INTERVIEW

イヴァン・リンスが長年タッグ組む作詞家ヴィトルに捧ぐ、美しい旋律と強固なメッセージ放つ新作『America, Brasil』を語る

ブルーノート東京公演より Photo by Yuka Yamaji
 

美しいメロディを纏った力強いメッセージは健在

 優れたメロディ・メーカーを擁するブラジル音楽の中でも、イヴァン・リンスはブラジルを越えて世界中で愛される作品を数多く送り出しているアーティストだ。そんなイヴァンの新作『アメリカ、ブラジル』は、イヴァンの長いキャリアのなかで、他人に書き下ろした曲や、日の目を見なかった曲などを集めている。

IVAN LINS America, Brasil Sony Music Japan International(SMJI)(2016)

 「唯一レコーディングすらされなかったのは《ルッショ・ド・リッショ》。レブロン地区のサンバチームに頼まれて書いたものの、上層部がトラブルを起こして、結局世に出なかった。彼らはカルナヴァルでパレードすらできなかったんだ。この曲を世に出そうと思ったのがこのアルバムを企画したきっかけの一つだね」

 もう一つ、このアルバムはイヴァン作品の多くで詞を提供しているヴィトル・マルティンスに捧げられている。ミルトン・ナシメントフェルナンド・ブラントジョアン・ボスコアルジール・ブランキなど、ブラジルのアーティストには作詞家とのチームが目立つが、同時にそれが長続きしないことも多い。ところがイヴァンとヴィトルのコンビは現在まで続いている。存続の秘訣はどこにあるのだろうか。

 「ヴィトルは良き友人であり、パートナー。もう彼と組んでから42年経つけれど、彼は僕の曲に文学的なクオリティを与え、そして高めてくれたんだ。彼と出会ってからはメロディよりも歌詞を重要視するようになったし、僕自身ヴィトルの歌詞にはずごく影響を受けている。ステージでは生気に満ちたヴィトルの世界観を忠実に再現するように心がけているんだ。チームが続く秘訣は、まず友人同士であり、同じ価値観、主張を持っていて、お互いを人間としてもアーティストとしてもすごく尊敬できるかだろうね。僕はヴィトルの詞が大好きだし、その仕事も尊敬している。きっとヴィトルが僕に対する気持ちも同じだと思うね」

 ジャズの世界でも高い評価を受けているイヴァンの名作たちは、むしろイヴァン=ヴィトルの作品群といってもいうべきだろう。

 さて、イヴァンに限ったことではないが、ブラジルのこの世代のアーティスト達は、時に政治色の強い作品を多く送り出している。そんな“闘う姿勢”をイヴァンは今も持ち続けているのか、尋ねてみた。

 「フォーカスが変化しているだけだね。軍事政権の時代はその政権に向かって対抗していた。今は国のシステムではなく、政治家に対して憤っている。彼らに任せておくと美しいブラジルの未来はなくなるだろうね」

 美しいメロディを纏った強固なメッセージ。それこそがイヴァン=ヴィトル作品が持つ大きな魅力だ。これからもすばらしいメッセージが届きますように。

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