ロスト・フリクエンシーズに通じる、柔和でダンサブルなフロア発のモダン・ポップ
大雑把にEDMと括ったり、あるいはビッグルームやフューチャー・ハウス、トロピカル・ハウス系といったスタイル区分にこだわりすぎる必要もなく、そこを出生地とする楽曲たちが独自性と多様性を損なうことなくメインストリームのポップスとして機能するようになって久しい。もちろん、話題の“Candyman”でフューチャー・ベースに向かったゼッドのように、そこから現れた面々も日々スタイルとメソッドを更新しながら新たな心地良さを追求して動き続け、それがこの界隈に刺激をもたらしているのは言うまでもないだろう。そして、初のアルバム『Less Is More』で引き算のポップネスを提示したロスト・フリクエンシーズも、単純にキーワード化しやすい流行に止まらない部分で、独自性を発揮し続けているのだ。
類型的なEDMスタイルからスタートして独自のメロディック・ポップ路線へ到達したNYの人気デュオ。こちらの最新EPには、2016年を代表するビッグ・アンセムとなったホールジーとの“Closer”を筆頭に、口当たりの良いマイルド&アーバンな音像を備えたヒット・チューンが並ぶ。
“Are You With Me”のリミックスで脚光を浴びて以来、LFの成功ルートを辿るフランスの19歳。今年はクッキン・オン・スリー・バーナーズ“This Girl”(2009年)のリミックスを全英2位に叩き込み、この初アルバムもソウル~レゲエ趣味を活かしたアーシーな音色使いのハウスを気持ち良く響かせる。
LFより一足先に活動を開始し、“Stole The Show”“Firestone”などのエポックメイキングなヒットを量産してトロピカル・ハウス確立に寄与したシーンの顔役。いわゆるハウシーな快楽よりもヒーリング感を優先したダウンテンポな感触は、現行のポップ界を支配するサウンド・デザインとなった。
Mrプロブズ“Waves”のマイルドなリミックスを世界的ヒットに導き、今様のディープ・ハウス像を確たるものにしたドイツの俊英。こちらの最新作では、ベイビー・バッシュ曲からラテンの旨みを転用したタイトル・トラックあたりがLFの“What Is Love 2016”に通じる哀愁味を滴らせている。
裏方での実績もあるシンガー・ソングライターの2作目。本編はよりフォーキーな志向で歌心を強調しているが、特大ヒットしたのはノルウェーのシーブがトロピカルに仕立てた“I Took A Pill In Ibiza”のリミックス。アコースティックな音色を心地良いハウスに転用する成功方程式はLFにも通じる。
初期のLFとも縁のあったスピニンから、ロビンS“Show Me Love”リメイクの全英ヒットで名を上げたオランダの新進。この日本独自編集盤は初EP『Been A While』やその後の“Summer On You”まで網羅したベスト選曲で聴かせる親切な一枚だ。古今のハウスを縦断するスムースな手腕が光る。
LF活動初期のコラボ・ヒットといえば“Eagle Eyes”(2014年)だが、そこで手を組んだフェリックス・イエンがオミー“Cheerleader”のリミックスを手掛けて記録的な成功を掌中に収めたのは言わずもがな。彼らのポップ・フィールドにおけるサクセスへの道はその頃から着々と整備されていたのだ。