2016年の初頭にメンバーが脱退し、TGMX(ヴォーカル/シンセサイザー)とTDC(ドラムス)の2人組として走り出したFRONTIER BACKYARD(以下、FBY)。先日、タワーレコード限定のミニ・アルバム『FUN BOY'S YELL』をリリースした彼らが、新章の幕開けとなるキックオフ・パーティー〈mini album『FUN BOY'S YELL』release tour〉を、11月20日に東京・渋谷WWWにて開催した。会場は、FBY再始動の瞬間を見届けようというオーディエンスで埋め尽くされ、フロアに充満する熱気からも期待の高さが窺える。

 
 

2009年のミニ・アルバム『Luka & Evans』に収録の“PEEPS CLUB”からスタートしたこの日のライヴは、まさにFBYの変化と進化の前兆を感じさせるものだった。まず驚いたのは、ヴォーカルに専念したTGMXとドラマー・TDCのオリジナル・メンバーに加え、以前から彼らをサポートしてきた松田“CHABE”岳二(キーボード/パーカッション他)とKONCOS古川太一(シンセ・ベース他)、『FUN BOY'S YELL』のレコーディングにも参加したSAWAGIコイチ(キーボード)と浅草ジンタシーサー(トランペット)、SCAFULL KING時代からの盟友であるNARI(サックス)……と、まさかのギターレス! そして鍵盤3人! さらに生のホーン隊が参加!という、ドラスティックに変化を遂げたバンド編成。10年に渡ってギター・サウンドを採り入れてきたFBYだけに、過去の楽曲の演奏は大丈夫なのか?という心配が心をよぎるも、それはまったくの杞憂に過ぎなかった。これまでの人気曲が次々に披露されていき、それらにまつわる記憶を最新型へとアップデートしていく。

 

4曲目の“UNKNOWN”、続く“excuse to”を皮切りに繰り出されていった新作『FUN BOY'S YELL』からの楽曲も、新生FBYの進もうとする方向性を多彩に示唆する興味深いナンバーばかり。過去のFBYはサウンド志向が前面に打ち出されていた印象もあったのだが、今回のように生のホーン・セクションがバンド・サウンドに加わることで、TGMXが作る楽曲が本来持っている人懐っこさや人間臭さといった魅力がより際立つ。音作りの面で、TGMXの歌にギュッとフォーカスが絞られており、実に新鮮だった。

 

観衆のツボを確実に仕留めていくTDCのタイトなビートの上で、自在に色を染め上げていくCHABEのキーボードとコイチの流麗なピアノ・プレイ。自由すぎるステージングがフロアをさらに熱くする古川のシンセ・ベース、そしてサウンドもルックスもキャラが立ちまくりのシーサーとNARIのホーン隊という6人で描く、最高にピースフルで最高にハッピネスな音空間のなかで、TGMXの歌声がこれまで以上に伸びやかに響きわたる。今回はギターレスの編成ではあったが、今後はギターが入ってもいいだろうし、ホーンがたくさん加わったビッグバンド編成になってもおもしろいだろうし……と、2人になったことでFBYはより自由な遊び場を手に入れたことは間違いない。熱狂的に盛り上がるフロアを眺めながら、そんな考えが頭をよぎった。

 
 

ライヴのMCでは、メンバーの脱退を機にバンドの歴史にもピリオドを打とうかと真剣に考えたと語っていたが、〈継続〉という道を選んでくれてありがとう!と心から叫びたくなる素晴らしい夜だった。FBYが突っ走っていく姿を、今後も見届けていきたい。

 

 


FRONTIER BACKYARD『FUN BOY'S YELL』release tour   
 
2016年12月10日(土)名古屋・新栄APOLLO BASE
2016年12月11日(日)大阪・心斎橋Pangea
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