バンド初のTVドラマ主題歌となった“鬼”を含むフル・アルバム。甲高く連呼されるキラー・フレーズがお茶の間に届く様を思うと痛快だが、まさにいまの彼らは高い拡散力と感染力を併せ持っているのだろう。自分と誰かの〈心の隙間〉に落ち込んでしまった感情を、切実かつ死にもの狂いで捲し立てるスタイルは健在だし、それこそ自分たちの曲を流してくれるTVにも鋭い牙を剥く、メタな“テレビサイズ(TV Size 2'30)”に肝を冷やすが、一方で優しく平穏な心持ちをしたためた曲も目立つ。それはフォーキーな“僕は君の答えになりたいな”だけでなく、AOR~メロウ・ソウル路線のアプローチを見せる“5%”にもっとも顕著で、ラッパーのチプルソを招いた“TRUE LOVE”など、新たなトライにも意欲的。ただ、それだけにラストの“バンド”が大きな意味を持つ。尾崎世界観にとってバンド活動とは何か、深く深く見つめることで生まれた言葉は、ひたすら赤裸々で具体的で、正直で美しい。彼らの行く末に幸あれ。