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the changing same
こんな時代にこそ輝く2016年のオーセンティックな歌

TWEET Charlene eOne(2016)

11年ぶりのアルバムでも、〈さえずり〉を意味するその名に相応しいスウィートで柔らかな歌声は不変。旧知の制作陣が手掛けた楽曲も声質にマッチするオーガニックな仕上がりで、多重コーラスとアコギが絡み合う“Won't Hurt Me”の穏やかさや、ミッシー・エリオット&ティンバランドと久々にタッグを組んだ“Somebody Else Will”の瑞々しさが極上だ。 *池谷

 

SWV Still Mass Appeal/eOne/ビクター(2016)

〈変わらなさ〉こそ現在のSWVにおける最大の美点。甘酸っぱいハイトーンと教会マナーな太さを併せ持つ3人のハーモニーはいつまでもあの頃のままで、90年代テイストをモダンに再現する楽曲に乗ってどこまでも駆け上がる。90年代R&Bの象徴といえるグループが、いまなお躍動感溢れる姿でR&Bヴォーカルの醍醐味を聴かせてくれることに感動を覚える一枚。 *池谷

 

RO JAMES Eldorado Bystorm/RCA(2016)

ミゲルマリ・ミュージックと同じくマーク・ピッツの後押しでメジャー進出したシンガー/ソングライターで、予想に違わずオルタナティヴなR&Bを歌う初作。ウィリー・ハッチ曲を引用した“Permission”など、地声とハイ・ヴォイスを巧みに使い分け、寂寥感漂う楽曲を哀愁込めて歌い上げていく。BJ・ザ・シカゴ・キッドアンダーソン・パークの並びで聴きたい。 *林

 

JAHEIM Struggle Love Julie's Dream/Primary Wave/BMG(2016)

深みのあるヴォーカルでソウル/R&Bリスナーだけを魅了し続けるジャヒームの7作目。ふくよかで包容力漂う歌声の中に哀愁も滲ませた表題曲にまずは男泣き。そして自身に声質の似ているテディペンルーサーに加え、バリー・ホワイトメアリーJ・ブライジらの名を歌い込んだ“Songs To Have Sex To”では、ソウルの先達の魂を受け継がんとする意志すら感じる。力作。 *池谷

 

AZ YET She's Magic X-Ray(2016)

96年にラフェイスから登場したヴォーカル・グループが新メンバー(4人組)となって20年ぶりに放ったフル・アルバム。ボーイズIIメン直系の折り目正しさは変わらず、カムバックしたマーク・ネルソンが美声と美メロでリスナーの胸を鷲掴みにするあたりも往時のままだ。出世曲“Last Night”のリメイクやブライアン・マックナイト“One Last Cry”のアカペラ・カヴァーも上出来。 *林

 

SLIM Refueled Shanachie(2016)

112のメンバーによる7年ぶりのソロ作。地元アトランタの新進MCであるリッチ・ホーミー・クワンとの共演、メイスカール・トーマスを迎えたバッド・ボーイなコラボをはじめ、現行ヒップホップや往時のR&Bに目配せした楽曲を中心にした内容を青臭いヴォーカルでスマートに歌いこなす。スロウ~ミッド群で放たれるモーショナルなナヨ声も彼ならではの魅力だ。 *池谷

 

FANTASIA The Definition Of... 19/RCA(2016)

十代での華々しいデビューから浮き沈みの激しい人生を経て、不屈の歌姫たる貫禄を得た三十路女性の5作目。そんなドラマが情熱的な歌に反映されるのもファンテイジアの魅力的で、達観したようなスロウ“Ugly”の滋味は彼女にしか出せないもの。折り目正しいソウル・ナンバーでの熱唱やラストの賑やかなゴスペル“I Made It”まで、情と懐の深さは並じゃない。 *池谷