クラシックは難しい、現代音楽となればなおの事。そんな時に重宝するのが「取扱説明書」。傘寿を越えてなお積極的な活動を続けられる日本作曲家界の重鎮、一柳慧氏の回顧録と、近年の作品を自らが解説してゆく書籍となる。師ジョン・ケージと、彼から透けて見える鈴木大拙(日本の禅文化を海外に知らしめた仏教学者)の姿から、一柳氏の作曲動機や彼の紐解き方が記されていく。自身の言葉だからこそ実に分かり易い。まさに取扱説明書だ。近年の作品では日本国土が受けた『二回』の被爆体験も、作品に影を落としているのが分かる。読み終わった後、無性に音楽が聴きたくなった。そんな本。