INTERVIEW

アルゼンチン発アカ・セカ・トリオが語る、パワフルかつ透明感に溢れたハーモニーの意外な出発点

(C)CelesteUrreaga

 

澄んだハーモニーを聴かせるアカ・セカ・トリオの核心に迫る

 スキヤキトーキョー2016に登場した澄明なアンサンブルは、思いのほかパワフルで、根底にたゆたう伝統成分も意外や濃厚。フアン・キンテーロ(g)アンドレス・ベエウサエルト(p)マリアノ・カンテーロ(perc)と会い、彼らの神秘に迫った。まず、問題はトリオ名だ。

 「僕らはとても若かった(笑)。故郷トゥクマンにはスペイン語以外の言葉を話す人々がいて、意味もわからずふざけて使ううち、命名に至った。アカの頭のAにアクセント。こんな名前をつけてしまって、国内北西部地域で演奏するのが難しくなったんだよ」(フアン)「だが、ブエノスアイレスで意味が通じることはまずない。東京での山形弁みたいなもの」(アンドレス)「最初の北部公演では、アカー・アデントロという違うグループ名でやったくらいなんだ」(マリアノ)「そこから花が咲くのよねと、詩的にフォローしてくれた先輩に大感謝だよ。祖父母にも怒られたし……翌年には、愛情をもって呼んでくれたけど」(フアン)「賞を獲って以降、誇りに変わっていった。未だ首都の人は北の果てのことは知らないし」(アンドレス)

 でもウィキペディアに出ちゃってますよ、と言うと、笑いながら「クソペディアだな」と、彼ら。Secaはスペイン語で〈乾いた〉の意。Acaはケチュア語で〈糞〉なのだ。有機肥料に似合わず、フォルクローレの汗も垢も、泥も埃も、まるで存在せぬかのような清らかな世界なのに。

 「声高に郷土を謳いはしないけれど、気取ってとりすましているつもりはなく、僕らの音楽を突き詰めた結果、自然と土埃や汗とは別物になった」(フアン)「化学反応みたいに導き出される共通項が、3人には備わっているから」(アンドレス)「僕らWi-Fi状態」(マリアノ)「つまり、信頼関係」(フアン)

 母国で、どんなジャンルとみなされているのか?

 「フォルクローレ・ルーツの音楽とか」(アンドレス)「今も呼称は、はっきりしていない」(マリアノ)「はっきりしないお蔭で、ジャズ・フェスやワールドミュージック・フェスに呼ばれるんだ」(フアン)

 学生時代から、トリオの原点はコーラスにあり。

 「だから、結成当初からずっと変わらず、アンコールは、3人のアカペラと決めている」(アンドレス)「レパートリーを変えても、そこは不変」(フアン)「コーラスには、音楽において人間の力強さを感じさせる、根源的なものがあるからね」(マリアノ)

 いかに個々が活躍しようとも、中心プロジェクトはあくまでアカ・セカと断言する彼ら。アンコールの《ポブレ・ミ・ネグラ》と最新ベスト収録《日曜日とチャジャ》、両伝承曲の力強さに、トリオの核心をみた。

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