昭和の生活を伝える一家の夏

 長谷川町子の代表作「サザエさん」は、戦後間もない1946年に生み出され、今年70周年。そしてこの夏は終戦71年。まさに戦後直後に生まれた、あんなにもユーモアにあふれたキャラクター、それらが繰り広げる架空の日常のお話、ということになる。

 サザエさん生誕70年を記念して、作者・長谷川町子の全貌がわかる初めての回顧展〈よりぬき長谷川町子展〉が開催されている。京都、広島と経て東京、名古屋と続く大型展で、原画や少女時代のスケッチブック、戦時下の漫画、絵本などのお仕事を目にすることのできる貴重な機会となりそう。

長谷川町子 サザエさん よりぬきワカメちゃん 朝日新聞出版(2016)

 サザエさんはもともとは新聞で連載されていた4コマ漫画で、単行本第1巻は、長谷川町子が姉である毬子とともにそのころ立ち上げた〈姉妹社〉から出版され、全68巻となった。その中の磯野家次女、ワカメの4コマ漫画をセレクションした『よりぬきワカメちゃん』には、アニメでのイメージを覆すなかなかのやんちゃぶりといつものキュートな両面を見せる、かしこいワカメが満載。かぼちゃパンツが半分くらいはみ出た短いスカートもいいが、もんぺに下駄といったスタイルのワカメも新鮮でいい。意外とズケズケと物申す彼女の一本筋の通った一面は姉であるサザエさんに似たのかな、長谷川町子の姉・毬子もしっかり者の頭のいい人だったようだが。

長谷川町子 サザエさん 2016 夏 朝日新聞出版(2016)

 70周年を記念したシリーズがもうひとつ。単行本『よりぬきサザエさん』からの厳選4コマ作品を収録したサザエさん増刊の第3弾、『サザエさん 2016 夏』。限られた4つのコマの中の決して多くないセリフや背景からも、昭和の夏の過ごし方が垣間見える。とても夏らしい夏。エアコンはない。リボンを括り付けた扇風機の前で声を震わせる坊主頭やおかっぱ頭の子どもがいまどのくらいいるだろう。そして2016年の夏。お外でポケモンもいいけど、みんなとちがうことをしてみるのもいいんじゃないかな。

 


INFORMATION

サザエさん生誕70年記念 よりぬき長谷川町子展
会場:東京・板橋区立美術館
会期:8/27(土)~10/10(月・祝)
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(ただし祝日の場合は開館し、翌日休館)

会場:名古屋・松坂屋美術館
会期:2017年4/29(土)~5/24(金)
www.asahi.com/event/machikoten/