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シカゴ・ジャズのニューウェイヴがクリエイトする、21世紀のスタンダード・チューン

 1917年に、キング・オリヴァー(tp)、ルイ・アームストロング(tp)らが、ニューオリンズから北上しシカゴで活動して以来、シカゴ・ジャズはベニー・グッドマン(cl)、AACMジャック・デジョネット(ds)ら多くの才能を輩出し、ジャズ・ヒストリーに芳醇な薫りを醸してきた。本作の主人公マーキス・ヒル (tp,flgh)も、シカゴが現代ジャズ・シーンに送り出した俊英だ。多くの若い優れた才能を輩出したセロニアス・モンク・ジャズ・コンペティションで2014年に優勝し、その副賞としてコンコード・レコードからリリースしたメジャー・デビュー作が、本作『The Way We Play』だ。

MARQUIS HILL The Way We Play Concord(2016)

 オリジナル曲で、ジャズ、ポエトリー・リーディング、ラップ、ヒップホップを融合させた前3作のコンセプトを発展させ、少年時代から愛奏してきたスタンダード曲やフェイヴァリット・プレイヤーのオリジナルを、21世紀の視点でプレイする。マーキス・ヒルとクリストファー・マクブライド(as)の2管のフロントが絶妙なブレンドを聴かせ、ジャスティン・“ジャステファン”・トーマス(vib)が、リズミックと浮遊感を併せ持つコンピングと、シャープなソロを執り、ジョシュア・ラモス(b)とマコヤ・マクカーヴェン(ds)は、スウィングとヒップホップ・オリエンテッドなリズムで、ジャズ・クラッシックスに新たなヴァイヴを注ぎ込む。この全員シカゴ出身のレギューラー・クインテット“Blacktet"に、多彩なゲストが参加した。ヒルが高校生の頃のアイドルだったドナルド・バード(tp)の《Fly Little Bird Fly》は、ポエトリー・リーディングのハロルド・グリーンIIIが新たなストーリーを加える。シカゴ出身のハービー・ハンコック(p)をオマージュした《Maiden Voyage》は、リフを繰り返すフロント陣の上で、ミーガン・マクニールのスキャットが舞う。シカゴからの新たなムーヴメントが、今始まった。