こんなにパーソナルな歌を聴かせるのはブラーの『13』以来だろう。そのブラーの一員としてデビューしてから20余年を経て登場する初のソロ名義作、ボビー・ウーマック作品で共演済みのリチャード・ラッセルがプロデュース。リチャードによるローファイなビートを、アコギやピアノを用いてデーモンが構築していて、その簡素なサウンド・テクスチャーがメロディーと声を最大限に引き立てる。そう、美しくも憂いに満ちた旋律の数々に、ソウルフル極まりない彼の声はもっとも居心地の良い場所を見つけ出し、ほぼ100%実体験に準じているという詞が、自身の半生のさまざまな断片をフラッシュバック。かつ、過去を振り返ることで現代の歪みも炙り出し、内省と社会論評が交錯する自画像を描き上げた。