人組が放った2作目。腰の据わったキティ嬢のヴォーカルが、このバンドのシアトリカルな魅力をいっそう引き立てている。見世物小屋とかで観たくなる妖しげな空気感もたまらなく良い。

 

LUH Spiritual Songs For Lovers To Sing Mute/TRAFFIC(2016)

近年の暗黒サウンド人気を支えるトライ・アングルから発表したドローン盤で、世界を震撼させたハクサン・クローク。彼を指揮官に迎え、元ウー・ライフエラリーが恋人と再始動したことも2016年の大きなニュースだ。DHR風のデジタル・ビートは、『Amnesty(I)』収録の“Frail”と並べて聴きたい壮絶さ。

 

DINO SABATINI Omonimo Outi(2016)

地下テクノ界で一目置かれているプロデュース・チーム、モダンヘッズの片割れによるソロ作は、バレアリックインダストリアルを融合させた漆黒の瞑想盤。『Amnesty(I)』のアンビエント・タッチな楽曲を、より深い地点まで運んだような音はあまりにもドープで、気持ち良さと裏腹に危険な香りも漂い……。