心に熱き炎を灯せ! あのZippoがスリップノット主催の祭典に参戦したぞ!!

HISTORY
音楽シーンとも積極的にリンクしてきたZippoの歴史

 遡ることいまから84年前にペンシルベニア州はブラッドフォードで産声を上げたZippo Manufacturing Company。同社の作るオイル・ライターは、風に強いという機能性の高さだけでなく、シンプルでスタイリッシュな長方形のフォルム、蓋を開閉する際に出る重厚感のある金属音など、このブランドにしかない魅力で世界中にファンを増やし続けてきた。そんなZippoは音楽シーンとも縁が深く、1960年代よりジミ・ヘンドリックスローリング・ストーンズらと積極的にコラボ。また、1973年に登場したボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ『Catch A Fire』の初回盤では、ジャケットにZippoライターの画像が大きくプリントされて話題を呼ぶことに。以降もエアロスミスカート・コバーンほか、時代を象徴するアーティストをモデルにしたアイテムを次々と発表。そのなかにはユニコーン吉井和哉、最近だとSiMONE OK ROCKといった日本人ミュージシャンも多数ラインナップされていることを追記しておこう。

 そして、今年11月、新たな試みとしてZippoが手を組んだのは〈KNOTFEST JAPAN 2016〉だ。スリップノットが手掛ける大型ロック・フェスティヴァルの2度目となる日本開催に合わせ、特別ブースを出展。Zippoがいかにして来場者の心に火を着けたか、当日の様子をレポートしたい。

 

BOOTH
タフなブランド・イメージを形にしたスペシャル・ブース

 会場となった幕張メッセに入ると、妖しいサーカス小屋を思わせる薄暗い巨大空間がまず目に飛び込んできた。飲食店やアパレル・ショップのブースが軒を連ねるそのエリアにおいて一際目立っていたのが、〈Zippoを高く挙げ、音楽に合わせて揺らす〉——そんなアクションをモチーフとするキャンペーン・ロゴを掲げた一角だ。

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 ここでは定番のオイル・ライター(写真2)が通常の30~40%オフというスペシャル・プライスでゲットできたほか、これからの季節に重宝しそうなジッポーハンディウォーマー(写真3)も販売。市販のZippoオイルを入れれば繰り返し使用でき、1度に最大24時間も発熱を持続、そしてお馴染みのマークの刻印……と、Zippoコレクターならずとも思わず手が伸びてしまうアイテムである。ブースの前ではZippoのイメージにピッタリなカッコ良い女性スタッフ(写真4)が次々と来場者を誘導。オープンからクローズまで賑わいが消えることはなく、こうして〈KNOTFEST JAPAN〉へのZippoの初参戦は大成功のうちに幕を閉じた。

 

LIVE
総勢30組のバンドが登場したラウド・ロック漬けの2日間

 ダーク・カーニヴァルとの異名を取る〈KNOTFEST〉。〈暗黒の謝肉祭〉などと解釈すれば、どこかホラーじみたムードが漂ってくるが、幕張メッセで轟音にまみれた2日間を振り返ってみた時に感じられる余韻は、重苦しく淀んだものではなく、むしろ爽快感を伴うもの。言わば〈KNOTFEST〉は、時流とは関係なく、アンダーグラウンド精神を持ち続ける者たちの祭り。それが日本でもこれほどの規模で展開されたという現実そのものが、まず痛快だ。

スリップノット (C)KNOTFEST JAPAN

 両日を通じてもっとも心に残ったのは、やはりスリップノットの求心力の強さ、ということになる。バンドの精神的な支柱と言うべきクラウン(パーカッション)の来日が、(義父の急逝によって)叶わなかったのは残念だし、最新作『.5: The Gray Chapter』の発表からもすでに時間を経ていたものの、むしろそれゆえに選曲の自由度が高まっていたのも事実。音楽的にもパフォーマンス的にもエクストリームなまま頂点に君臨し続ける彼らは、狂暴でありながらも包容力があり、残忍そうに見えつつもフロアを埋め尽くした同志たちを歓待するサービス精神で溢れている。常に満足を約束してくれるのだ。

 同時に印象深かったのは、各日の〈トリ前〉を飾ったデフトーンズマリリン・マンソンの貫禄だ。どちらもスリップノットにとっては先輩格にあたるわけだが、自分たちの影響下にある世代のアーティストばかりじゃなく、こうして先達に敬意を表しながら、その素晴らしさをキッズに知らしめようとする姿勢も素晴らしいし、そこで短時間ながらもきっちりと本領発揮のパフォーマンスを披露し、横綱相撲を取ってみせた両バンドの存在感こそが、このフェス自体の印象を締まったものにしていた。また、速い曲やわかりやすい一体感を求める傾向の強いフェスならではな客層の嗜好性に擦り寄ることなく、あくまで通常通り、独自の世界観を打ち出すことを最優先させていたのも見事としか言いようがない。

アンスラックス (C)KNOTFEST JAPAN

 ほかにも、リフひとつの殺傷力と多様なシャウトでファンを唸らせたラム・オブ・ゴッド、完璧なサウンドと歌唱で圧倒したディスターブド、リリースを翌週に控えていたニュー・アルバム『Battles』からの楽曲をいち早く披露してくれたイン・フレイムスなどなど、いずれの出演者も深い爪痕を残していたが、とりわけアンスラックスのライヴ巧者ぶりは感嘆に値するものだった。デビューから32年を数えるこの老舗グループは、午後2時半からの40分間という新進アクトのような出番のなかで、若い世代をも凌駕するほど突進力のあるステージを披露。あれを観たら、他の出演者たちも帯を絞め直さずにはいられなかったはずだ。

SiM (C)KNOTFEST JAPAN

 歴史の異なるさまざまな欧米のバンドが各々の持ち味を色濃くアピールするなか、日本勢も負けてはいなかった。結成20周年を迎えようとしているRIZEの演奏にはプレミア感とも言える特別な感触があったし、フロアを〈楽しい戦場〉へと一転させたHER NAME IN BLOODの重戦車の如きサウンドは説得力十分。いまや日本武道館や横浜アリーナを制し、みずからのフェスを主催するまでになったSiMも、若々しいギラギラ感はそのままに、大物の空気を纏うようになっていた。そのSiMのMAH(ヴォーカル)がデフトーンズへの敬意と思い入れを語ったのも、coldrainMasato(ヴォーカル)がスリップノット愛を口にしたのも感動的。そして、そうした国内のバンドたちの熱演とそれに対する熱い反響は、洋楽と邦楽の垣根が本当にない時代が到来しているのだという現実を裏付けているようにも思う。

 エクストリームなままでもシーンの頂点に立つことができ、日本人としてのアイデンティティーを捨てなくても世界と交わることができる——2日間に渡るカーニヴァルは、そうしたことをはじめとする、さまざまな可能性の存在を実証していたと言えるだろう。だからこそ、次にも期待したいところだ。 *増田勇一

 

SHOUT
白熱のバトルが繰り広げられたシャウト・コンテスト

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 今回のZippoブースのメイン企画として組まれていたのがシャウト・コンテストだ。これはマイクの前で大声を発し、測定器に出た数値の高さを競うもので、参加者にオリジナルのバンダナ(写真6)が配られたほか、優勝者にはスリップノットとZippoによるコラボ・ライター(写真7)が贈呈。正直、始まる前は「シャイな人が多いと言われているここ日本で、いくら賞品が豪華だからといって盛り上がるのか!?」と思う部分もあったが、こちらの心配をよそにチャレンジャーは後を絶たず……。

 プロ顔負けのデス・ヴォイスを披露する方もいれば、一心不乱にハイトーンで叫ぶ方もいて、スタイルは人それぞれ。何人かの挑戦者に感想を訊いてみたところ、「恥ずかしかったけど、スリップノットのライターが欲しくて!」「ライヴ前の景気付けに!」と参加動機もさまざまながら、全員が口を揃えて「想像以上にスッキリした!」と話していたのが印象深かった。また、記録が更新されるたびに周囲から大きな歓声と拍手が起こり、このコンテストが〈KNOTFEST JAPAN 2016〉の盛り上がりに一役買ったことは言うまでもない。