INTERVIEW

宮藤官九郎監督が語る、長瀬智也や神木隆之介ら出演陣の〈バンド感〉が奏功した映画「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」

(C)鈴木淳哉

地獄のテーマパークへようこそ

 地獄と天国。どっちに行きたいかといえば、もちろん天国だろう。でも、どっちがロックかといえば、もちろん地獄。宮藤官九郎が脚本・監督を手掛けた映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』は、17歳の高校生、大助(神木隆之介)が不慮の事故で地獄へ落ちて、そこで赤鬼のキラーK(長瀬智也)を始めとする鬼達とバンドを組んでロックに目覚めるという物語。そこには宮藤の「ロックを楽しむ映画」を作りたいという想いがあった。

宮藤官九郎,長瀬智也 TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ アスミック・エース/東宝(2016)

 「いま、日本のロックっていうと自然体というか普段着で演奏するのが当たり前ですけど、僕は鋲つきの革ジャンとかロンドンブーツとか、誇張されたロックが好きなんです。でも、それってアメリカ人が好むロックで、その過剰すぎて笑っちゃう世界観が日本だとなかなか受け入れられない。日本人は真面目なので、バンドをやることの苦悩とか挫折を乗り越える、みたいな青春映画になりがち。もっと不真面目にロックを楽しむ映画があっても良いんじゃないかと思ったんです」

 そして「キッスにしろAC/DCにしろ地獄をモチーフに曲を作ったりするけど、彼らのなかで地獄はカジュアルなものなんじゃないかと」感じた宮藤は、ロックの過剰な世界観を日本の地獄で展開させた。

 そして、そこでロックスターのごとく君臨するのが赤鬼のキラーK。本作を制作するうえで欠かせない役者として、宮藤が熱いラヴコールを送ったのが長瀬智也だった。

 「長瀬君がダメだったら、この映画できないと思ってました。長瀬君は実年齢よりも聴いてる音楽がおじさんぽい(笑)というか、ハード・ロックとかへヴィー・メタルとかが好きで、フランク・ザッパのTシャツ着てきたりするし(笑)。だからこの時代錯誤なテイストも理解してくれると思ったんです」

 キラーKが結成した鬼バンド、地獄図のメンバーを演じるのは桐谷健太清野菜名。彼ら3人と神木を中心に、映画はハイテンションに突き進んで行く。

 「まず、長瀬君が『こういう風にやろう』って提示して、『だったら……』って桐谷君が膨らませて、それに清野さんが頑張ってついていく。それに対して淡々とリアクションする神木君っていう関係性がうまくできていて、最後までテンション落とさずにやれましたね」。なんて話を聴くと、まさにバンドのような一体感だ。そして、演劇的な演出が映画にライヴ感を与えている。

 「演劇の演出家が映画を撮る機会が増えてきて、だけど僕も含めて皆さん映画のルールに従ってやっている。偉いと思う反面、これまで自分が演劇でやってきたことを活かしてもいいんじゃないかとも思ったんですよね。例えば皆川(猿時)君が女子高生の役をやるとか、そういう演劇の得意技を今回はやってみようと思ったんです。あとセットを作ったことで、シーンの最初から最後まで途切れずに演出できる。そうすると役者の芝居も変わってくるし、テンションも違ってきて自然に演劇っぽくなっていったんです」

 そして、向井秀徳ZAZEN BOYS)やKYONO(元THE MAD CAPSULE MARKETS)らが提供したオリジナル楽曲が物語を盛り上げるなか、クライマックスでは、Char野村義男ROLLYマーティン・フリードマンらがギターの鬼となってロック・バトルを展開。そうなるともう、天国よりも地獄に親しみを覚えずにはいられない。なにしろ、罪を犯してしまうのが人間。天国よりも地獄のほうが人情味に溢れているのは当然のことなのかもしれない。

 「現世のルールでは、ちょっと嘘をついただけでも“妄言”ということで地獄に落とされてしまうんです。チェックが厳しすぎて、たいていの人間は地獄行きなんですよね(笑)。でも、僕はこの映画を作って、あそこに行くんだったら悪くないかもって、死ぬことに対する恐怖がちょっと軽減した。映画に『カッコいい人達はみんな地獄に落ちた』っていうセリフがあるんですけど、我ながら素敵なメッセージじゃないかと思ってますね」

 かつて、「天国なんてないと想像してごらん」とジョン・レノンは歌ったが、この映画を観て“こんなロックな地獄がある”と想像することで、いつかやってくる死の恐怖も少しは和らぐかもしれない。今際の際の言葉はもちろん、「マザー・ファッカー!」。

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