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キャリアを経ていくうえで重要さを増していく曲

――今回のスカートのシングル“静かな夜がいい”は、まだタイトルもない頃に前作『CALL』のリリース・パーティーで披露した曲ですね。アンコールの最後に演奏したという。

澤部「そうなんですよ。そこでの反応が凄く良かったんです」

tofubeats「超カッコイイ話じゃないですか! 僕の場合、出来たときのテンションでワーッと新曲をかけてもオーディエンスの反応はまずまず程度で、これから地道にやっていかないとなと思うことのほうが多いのに……。“STAKEHOLDER”もイントロで沸くようになるまで1年ぐらいかかりました。新曲の反応が良いなんて、身内のイヴェントでも経験がないですよ」

tofubeatsの2015年作『POSITIVE』収録曲“STAKEHOLDER”
 

澤部「『CALL』のリリース・パーティーで演奏したときは、そこにいた誰もが知らない曲なのに楽しそうに踊ってくれて、終わってからも〈あの曲は何?〉と言ってくれた人が凄く多かったんです。良い曲だという自信はありましたけど、予想以上の反響があった」

――どんなふうに出来上がっていった曲だったんですか? 

澤部「『CALL』のマスタリングが終わって、落ち着いた頃に作りはじめたんですけど、『CALL』を作ったことでやりきった感があったから、最初は結構迷ってしまって。そこで、いままでこだわっていたコード進行の妙を1回捨ててみようと思ったんです。フォークっぽいシンプルなコード進行にしようと作りはじめたら、気が付けば2コードになり、そこからワーッと原型が出来ました。デモを聴き返すと、作りはじめて3分ぐらいで歌い出しが出来ていましたね」

2016年作『CALL』収録曲“CALL”
 

――バンドのアンサンブルもさらにしなやかさを増した気がしました。

澤部「スカートは曲をバンドに持っていくと、一度合わせただけでバッチリということが多いんですけど、“静かな夜がいい”に関してはそうならなくて。イントロはもうちょっとベースを弾いてみようと伝えたり、アンサンブルを丁寧に整理することをめざしました。普段は〈皆さん、お好きにやってください〉という感じなので、あまりないことでしたね」

――また、今回の“静かな夜がいい”は、スカート初のCDシングルです。この曲だからシングルにした部分もありますか?

澤部「あると思います。珍しく派手な曲が出来て、こんな機会はめったにないだろうと思ったんですよ。それに、シングルだとこの曲がいまのスカートのムードだよと強く押し出せる」

tofubeats「3曲目の“おれたちはしないよ”も滅茶苦茶キャッチーですよね。僕は澤部さんの伸びやかな声が好きなんで、この曲がお気に入りです。それに、4曲で総尺10分近くのなかでちゃんとアーチを描いて“いつかの手紙”に着地するのは、本当に凄いなと思いました。今日もキッチンを掃除しながらこのシングルを聴いてたんですけど、“静かな夜がいい”は昼に聴いても良い。直喩的に夜っぽい曲じゃないのも良いんですよね」

――“おれたちはしないよ”も含めて、今回はカップリングの3曲も“静かな夜がいい”の雰囲気に引っ張られたのか、全体的にグルーヴを重視したサウンドになっている印象です。

澤部「そうですね。タイトル曲で得た手応えを分散して発展させるという感じは強かったと思います。だから、シングルと言いつつ、ひとつのテーマを持ったコンセプト・アルバムに近い雰囲気もあるのかな。でも、〈こういうものが作りたい!〉というより、〈こういうものが出来てしまった〉という感覚です。いまの時流を踏まえてこんな編成で、ということは考えられないので、僕はまだまだシンガー・ソングライターだなと(笑)」

tofubeats「今回はライヴDVDも付いてくるじゃないですか? これも重要なことですよね?」

澤部「今回のDVDに収録されているライヴ映像は“静かな夜がいい”を初めて披露した『CALL』のリリース・パーティーでのパフォーマンスなんです。作品性を崩すボーナス・ディスクではないし、今回はシングルとして大きく開けたものになったので、この機会に〈付けられるものは付けちゃおう〉という気持ちもありました。 特に“静かな夜がいい”は、これからキャリアを経ていくうえで重要さを増していく曲だと思っているんです」

tofubeats「だからこそ、この曲から過去の名作にも……」

澤部「辿り着いてくれたら嬉しいですね」

“静かな夜がいい”のDVDに収録された2014年のシングル“シリウス”のライヴ映像

 

いちばん狂っている人がやる音楽こそポップス

――お互いに楽曲提供やアレンジ、ゲスト参加、リミックスなどを通して、ポップ・ミュージックのさまざまな側面を見ていると思いますが、2人にとって〈ポップ〉とはどういうものだと言えますか?

tofubeats「自分なりのポップ・ミュージックを発表しているのが自分の作品なのかな、と思いますね。ラップしているときもあるし、クラブ・ミュージックを作っているときもありますけど、どれも自分のなかでのポップ・ミュージックをクリアしたものが出ている。だから、僕の作品をいろいろ聴いてもらえば、tofubeatsが思っているポップ・ミュージックとはこういうものかと、わかってもらえると思う」

tofubeatsと森高千里の2014年のコラボ作『森高豆腐』収録曲“LALA SUNSHINE”
tofubeatsがプロデュースしたlyrical schoolの2015年作『SPOT』収録曲“FRESH!!!”
 

澤部「僕も自分が思うポップ観を、作品を通して表現しているつもりです。やっぱり、ポップスって何をやってもいいじゃないですか。はっきり言って、僕はいちばん狂っている人がやる音楽こそポップスだと思うんですよ(笑)。そこには語り尽くせないものがある」

スカートが口笛で参加したスピッツの2016年作『醒めない』収録曲“みなと”
スカートが編曲を担当したNegiccoの2015年作『Rice&Snow』収録曲“裸足のRainbow”
 

tofubeats「正解がわからないということが良いんですよね。だから一生を賭けるに値するというか」

澤部「例えば細川ふみえの“だっこしてチョ”とかも最高ですよね(笑)。曲だけ聴いたらアウトサイダー・アート的な感じもあるのに、何かが繋ぎとめてあれをポップスとして成立させていることには、ポップというものの器のデカさを思います。どこかで突然変異的なものが大衆化することもありますし。一生を賭けてやるべきことの1つなんじゃないか」

――2人が音楽を聴いて、良い曲だと思うポイントはどんなところなんでしょうか?

tofubeats「僕は下手でも単純でもいいんで、全身全霊の気合が入ってるもの。シカゴ・ハウスを好きな理由も、UKガラージ2ステップが好きな理由もそこなんです。(ハーフ・ステップのパターンだから)短い音しか使えないからこそ、気持ちが前に出ちゃうというか。あと〈OLが好きそうな音楽〉は大体好きですね。自分の中の〈ミニOL〉みたいなものが反応する曲はずっと好き」

澤部「自分の場合はどうやって音楽を聴いてるんだろうな。急に言葉が入ってくることもあるし、〈うわ、いまのコード進行はいったい?〉と思うこともあるし、〈ここでオーボエ吹かれたら堪らないわ〉というのもある。そういうふとした瞬間に持っていかれることが多いです」

――澤部さんは空気公団をお好きですよね? 以前、空気公団の取材をした際に、メンバーの山崎ゆかりさんが〈小さい頃、家の窓辺で街の音を録音したものを聴いて実際の雰囲気や風景を想像していた〉と話してくれたんですが、スカートの音楽にも、あるものをそのまま描くのではなくて、情景をふわっとかすめ取るような雰囲気を感じます。

空気公団の2012年作『夜はそのまなざしの先に流れる』収録曲“天空橋に”のライヴ映像
 

澤部「あるものを描写するのも難しいですけど、それはやろうと思えばできるじゃないですか。でも、見えないものを描写しようとすると、その人にしか出せない魅力が出ると思うんです。特に空気公団の山崎さんはそれが本当に上手い人ですよね。僕も、言葉にならないものをどうやって掬い取るかということをよく考えるんです」

――では最後に、2人にとっての理想のポップ・ミュージックを教えてください。

tofubeats「僕の場合は〈自分も人も嬉しいもの〉ですかね。多くの人に聴いてほしいという気持ちはもちろんありますけど、僕のペルソナのようなものを持っている人には特に聴いてほしいし、何より自分も楽しくなりたい」

――澤部さんは?

澤部「うーん……やっぱり〈まだ聴いたことのないもの〉じゃないですかね」

tofubeats「シンプルな一言で、滅茶苦茶カッコイイ! やっぱり二枚目ですね(笑)」

 


~スカートからのお知らせ~

スカート“静かな夜がいい”発売記念ワンマン・ライヴ 〈 (できれば)静かな夜がいい〉
2017年1月28日(土〉東京・渋谷WWW
開場 17:30 / 開演 18:30
前売 3,000円(1ドリンク代別)
★詳細はこちら

 

~tofubeatsからのお知らせ~

2016年12月15日(木)東京・渋谷O-EAST
new balance 110 anniversary BETA NIGHT/DJ出演
2016年12月16日(金)東京・代官山UNIT
LOST DECADE 9/DJ出演
2016年12月18日(日)東京・代官山UNIT
 (有)申し訳AFTERNOON 20周年SP〜申し訳20周年のVOL.2〜/DJ出演(J-POP SET as tofubeats申し訳WEST)
12月23日(金・祝)東京・代官山UNIT
ExT Recordings 10th ANNIVERSARY PART/DJ出演
12月24日(土) 名古屋・新栄DIAMOND HALL
年末調整GIG 2016/Live出演
12月29日(木)東京・渋谷VISION
TRACK MAKER/Live出演
12月31日(土)大阪・南港インテックス大阪5号館
908 FESTIVAL SPECIAL!! 16-17 カウントダウン大阪/Live出演
★詳細はこちら