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過去と現在とがシンクロする、怪獣王の帰還を彩る音響芸術

 「シン・ゴジラ」、怪獣王が帰ってくる。1954年よりはじまったこの怪獣映画の歴史は、幾度かの休止期間を挟みつつも今日まで脈々と生き続け、日本が誇る一大興行と成った。そして2016年夏、12年ぶりにこの歴史に新たな一頁が刻まれた。この偉業に立ち向かったのは庵野秀明。そしてこの作品に音楽を附すのは、彼と「ふしぎの海のナディア」「エヴァンゲリオン」シリーズで抜群のタッグを組んだ鷺巣詩郎なのだ。

鷺巣詩郎 『シン・ゴジラ音楽集』 キング(2016)

 「ゴジラ」に於ける音楽といえば、過去28作の映画の中ですぎやまこういち、服部隆之からキース・エマーソンまでが劇伴を提供し彩りを添えてきたが、なんといっても伊福部昭のあの〈偉大なるテーマ旋律〉が諸兄の心の中に君臨することだろう。音楽面でも映画史に燦然と輝くゴジラ・シリーズであるが故に、本作でも否応なく期待が高まってしまう。そんな期待を遙かに超えた音がそこには収められていた。

 伊福部昭の偉大なる〈過去の功績〉、今を生きる鷺巣詩郎の〈現在の音楽〉が見事に融合した音楽集。これは映画音楽でありながら映画音楽の域を超えた音響芸術とでも形容できようか。62年の歴史と相対するため音楽の創作にも並々ならぬ力が注がれたのが見て(聴いて)取れる。凶々しいまでの〈虚構〉と緊迫する〈現実〉、両者の絶妙な緊張感を演出しつつも昂ぶらせるオーケストレーション。また、敢えて全くの編集を加えない伊福部昭の音源を配するのも過去と現在が共存している所以である。本盤では作曲者本人による全曲の楽曲解説や、惜しくも劇中では使用されなかったテイクもボーナストラックとして収録。鷺巣詩郎の仕事が余すことなく記録され、まさに「シン・ゴジラ」という作品をより深く奥行きを持って理解するための道標となることだろう。

 〈円谷英二と伊福部昭〉〈庵野秀明と鷺巣詩郎〉、過去と現在を結ぶ〈両〉者のクリエイティブは未来でも怪獣王の歴史と共に輝き続ける傑作なのである。

 


MOVIE INFORMATION
「シン・ゴジラ」
脚本・総監督:庵野秀明
監督・特技監督:樋口真嗣
准監督・特技統括:尾上克郎
出演:長谷川博己/竹野内豊/石原さとみ
全国東宝系にて絶賛公開中!
http://shin-godzilla.jp/