小熊のコーナー

ボン・イヴェール、オッカーヴィル・リヴァー、Ryo Hamamoto―三者三様にアップデートした歌心に思いを巡らす

ボン・イヴェール、オッカーヴィル・リヴァー、Ryo Hamamoto―三者三様にアップデートした歌心に思いを巡らす

9月30日にリリースされるボン・イヴェールの新作『22, A Million』から、少し前に先行シングルとして公開された“22 (OVER S∞∞N) [Bob Moose Extended Cab Version]”と、“10 d E A T h b R E a s T ⚄ ⚄ (Extended Version)”の2曲がメガトン級の内容でぶったまげた。本人によるゴスペル色の強いヴォーカルや、ファルセットとオートチューンを駆使したコーラス・ワークが素晴らしいのはもちろんとして、コラボ歴のあるカニエ・ウェストの『Yeezus』を想起させるインダストリアル・ビートや、先鋭的な現代音楽/インディー・クラシック勢との交流(詳しくはこちら)をフィードバックしたかのような管弦楽器のアレンジなど、〈なんでこうなったの!?〉と言いたくなるほど攻めまくりのプロダクションに言葉を失う。

先ほど公開された新曲33 “GOD”も破格のテンション! 頭のネジが外れたようなトラックリスト(褒めてます)も含めて、来るアルバムは2016年下半期における目玉の一つになるだろう。

 

一方で、ボン・イヴェールが2007年にリリースした出世作『For Emma, Forever Ago』でのロンリー&メランコリックな感覚を思い出させてくれたのがオッカーヴィル・リヴァー。9月28日にリリースされる新作『Away』から先行公開されたトラックは、その名もずばり“Okkervil River R.I.P.”。何も自分のバンドを追悼しなくても……と思うけど、中心人物であるウィル・シェフの発言によると、2013年~2015年にかけてバンド活動もプライヴェートも困難が絶えなかったそうで、傷心した彼を心配した友人が、キャッツキルズの山奥にある空き家を提供してくれたのだとか(このくだりも〈For Emma,~〉と似ているような?)。それがきっかけで彼は楽曲量産モードに突入し、ふと気が付くと、〈自分が選択しなかった別の人生の終わり〉について思いを馳せていたという――なんとも文学肌な彼らしいエピソードだ。

新作には、マリッサ・ナドラーシアウォータージョナサン・メイバーグのほか、ベン・フォールズからボン・イヴェールまでコラボしている室内楽団のyMusicが参加。ほかにもジャズやアヴァンギャルドなバックグランドを持つミュージシャンが集結しているとのことで、大いに期待したい。

 

遡ること2012年に、音楽評論家の岡村詩野さんが〈彼は日本のボン・イヴェールですね!〉と推薦コメントを寄せていたのが、ギタリスト/シンガー・ソングライターのRyo Hamamoto。今年7月に発表された『Third』では、アメリカン・ルーツ・ミュージックの匂いをほのかに漂わせながら、よりスケール・アップした歌心に酔いしれることができる。バンド名義の前作から4年、ソロ名義としては9年ぶりとなるアルバムであり、力強いアンサンブルがどこか切なくパーソナルに響くのは、時間をかけて丹念に作られた証ともいえるだろう。最小限のバンド・フォーマットを貫き、日本語で歌いながら、こんなに芳醇なソングライティングを実現できるのだな~と感激してしまった。

ROTH BART BARONのファンにもオススメ!〉と書こうと思ったら、9月15日(木)に東京・渋谷WWWで開催される『Third』のリリース・パーティーには、彼らとPredawnがスペシャル・ゲストとして出演するのだそう(詳細はこちら)。この『Third』と同じく、ドラムの神谷洵平とベースのガリバー鈴木が参加しているPredawnのニュー・アルバム『Absence』(9月21日リリース)もすごく楽しみ!

【プロフィール】
小熊 俊哉

小熊 俊哉

86年新潟県生まれの編集者。出版社勤務を経て2015年4月よりMikikiに所属。ライナーノーツ執筆(主に洋楽インディー・ロック)など、ライター仕事もいくつか。アイコンにしているのは好きなアルバムです。 Twitter:@kitikuma3

関連アーティスト
募集